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Lotus13 嫉妬と憎悪が入り混じって


 ねぇ、私は本当に安心したんだよ? あの時、貴方が言った言葉を信じていた。だからこうして貴方を好きになったし、友達も出来ると思っていた。それなのに、あの言葉が嘘だったなんて……。しかも、それが彼女の為についた嘘だったなんて。

 もう、私に残されているのは彼女を憎む事だけ……そうでしょ? 琉依。



 “やっぱり、今も関係続いていた?”

 “琉依がね、しつこいから”


 こんな会話をした時から季節は過ぎ、再び桜の咲く季節へと戻ってきた。

 私は無事に大学に合格して、福祉の勉強をこれから始める事になる。渉はスポーツ推薦で入学、梓や夏海そして琉依ももちろん合格した。

 「いやいや、まさか蓮子も聖南学院に入るとは思いませんでしたよ」

 大学の喫茶店で渉がサンドウィッチを手にしながら話す。そう、ここは聖南学院大学の喫茶店。私は希望していた香学館大学をやめて、聖南学院へと進路を変更したのだ。

 「社会学部の弘光教授に憧れていたんだよね〜?」

 隣りに座っていた梓の言葉に笑顔で頷く。それもあるけれど、私が何よりもこの大学に決めたのは


 「でも、みんな同じ大学になって良かったじゃん!」

 「そうだね、学部は違うけどこうして会えるし?」


 夏海と琉依もこの大学を志望していたのを知ったから。

 あれから私はそれまでよりも積極的に夏海と会うようになり、夏海から自然に琉依の話を聞けるようにまでなっていた。そして、その時何気なく聞いた進路の話。


 “ところで、夏海はどこの大学志望しているの?”

 “聖南学院大学! 彼氏もここにいるんだ。あっ、琉依も同じなんだよ”

 “……ホント? 実は私もそうなんだよ!”


 夏海の一言で私の進路は変わった。それから私は志望大学を聖南学院に変えて必死に勉強した。聖南学院は香学館よりもレベルが数段上の大学だから、本当に必死だった。高校で一緒になれなかった分、せめて大学は同じところへ行きたかった私の本音。それに、夏海がまた琉依と一緒というのも気に入らなかった。

 愛情と憎しみが入り混じった私の動機など誰も知る由も無く、こうして私は同じ大学に入学できた訳だ。けど私は社会学部、夏海と琉依は国際学部と別々の学部でしかもその配置もだいぶ離れていた。

 自分の置かれた距離に苛立ちを感じるけど、それでも私は僅かな幸せを感じていた。


 〜♪

 「あっ、賢一からだ! ごめん、じゃあ私は行くね」

 そう言って電話に出ながら去っていく夏海。そしてみんなは気付いていないけれど、そんな夏海を寂しげな視線で見送る琉依を見て私の心はまた締め付けられた。すぐに何も無いかのように明るく振舞う琉依だけれど、そんな自分に誰も気付いていないと思ってる?

 そんなに夏海の事が好きなんだ、琉依の表情を見る度に私は苦しくなるよ。夏海ばかり見ていないで、こっちにも気付いて欲しい。琉依の視線を独り占めできる夏海、アンタが本当に憎いよ。


 「蓮子?」

 「ん、あぁ何?」

 ずっと黙っていた私に琉依が話しかけてきた。変な返事をした私に、琉依は苦笑いを見せている。

 「何、ずっと考え込んでるの? あれか、俺の事を見ていたのか!」

 そうだろうなぁ! 笑いながら得意気に話す琉依は、いつも通りの琉依だったけれどそれでも私から見たら無理してるとしか思えないよ。そんな琉依にだんだん気分も悪くなってくる。

 「あ〜、ごめん。私、今から講義に出ないと」

 素っ気無く答えると、そのまま席を立ち上がって喫茶店を後にした。

 「俺、嫌われちゃってるし〜」

 立ち去る際、そんな琉依の呟きが最後に耳に入った。そんな事ある訳無いじゃない! むしろ誰よりも大好きなんだから。ただ、あんなにも無理して接する琉依の傍にはいたくなかっただけなの。


 微妙な気持ちのまま外へ出てふと目が行った先には、彼氏と一緒に座って話している夏海の姿だった。さっきの辛そうな琉依の顔を見た後に見る夏海のあの幸せそうな表情は、私の夏海への憎しみを増やすのに十分すぎていた。

 どうして……どうして、あんなにも近くにいるのに琉依の気持ちに気付けないの? どうして、そんなにも幸せそうな表情を出す事が出来るの? どうして、琉依を見てあげられないの……。


 勝手な怒りだと思うけれど、それでも夏海が羨ましくて憎くて仕方が無かった。




 聖南大学編入りました。まだ、尚弥と伊織は出ません。蓮子の憎しみが徐々に表れていきますが、何だかここでは夏海は完全に悪者になっているような……

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