Lotus11 湧き上がる恋心
あれから私は遅れて渉たちの元に戻ったが、その時の彼の私への態度も変わらないものだった。さっきまでの事が一切無かったかのように接する彼は、本当に怖かった。
それでも私はそんな彼に対して更に興味を抱き始めていた。普通ならあそこで逃げ出すのかも知れないけれど、私の心は恐怖心と共に好奇心が増していってもっと彼を知りたいとさえ思い始めた。
そんな気持ちになったのは、もう彼に隠す事が無くなったからなのかもしれない。あの事が彼にばれて突き放されたような態度を取られたのに、私はそれを逆にいいように捉える事にしたのだから。
“夜、眠れないから”
そう答えた彼の事をもっと知りたかった。眠れない理由も知りたかった。
「……で、俺に何を聞きたいのですか?」
後日、渉の家に上がりこんで部活から帰ってきた渉を座らせて今に至る。どうやら渉にはこの間私がここでアルバムを見ていた時から、私が彼に興味を抱き始めていたのを知られていたみたい。そんな私がこうして来たのは、もちろん用件は彼の事だと理解してくれてる。
「宇佐美くんって、たくさん彼女いるんだって?」
「え? 何だ、蓮子知ってたの?」
って、アンタも知ってたのかい! 思わず心の中で渉にツッコミを入れていた。渉も知っているという事は、こいつよりも近くにいる槻岡さんは絶対知っているはずだよね?
「彼女って言うか、一夜限りのオンナだけどね。アイツ、特定の女とは付き合わない主義だよ」
一夜限り……って、私よりもひどいじゃない。それじゃあ、何か? 会ってキスしてセックスして終わり? それじゃあ、名前も知らなくてもいいわけだわ。それにしてもそんなあっさりした情事、よく相手の女性も合意してくれるなぁ。そういった事も、出会った時に彼は判断しているのかな?
「でも一時はそれも収まったのに、ある時急にまたアイツ荒れだしたんだよな〜」
「それはどうして!? 彼に何かあったとか?」
何気なく話した渉の言葉に私は興味を抱き始めた。女遊びが収まったのと、再び荒れだしたきっかけをどうしても知りたかった。強引にでも問いただそうと、渉のシャツの襟を掴んで揺すった。
「ちょっ、ちょいギブ! ギブ! 俺だってそれは知らねぇよ!」
襟を放して渉を解放すると、咳き込みながら渉は呼吸を整えていた。そんな渉をよそに、こいつが知らなければ次は……そう考えると私は携帯を取り出してメールを打ち始めた。
「何? また男に会うの?」
「違う〜。女に会うの!」
今度は女に手を出したかと小声で呟く渉を空いていた片方の手で殴りながら、メールを打ってそのまま返事を待っていた。そんな私に何か気付いたのだろうか。
「夏海? あいつに聞くの?」
コイツはホント変な所でカンが鋭いんだからなぁ。そんな渉に感心しながら何も言わずただ頷いて答えた。そんな私を見た時の渉の顔はさっきまでとはうって変わって、深刻そうなものになっていた。
「お前、そこまでして琉依の事知りたい訳?」
そりゃ、好きになった人の事は何でも知りたいのがお決まりでしょ? それに彼にとって、この事が一番の秘密だと思うしそれに興味を抱かなくてどうする!
そう思っていた時、携帯の着メロが流れた。すぐに開くとそれはやっぱり槻岡さんからで、少しでいいならこれから会えるって内容。それを確認した後、その場から立ち上がって急いで自分の家へと戻っていった。渉にお礼を言うの忘れていたけど、それはまた今度にして今は最も興味ある事を優先したかった。
でも……この時は思いもしなかった。
好きな人の事をまた一つ知る事ができるというこの期待感が、この後もろくも崩れてしまうなんて事を。
今回はちょっと短めになってしまいましたが、ここまで読んで下さり本当にありがとうございます! さて、この続きですが……どうなるかは大体予想がつきますでしょうか?
ここから、またドロドロした部分が出たりします。