表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/43

別れ、そして旅立ち

連投です。

もしかしたら、もう一話投稿するかも?

side~彩人~



紫「それじゃ、1週間後に迎えに来るわ」


そう言って隙間に戻っていった。

周りを見わたす。

見慣れた自分の家、外を見ればさまざまな人たちがせしわなく動いていた。


彩「帰ってきたのか」


この発展を遂げたゆえにすばらしく腐った世界に。


彩「さて、やることは山積みだ」


まずは、高校で退学の手続きをする。

クラスメイトには、決心が鈍るから、と8日目まで話さないことにしてもらった。

ご近所には引越しをする事と遠くに行くから多分戻ってこない事を伝える。

子供たちは号泣して胸が痛んだがなんとか納得してもらった。

6日目の日にはお別れ会を盛大にしてくれるという、ありがたいな。

やっぱりここの人たちのことは大好きだ、それだけは変わらない。

それから、親に連絡。

必要最低限の会話しかしていない。

といっても、こちらが一方的に話すだけであちらはただ聞いているだけ。

唯一話したのは、「そうか」の一言だけ。

それを境に最後の会話は終了した。

それと、家の中を空っぽにするのに大分掛かった。

マンションなので家の中のものを根こそぎ片付ければいいのだが、量が量だ。

全て片付けるのに2日掛かった。

後は最終日までで契約打ち切りの手続きをする。

せっかくだから、貯金を全て下ろしてルーミアや霊夢たちにお土産を買っていく。

もっぱら、お菓子とジュース、後はお酒が多数。

大きめのダンボールで10箱は軽くある。

それでも全額使うには至らなかった。

通帳を見たとき軽く8桁はあった。

婆ちゃん、貯めすぎ。

これはあとで紫に相談してみるか。

もしかしたら、あっちでも使えるかもしれない。

6日目には約束どおり、お別れ会に行った。

子供たちが次から次へと泣きながら別れを惜しんでくれる。

全員を落ち着かせるのにかなり疲れたが、これでもう心残りは無かった。

そんなこんなで、最終日。

日曜日の空は透き通るような青空だった。

旅立つには、もってこいの天気だ。

持ち物は、一週間分の着替えが入ったキャリーケース、愛用のエレキギター、去年の誕生日に婆ちゃんからもらった調理器具一式とダンボール箱が十数箱。

不意に空間が割れ、隙間から紫が出てきた。


紫「後始末は終わったかしら?」


彩「まだ最後の用事が残ってるんだ。すぐに終わるから少し待っててくれないか?」


紫「わかったわ、後腐れの無いようにしておきなさい」


察してくれたのだろう、紫は快く承諾してくれた。


彩「ああ、あと待ってる間にこれ、あっちに運んでおいてくれないか?」


紫「あら、女性に力仕事をさせる気かしら?」


彩「見合った報酬は出せると思うぞ?」


紫は小さく息を吐き、


紫「分かったわ。報酬、期待してるから」


言うやいなやダンボールを全て隙間に落とした。

やっぱり便利だな。


彩「サンキュ、それとこっちの通貨ってあっちじゃ使えないよな?」


紫「当たり前じゃない、文明レベルが違うもの」


だよなぁ、と預金について思案していると


紫「何なら、換金してあげましょうか?」


彩「マジで?ぜひそうしてくれ。あと、持ちきれない分は紫が預かっててくれ」


これで、金のほうは片付いた。あとは、


彩「じゃ、そろそろいって来る。」


紫「ええ、いってらっしゃい」


俺は、これが最初で最後になるであろうあいつの家へと向かった。







彩「ここか」


俺は、家から歩いて大体15分くらいのところにある神社に来ていた。

ここにあいつはいる。

あいつにだけは自分の口で別れを告げなければいけないような気がしてここに来ていた。

正直、会いたくない。

だけど、会わずに行ったら絶対後悔する。

そんな確信めいた、勘が働いていた。

両の頬を両手ではたき、腹をくくる。

あいつが居るであろう境内に向けて階段を登リ出した。




あいつ、早苗は霊夢と同じような巫女服を着て境内の真ん中で掃除をしていた。

こちらに気づくと驚いた様子で掃除を中断し、こちらに駆け寄ってきた。


早「アヤじゃないですか、珍しいですね。それも、こんなに朝早くから神社に来るなんてやっとうちの信者になる気になったんですね」


いつもの調子で話しかけてくる早苗、しかしこちらの雰囲気が違うことに気づくと真面目な顔になった。


早「何か、大事な用があるみたいですね」


流石に何年も一緒に居ればそれくらいは分かるようになる。

そのことに感謝しつつ、俺はいきなり本題に入った。


彩「今日は、お別れを言いに来た」


早「・・・・・・」


早苗は黙ってこちらを見ている。

詳細を話し終わるまで黙っているつもりだろう。

俺は全てを話した。

これから遠くで暮らすこと。

電気もまともにないから連絡がつかないことなど簡潔に話した。

もちろん、幻想郷の部分やそれに関係するところは全て伏せたうえでだ。

全てを話し終えると早苗が口を開いた。


早「アヤにとって、そちらはそんなにも魅力的な場所だったのですか?」


その瞳は、嘘をつくこと許さない目だった。

だから俺は、まっすぐに見つめ返し


彩「ああ、最高の場所だった。すっげぇワクワクしてる」


子供っぽい笑顔で返した。


早「なら、私から言うことはありません。あっちでも、元気でね」


そう言って、早苗は笑っていた。

だから俺も、さっきとは違う笑顔で


彩「俺はどこでも元気だよ。早苗こそ俺が居なくなってから泣くなよ?」


早「その言葉、そっくりそのまま返してあげる。」


それから、お互いに笑いあった。

もう会えないかもしれないのに、二人はとても楽しげだった。


彩「それじゃ、そろそろいくよ。またな、早苗」


早「もう会えないかもしれないのに、別れの言葉がそれ?」


早苗は少し呆れていた。


彩「もしかしたら、またどこかで会えるかもしれないし、そっちのほうが楽しいだろ?」


早「それもそうね。じゃあ、またね」


彩「ああ、またな」


そう言って、紫が待っているマンションへ走り出した。




紫「用事は済んだの?」


部屋に入ると同時に、紫が出てきた。


彩「ああ、これで思い残すことはない」


紫「さっきよりもいい顔をしてるわ。男の子の顔になっている」


それが本当なら、あいつに感謝しないとな。

今すぐにでも泣き出したいはずなのに、それをおくびにも出さず最後まで笑っていた強い少女に。

紫が幻想郷へと続く隙間を開いて一足先に入っていった。

俺は、もう何もない部屋を振り返り


彩「俺も負けていられないな」


誰にも聞こえないようにポツリと言って隙間へ入った。







side~早苗~




彼が帰ってから私は部屋に閉じこもった。

今は、誰にも会いたくなかった。

いや、違う。

一人だけ、あいつに会いたかった。

つい先ほどまで一緒に笑っていた、彼に。


早「危なかったな」


本当は途中で泣き出したかった。

泣くなよ?って言われたときは本当に危なかった。

彼の胸に飛び込んで、泣いてしまいたかった。

行かないで、そばに居てと言って引き止めてしまいたかった。

でも、私はそれをしないで笑って彼を送り出した。

上手く笑えていたかは分からない。

上手く笑えていても彼には無理をしているってバレているだろう。

分かるのだ。

あれだけ長い時間を一緒に居たから。

彼のことが好きか?と聞かれたら即答でYESと答えるだろう。

だがそこに恋愛感情があるかと言われれば微妙なところだ。

いつも一緒が当たり前になっていたから。

だから、本当は半身が切り裂かれる思いだったのだ。

それでも、泣かなかった自分を褒めてやりたい。


早「もう、泣いてもいいよね?」


瞬間、涙があふれてきた。

私は泣いた。

何が悲しくて泣くのか分からないまま泣いた。

だけど、泣いたままではいられない。

このままでは、彼に笑われてしまう。

私は、もうここには居ない彼に向けてつぶやいた。


早「ちゃんと・・・ヒック・・・立ち上がるから、前を向くから・・・ふぇぇ・・・だから・・・」


早「今はもう少しだけ、泣かせて・・・」


それから、泣き疲れて眠るまで私は泣いた。


誰でも、親しい人との別れは辛いですよね。

でも、それを乗り越えてこそ強くなれると思う。


誤字等、訂正箇所がありましたらおねがいします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ