氷精と弾幕ごっこ
すみません。仕事で出張だったものですから投稿できませんでした。
たびたび、間が長い時もありますがご勘弁を。
それでは、どぞー。
side~彩人~
ちゅん、ちゅん。チチチ。
小鳥のさえずりで目が覚めた。
朝が来たのだ。初夏といっても朝早くは、まだ野宿するには気温がいささか低い。
下手をすれば、体調を崩していたかもしれない。
しかし、それは無い。
むしろ、とてもさわやかな気分だ。
その理由は、いまだに俺の胸に頭を預けて気持ちよさそうに寝ている少女のおかげだ。
彼女と寄り添って寝ていたのでそれなりに暖かかった。
が、そのために体がガチガチに固まってしまった。
ほぐしたいところだが、この可愛らしい寝顔をもう少し見ていたかった。
少女の顔に手をそえそっと撫でる。
彩「ありがとな」
ルーミアを起こさないように小声でお礼を言った。
くすぐったかったのか身をよじり顔を胸にグリグリと押し付けてきた。
俺は苦笑しながら、もうしばらくはこのままで居ようと思いルーミアの頭を優しく撫でた。
それから、30分ほど経ってからルーミアが起きたので朝食を摂った。
朝食後、顔を洗いたいのでルーミアに聞いてみた。
彩「この近くに水辺ってないかな?」
ル「あっちの方に湖があるけど、神社は~?」
彩「人に会うのにみすぼらしい格好じゃ印象が悪くなるだろ。だから、案内してくれ。」
ル「わかった。あっちだよ。」
湖があるであろう方向を指差しルーミアが言った。
が、動こうとしない。
どうしたのか?と、聞こうとしたら自分の後ろに回って肩に飛び乗ってきた。
いわゆる肩車である。
ル「おー、たか~い♪」
彩「ルーミア、何故そこに乗る?」
ル「なんとなく?」
彩「俺に聞くなよ・・・」
まあいいか、そんなことより顔を洗うために湖に向かった。
道中、ルーミアがとても上機嫌だったのは余談である。
湖に着いたので早速顔を洗い、うがいをして多少口の中がさっぱりした。
が、少し違和感を感じた。
彩「つめてーな」
いくら早朝とはいえ湖の水は驚くほど冷たかった。
ルーミアに理由を聞いてみると
ル「あ~、それはここら辺にチルノがいるからだよ」
彩「チルノ?」
ル「そ、氷の妖精で私の友達」
ルーミアがそう答えた瞬間、氷が降ってきた。
雹とかみぞれとかそんなレベルじゃない。
氷柱を人の腕くらいの大きさにしたサイズのものが降ってきたのだ。
俺はすぐにルーミアを抱えて走り出した。
自分たちがいたところは見事にちっちゃな氷山と化していた。
?「最強のアタイの攻撃をよけるなんて、あんたなかなかやるわね!」
その声は空から聞こえた。
見上げると、青い服に青い髪、頭には青いリボンを付けた少女がいた。
それだけなら、普通の可愛らしい少女だろう。
浮いている時点で普通ではないがこの際気にしない。
ルーミアだって所見では浮いていたし。
彩「氷の羽・・・」
少女の背には氷の羽が生えていた。
この少女がルーミアがさっき言っていたチルノなんだろう。
ル「チルノ~、おはよ~」
チ「あ、ルーミアじゃない!おはよー」
二人があいさつを交わす。
やはり目の前の少女がチルノであっているようだ。
それよりも気になっていることを聞いた。
彩「どうしていきなり攻撃してきたんだ?」
チ「そんなの決まっているじゃない、あんたがアタイの縄張りで勝手なことをしていたからよ」
と、胸を張って言い切った。
ルーミアに視線を送ると首を横に振った。
どうやらチルノが勝手にそう言っているようだ。
なんて傍迷惑な。
チ「そんなことより、アタイと勝負よ!!」
彩「なんで?」
チ「それは、アタイが最強だと証明するためよ」
俺はこの一言で悟った。
ああ、こいつは馬鹿なんだなと。
チ「それじゃ、いくわよ。」
彩「やベーな・・・」
はっきり言ってあのサイズの氷柱を食らって無事でいられる自身が無い。
ルーミアに助けを求めようとして、ルーミアの方を見ると
ル「彩人~、がんばって~♪」
完全に傍観者を決め込むつもりだ。
俺はため息を吐いて、
彩「しゃーない、やるだけやってみますか」
覚悟を決めた瞬間、先ほどと同サイズの氷柱が弾幕となって襲い掛かってきた。
彩「わっ、ほっ、おわっ!!」
何とかあたらないようにかわしていく。
チ「なかなかやるわね、ならこれでどうだ!」
チルノはカードのようなものを出して上に掲げて叫んだ。
チ「氷符『アイシクルフォール』」
叫んだ瞬間、今までとは異質の弾幕が襲ってきた。
両側から挟み込むように迫ってくる弾幕に気を取られ前方から来る弾幕への対処が遅れた。
彩「やべっ!!」
ル「彩人!危ない!!」
ルーミアが叫んでいるのが聞こえたが、それどころじゃない。
回避を諦め、来るべき衝撃に供え身を固くした。
が、いつまで経っても衝撃が来ない。
目を開けてみると、弾幕のスピードが極端に遅くなっていた。
弾幕だけじゃなく全ての動きが、まるでスローモーションの世界に入ったかのように遅くなっているのだ。
彩「これは、いったい・・・?」
考えても仕方ないので、とりあえず弾幕の軌道上から逸れた瞬間普通のスピードに戻った。
ルーミアの方を見ると安堵の表情を浮かべていた。
チ「今のをかわすなんて、あんた人間にしてはなかなかやるわね」
彩「そりゃ、どーも」
なんとか、危機は去ったが問題は他にある。
こちらは攻撃手段が無いのだ。
ゆえに、チルノを止める術が無い。
チ「じゃ、次行くよ。凍符『パーフェクトフリーズ』」
虹色の弾幕が無造作にばら撒かれた。
偶然、自分のほうには来なかったので動かないでいると玉の動きが止まり色が白になっていく、つかこちらに向かってきた。
彩「マジかよ!・・・ん?」
突然のことに驚いたが、さっきまでと違うことがあるのに気が付いた。
彩「弾幕一つ一つの動きが分かる!?」
どうしてこうなったか分からないが、ひとつ面白そうなことを思いついた。
飛び交う虹色と白色の弾幕、遠目から見ればとても綺麗だろう。
そう思った瞬間、ひとつのビジョンが浮かんだ。
それは、白と虹の玉の中で舞う自分の姿。
俺の体は自然に動いていた。
side~チルノ~
アタイは勝利を確信していた。
人間が、おそらく初めてであろう弾幕ごっこで勝てる確率はほぼ0。
ましてや空も飛べず、弾幕も打てないただの人間だ。
負ける要素はひとつも無い。
むしろ、よく粘ったほうだ。
本当はスペルの一枚目で決まったはずだった。
だがあの人間はかわしていた。
どうやったかは分からないが運がよかったのだろう。
だから、2枚目で終わるはずだった。
それが・・・、
チ「なんで?なんであたんないのよーーー!!」
人間は踊っていた。
それも弾幕の一番集中している部分で。
その顔は笑っていた。
新しいおもちゃを与えられた子供のように、目を爛々と輝かせ襲いかかる弾幕を全て紙一重でかわして。
そして彼は踊り(かわし)きった。
スペルはあと一枚。
チ「なら、これで決めてやる。雪符『ダイアモンドブリz』」
そのスペルが宣言されることはなかった。
side~彩人~
弾幕が止んだ。
攻撃が止まるのと同時に俺の舞も終了した。
なかなかうまくいったと思う。
とはいっても、迫る弾幕をかわす際に踊るように動くだけである。
何かをイメージしているとかそんなのは微塵も無い。
ルーミアの方から歓声と拍手が聞こえてくる。
それに軽く応え、チルノに意識を集中した。
どうやら最後の攻撃を行うようだ。
だが、チルノの声は第3者の声によってかき消された。
?「だめーーーーーーーーーー!!」
チルノの後ろから緑髪の少女が腕を交差させてチルノに突っ込んでいった。
チ「ガッ!!」
いわゆるクロスチョップを食らったチルノはそのまま湖に落ちていった。
?「もう!湖は皆のものだっていつも言っているでしょ!!チルノちゃんが湖を独り占めしたら皆が困るんだよ!!!」
チルノが落ちていったのも気づかずに注意文句を並べる少女。
こちらから声を掛けないと話が進まなそうなので緑髪の少女に声を掛ける。
彩「あの~~」
?「あぁっ!チルノちゃんがご迷惑をおかけしました。私からよく言い聞かせて置くので許してあげてください。」
と、声を掛けたらいきなり謝られた。
とりあえず落ち着かせるために子供をあやす常套手段を使った。
彩「気にしてないから、とりあえず落ち着いて、ね?」
なでなで
と、緑髪の少女の頭を撫でた。
?「ふぇっ?あっ・・・はうぅ~///」
彩「落ち着いた?」
?「は、はいっ///」
うん、どうやら落ち着いたようだ。
若干、ルーミアがむくれているような気がするが気にしない。
彩「俺は狂咲 彩人。好きに呼んでくれ」
大「私は大妖精です。皆からは大ちゃんって呼ばれています」
彩「よろしく。時に大ちゃん」
大「なんですか?」
彩「チルノが湖に浮かんでいるんだが?」
大「えっ?きゃーーーーーー、チルノちゃーーーーーーん!!!」
と、叫んでチルノのところに飛んでいった。
いじりがいがありそうだな、と思いながら腰を下ろしてチルノ救出劇を見ていた。
すると、ルーミアが隣に座ってこちらを見てきた。
どこかものほしそうな、何かを期待しているそんな目だ。
俺はすぐに思い当たってルーミアの頭に手を伸ばした。
なでなでなで
ルーミアは少し驚いたようだが、頬を朱に染め気持ちよさそうに目を細めた。
大ちゃんがチルノを抱えて戻ってくるまでルーミアを撫で続けた。
いつになったら神社に着くのか・・・
チルノの弾幕で一番避けにくいのはアイシクルフォールだと思うのは私だけでしょうか?