闇を纏う少女
side~彩人~
俺は現在、博麗神社なる場所に向けて歩いている。
何故、見知らぬ土地で目的地の場所が分かるかというと少し前まで遡る。
夢から覚めた俺は、いきなり思考が停止した。
だって 十数匹の猫が自分に丸めた体を密着させ寝ているのだ。そのうちの一匹は腹の上で寝ている。
通りで暖かいわけだ。
起こすのも忍びないがこのままというわけにもいかないので体を起こす。
すると寝ていた猫たちも各々伸びをして周りでにゃーにゃー鳴いていた。
彩「さて、紫は博麗神社で待ってるって言ってたか?つーか、初めての土地で地図もなしに特定の場所に行くってこれなんて無理ゲー?」
せめて方角だけでも分かれば何とかなりそうなものだが。
俺は文字どうり猫の手も借りたい心境で聞いてみた。
彩「なあ、博麗神社ってどの方角にあるか知らないか?」
自分でなにやってんだろうなと思いつつどうするか考えようとしたとき、お腹に乗っていた猫がある方角を向いてにゃーにゃー鳴いた。
よく見ると、その黒猫は尻尾が2本あり緑の帽子を被って耳には金の輪を付けていた。
彩「この方角にあるのか?」
そう聞くとまるで返事をするかのごとくニャーと鳴いた。
普通なら偶然で片付けるが今までの出来事からこの猫に乗せられるのも一興と思い、
彩「そっか、ありがと。助かったよ。」
と、黒猫の頭を撫でてやりその方角へ歩き出した。
side~???~
?「不思議な人間だったな~」
彼が見えなくなった後、私は猫の姿から人の姿に戻った。
今日もいつものようにマヨヒガ周辺の猫たちを集めて言うことを聞くように訓練しようと思っていた。
が、猫たちは見つからずしばらく探していると毛玉を見つけた。
それは、探していた猫たちが一人の少年に寄り添って寝ていたのである
ここいら周辺の猫たちは警戒心が強く、猫の妖獣であるわたしも警戒を解くのには苦労した。
それなのに、この少年の周りには多くの猫たちが寝ている。
有り得ない。
ただの人間に最初からここまで近づき、ましてやとても気持ちよさそうに寝ているなんて。
だが不思議だ。寝ているからなのかどことなくこの少年には警戒心が沸いてこない。
他の子たちを見ていると自分も眠くなってきた。
?「ちょっとだけ寝ちゃおうかな」
そう思った時にはすでに彼の隣まで来ていて、彼を起こさないように猫の姿で彼のお腹に乗った。
何故そうしたか自分でも分からない。ただ、
?「いいにおい///」
とても安心できた。そのまま、彼の心臓の音を聞きながら眠りに落ちた。
起きた彼は、博麗神社に行きたがっているようだった。
だから、私は神社のある方角を教えた。
そしたら、彼はお礼を言って頭を撫でてくれた。
私の主とその主の主、二人とは違う大きくて暖かい手が私の頭を包んでいた。
しばらく撫でてくれたその手は不意に離れていき名残惜しくもあったが彼は皆にお礼を言って歩き出した。
?「気持ちよかった///」
頭を撫でられていた余韻を感じつつ、思ったことを口にしていた。
?「また・・・会えるかな。」
今度はこっちの姿で。
side~彩人~
もうかれこれ数時間は歩き続けている。あたりは暗くなり始めていた。
今は初夏だから寒さで死ぬことはないだろうけど、できれば日が沈む前に神社に着きたかった。
日はとっくに沈み、空には綺麗な満月が浮かんでいた。
彩「しゃーない、今日はここらで野宿か。」
ここにきたときに、何故か持っていた自分のバック。
中身は三日分くらいの栄養食とお菓子、水が入っていた。
どれも家にあったものだ。紫が置いといてくれたのか?しかしどうせなら、神社に落としてほしかった。
と、どうしようもないことを思いながら空を見上げた。
彩「綺麗な満月だな」
?「そうなのか~」
彩「そうなのか~、じゃなくて空を見れば分かるだろ。」
?「ほんとだ~」
彩「それで、君は誰だい?俺は彩人って呼ばれてる」
ル「私はルーミアって呼ばれてるよ~」
唐突に始まった自己紹介、俺の言葉を真似るように話す少女だが、俺は直感で感じていた。
こいつは人間じゃない。
フランや道を教えてくれた黒猫と似た雰囲気を感じる。
何より、彼女の周りには闇と形容するのがふさわしい黒いもやみたいなものを纏っていた。
俺と少女はほぼ同時に喋っていた。
彩「君は」
ル「あなたは」
彩「俺を食べる妖怪?」
ル「食べられる人類?」
そして、無言のままお互いに見つめ合う。
どのくらいの時間そうしていただろう。
1分?10分?それよりも長く?経過した時間は分からないが沈黙は唐突に消えた。
彩「っぷ、くすくす、あははは!!」
ル「???」
ルーミアは突然笑い出した俺に訳がわからずきょとんとした顔を向けていた。
彩「いや、ごめんごめん。ほぼ同じタイミングでまったく逆の事言うからさ~」
そう言って、またからからと笑った。
どうやら笑いのツボに入った用である。
しばらく呆然と眺めていたルーミアだったが釣られたのか
ル「っふふ、くすくす、あははは」
ルーミアまで笑い出した。
そうしてお互いに落ち着くまで笑った後、俺はルーミアにひとつ提案をした。
彩「なあ、ルーミア?お腹が空いているなら俺を食べるよりも、もっといいものがあるぞ」
ル「それっておいしいの?」
彩「それは食べてからのお楽しみって事で。もし、満足できなかったら俺を食べてもいいよ。期待以上なら俺を食べないって約束してくれるか?」
ル「う~ん」
ルーミアは少し考え、やがて
ル「分かった。それがおいしかったら彩人を食べない。約束する。」
目を爛々と輝かせ、大きく頷いた。
嘘はついていない。
確認するとバックから板チョコを取り出し欠片をルーミアに渡した。
ル「これが、そのいいもの?」
彩「そ、まあ食べてごらん。きっと気に入るから。」
ルーミアはゆっくりと口に入れ、咀嚼し飲み込んだ。
ル「おいしい!!すごくおいしい!!ね、もっと頂戴!!」
どうやら気に入ってくれたみたいだ。
これで食べられることはないと思うが、今にも食べられそうな勢いで身を乗り出してくるルーミアに全体の半分をあげた。
とても幸せそうな顔をしてチョコを食べる姿は年相応の女の子にしか見えない。
俺はその姿を見ながらルーミアに質問していた。
彩「なあ、ルーミア、博麗神社ってどこにあるか知ってるか?」
食べ終わったらしいルーミアは、満足げな顔をしながら
ル「あの、紅白のいる場所?知ってるよ」
紅白とはおそらく巫女の事だろう。衣装が紅白だし。
彩「その場所を教えてくれないか?そこに用があるからさ」
ルーミアは少し考える素振りを見せ、上目遣いでこう言ってきた。
ル「私も一緒に行っていい?そしたら教えてあげる。」
ッッッ!!これは反則だろう。
美少女に上目遣いでお願いされて断る奴は男じゃねぇ。
彩「いいのか?ルーミアが迷惑じゃなければ願ってもないけど」
心の動揺を抑えつつ何とか平静を保てたようだ。
ル「決まりね!!それじゃ明日に備えてもう寝よう。」
そう言うやいなや俺の隣に腰掛け、もたれかかるように体重を預けてきた。
なんというかずいぶん無防備なんだな。
襲われるとか考えないのかね。
襲うつもりもないけど。
俺は断じてロリコンじゃない!!ロリコンじゃない!!
大事な事なので2回言いました。
ルーミアはすでに寝息を立てており、その寝顔はとてもかわいらしいものだった。
彩「明日には、着けるといいけど」
そう一人ごちながら意識を手放した。
ルーミアって可愛いですよね。見ているととても和みます。