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冥界の管理人

最近また少しずつ書けるようになってきました。相変わらずの更新速度ですが続きをどうぞ。



彩人と分かれてしばらく階段を登っていく。飛んでいる為身体的疲労は無いのだがあまりにも長い階段にうんざりとしそうになる。博麗神社の階段もまともに登ろうとすればかなり長いのだが、それでも上を見上げれば鳥居の頭くらいは見える。しかし、ここの階段はまったく先が見えない。比喩ではなく階段の先が視認できないほどの距離まで続いているのだ。

飛んでいるとはいえ先の見えない階段をさらに登り続けて、ようやく階段の終わりが見えてきた。

階段を登り終えた先には大きな屋敷が建てられており、階段の先に閉ざされた門はまるで誘っているかのように開け放たれていた。


霊「まるで、誘っているみたいね。紅魔館の時みたいに門番が居るわけでもないみたいだし」


隣を飛んでいた霊夢が怪訝そうにそんな事を呟いた。そう呟いただけで何の躊躇いも無く、門を潜るのでその発言にあまり意味は無い。もし仮に罠だとしてもそれを余裕で回避できるからこその行動であるのだが、本人は至って無自覚だから恐ろしい。


魔「罠かも知れないが…そんな事関係ないだろ?さっさと今回の黒幕を張っ倒して花見と洒落込みたいぜ」


それに彩人のつまみも美味いしな、と頬を緩ませながら語る魔理沙に霊夢が呆れた視線を送りながら、


霊「あんた、しっかりと彩人に胃袋掴まれてるじゃない」


普通男女が逆でしょ、と言う霊夢。


「そんな事言う霊夢だって、最近じゃずっと彩人達に食事を作ってもらってるらしいじゃないか。うらやm……いやいや、当番制だったはずだろ?霊夢だって人の事言えないじゃないか」


「あら、だって私は家長だもの。それに咲姫達が作らせて欲しいって言ってきたのよ、何の問題も無いわ」


軽口を叩きながら、屋敷の中を散策する二人。屋敷は純日本屋敷といった雰囲気で、広い庭には何本もの桜の木や鯉が泳いでいる池、適度な大きさの岩が並び縁側から眺めればさぞ日本人の心を刺激する光景が映るだろう。

不意に霊夢が立ち止まり、お札を構えた。魔理沙も箒に跨り軽く浮く。

視線の先には花の咲いてない大きな桜の木があり、そこに何者かが背を向けて立っていた。

二人の臨戦態勢が整ったの見計らったかのように振り返り、妖艶に微笑む女性。否、彼女は人の姿ではあるが人ではないし妖怪でもない。その正体は成仏する事を忘れた霊、亡霊であり、その能力から死んだ人の魂が集う冥界の管理人を閻魔から任されている。


?「ようこそ、博麗の巫女に魔法使いさん。我が家自慢の桜はお気に召していただけたかしら?」


妖艶に微笑んだ先ほどと打って変わり、歳相応に見える笑みを浮かべて口元を扇子で隠しながらクスクスと笑う。


霊「見事な桜だわ、ここでお花見をするのも風情があっていいかもね」


魔「これほどの桜はなかなか見る事が出来るもんじゃないな」


辺りを舞い踊る花びらを見ながら言う霊夢と魔理沙の頬には一筋の汗が流れた。先ほどから感じる嫌な気配、冥界に入った時から微かに感じていたそれはここに近づくほど大きくなっていった。その元凶は目の前で優雅に佇む少女…ではなく、その背後に(そび)える大木からだった。


?「それならここでお花見でも如何かしら?もうすぐ西行妖が満開に花を咲かせるから、それで今回の異変は終わり。幻想郷にも春は戻るわ」


それが本当の話ならば、もうすぐこの異変は終わる。わざわざ自分達が手を出さなくても勝手に終わってくれるのだからこれ以上手を出す事もないのかもしれない。

しかし、霊夢のもはや予知と言っても過言ではない直感が告げていた。


“この桜は咲かせるべきではない”、と。


霊「勘だけどその木が咲いたら、きっと碌でもないことが起きる気がするのよね」


魔「霊夢もか?だったら気のせいじゃないみたいだな。その木からはヤバイ匂いがぷんぷん漂ってくるぜ」


そもそも、目の前に居る黒幕を倒せばそれで異変が解決するのだからわざわざ異変を長引かせる必要などまるで無い。いつまでも寒いままでは暖房代だって馬鹿にならないし、最近氷精のハイテンションに振り回されて彩人と一緒に過ごす時間も少なかった。

博麗の巫女としての霊夢では無く、一人の人間としての霊夢は心の中である種の焦燥に似た感覚を覚えていた。しかしそれが何なのか、そのちいさな違和感に気付かずに博麗の巫女として霊夢はお札を構えた。


?「あらあらやる気なのね?それならこの白玉楼の全てを持って受けて立つわ。貴女達が運んできた春があれば西行妖も満開になるでしょうし、弾幕ごっこで最後を締め括るのも一興かしら」


霊・魔「「ッ!!」」


先ほどまで朗らかに微笑んでいた少女は冷酷とも言える美しい笑みを浮かべる。相変わらず口元は扇子で隠しているが少女の体から発せられるプレッシャーは不相応なほど強烈だった。


幽「そういえば自己紹介がまだだったわね。ここ白玉楼の当主兼冥界の管理者、西行寺幽々子よ。来なさい博麗の巫女に魔法使い、幻想郷の春の行方…決めましょう?」


幽々子の体が宙に浮かび、周囲には数匹の蝶が舞い飛ぶ。ひらりひらりと桜の花びらと蝶が舞踊る光景は幻想そのものであった。


幽「さぁ、逝きなさい」


幽々子が扇子を閉じる動作に合わせて、桜の形をした弾幕が霊夢達に襲い掛かった。数えるのも馬鹿らしくなるほど濃密な弾幕を、しかし霊夢達は焦る事も無く次々と回避していく。だが、あまりにも数が多い為回避に専念しなければいずれ被弾してしまうのも事実だった。天性の勘を頼りに回避し続ける霊夢に対し、魔理沙は動体視力と反射神経と経験を頼りに回避し続ける為、このままではジリ貧になるしかない。その結論に至った魔理沙は集中力が切れる前に勝負を決めようと弾幕の間を潜り抜けての密度の薄い上空――幽々子の浮かんでいる位置よりもさらに上空――でミニ八卦路を構えた。


魔「悪いが最初から飛ばしていくぜ?恋符『マスタースパーク』!」


ミニ八卦路に魔力が集い、極太のレーザーが幽々子の居る周辺を飲み込んだ。魔理沙の十八番であるパワー全振りの一撃。大抵の相手ならばそれで終了、生半可に実力があっても大ダメージは免れない一撃をまともに喰らえば弾幕ごっこを続けることは到底不可能である。


魔「やったぜ!」


霊「ちょっと!もう少しで私に当たるところだったじゃない!」


魔「当たらなかったんだから別にいいだろ?」


霊「当たらなかったんじゃ無くて避けたのよ!!」


軽口を叩き合いながら、魔理沙は異変が終わった事に安堵した。


魔「(これでようやく冬から春が来るんだな。大分遅くなったけど帰ったら彩人が作った料理と桜で宴会だな)」


昔の人は言ったそうだ―勝って兜の緒を締めよ―と。

先ほど幽々子が居た場所―マスタースパークの余波で砂埃が舞っている―から無数の弾幕が魔理沙へと襲い掛かった。


魔「なッ!!」


完全に不意を突かれた形となった魔理沙だがなんとかギリギリで回避行動を取ることができた。勝ったと思っていた矢先の事だった為、完全に不意を突かれた形となったが左肩に掠った以外は全て避けきった。


幽「あらあら、勝手に勝った気で居るなんてまだまだ青いわねぇ」


砂埃が晴れ、今回の異変の黒幕である西行寺幽々子が姿を現した。桜色の結界が彼女の周囲に展開されており、彼女自身には傷一つどころか疲れた様子の欠片も見当たらない。魔理沙のマスタースパークは確かに普通ならば耐え切れるものでは無いし、大妖怪クラスでもまともに受けては唯では済まない程度の火力はある。では何故、幽々子は無傷なのか?

答えは単純明快である。


彼女―冥界の亡霊姫(幽々子)もまた規格外と称される側の存在であるという事だ。


霊「魔理沙のマスパで傷一つ付かないなんてね」


魔「正直ショックだぜ・・・絶対の自信があったんだけどな」


霊夢は表情一つ変えることなく今の状況を自然に受け止め、魔理沙は絶対の自信を持っていたスペルが完全に防がれた事に多大なショックを受けていた。だが魔理沙の表情には曇りが無く、真逆の表情をしていた。


霊「あら、てっきり自信喪失してついでに戦意も喪失してるのかと思ったけど全然余裕そうね」


魔「いや、ショックは受けているぜ?霊夢でさえあんな風に受け止めた事が無いだけに絶対の自信は持っていたんだ。だけど、あれは私の主砲であって切り札じゃない。主砲がダメなら別の手札を切るだけだぜ」


魔理沙の表情はとても晴れやかだった。それはまるで冬眠していた虫や動物達が目を覚ましてから一番に求め、長い冬を耐え忍んだ草木が渇望して止まない、温かく、春の息吹を感じさせる太陽のような笑顔だった。

そんな魔理沙の表情を呆れたように一瞥した霊夢は油断なくお札を構えなおした。


幽「・・・・・面白い子達ね。ちょっとだけ私も楽しくなってきたわ」


魔理沙の笑顔に中てられたのか幽々子の口元にもまた自然と笑みがこぼれていた。









side~彩人~



彩「・・・・・・だんだん濃くなっているな」


気絶した妖夢を放って置くわけにも行かないので介抱を咲夜に任せて、終わりの見えない階段を飛んで登っていく。咲夜にはかなり渋られたがとある条件で手を打ってくれた。

門を抜ける前までは微かに感じる程度だった嫌な気配は門を潜り抜けた時から徐々に濃く、ねっとりと絡み付いてくるかのような感覚が強まっていた。


舞花「なんか嫌な感じだね、お姉ちゃん」


咲姫「そうね、なんだか全身に絡み付いてくるようで鬱陶しいわ」


舞花は顔を歪め、咲姫は両手で身体を抱きしめており、二人とも不快感を隠そうともしないで居る。

しばらく登っていくと前方で膨大な魔力が一箇所に集まり、直ぐに巨大な爆発音がと共に魔力の余波による突風が俺を襲った。


彩「うわっ!」


腕で顔を庇いながらその場で踏ん張る。幸い直ぐに突風は止み突風の原因、流れてきた魔力の余波は見知った相手のものだった。


彩「今のは、魔理沙のマスタースパークか?」


ある時は急な思いつきで弾幕ごっこをして、ある時は暇だから相手になれと弾幕ごっこの相手をして、ある時は新作のスペカの実験台になれと問答無用で弾幕を張ってきたり、またある時は・・・・・etc

これまで幾度と無く、魔理沙と弾幕ごっこをしてきたのだから間違いない。誰よりも力強く、力こそ全てを地で体現しているスペルカードは魔理沙以外に居ない。

幽香でさえ効率とか制御とかに割いている部分があるにも関わらず、魔理沙は頭の先からつま先まで威力の事しか考えていないので非常に分かりやすい。

魔理沙があれを使ったのならおそらくすでに勝負は付いているかも知れない。パワー全振りなだけあってその威力は折り紙付だ。あのフランでさえまともに喰らえばただでは済まないのだからその威力は押して知るべし。

だが今回の黒幕は自然現象を捻じ曲げることができるほどの実力者だ。こっちじゃあっちの常識は通じないのだから意外と簡単にできてしまうのかも知れないが安易な考えはしない方がいいだろう。何にせよ、早いとこ霊夢たちと合流した方がいいな。

俺は逸る気持ちを抑えながら、得体の知れない何かの気配に嫌悪感を抱きながら、追いついた頃には終わってるといいなと淡い期待を抱きながら、どこまでも続きそうな階段の先を見据えてさらに加速した。

そろそろ春雪異変も大詰め。展開はできているのですが文章の構成ができない現実・・・。

気長にまっていてください

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