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叱咤激励

大変長らくお待たせして申し訳ない。

やっと続きを書くことができました。

それでは、どぞ~

side~彩人~



力ずくで結界を破壊して、出迎えてくれたのは博麗神社の石段が可愛く見える程の長い長い石段とその石段に沿って植えられている桜の木だった。


魔「うひゃ~、すごい桜だぜ」


咲夜「こっちはすでに春って感じね」


散り逝く花びらを眺めながら、どんどん先へと進んで行く。

そして、先に進めば進むほど先ほど感じた嫌な感じは強くなっている。

ねっとりと絡みついてくるようなそんな嫌な感じ。

その事ばかり考えていて、周囲への警戒を怠っていた。


咲姫「(彩人様、右から来ます!!)」


彩人「え?」


右の方を向くと、桜の木の陰から誰かが飛び出してきて俺に斬りかかって来ていた。

不意の出来事に一瞬だけ体が硬直してしまい動くことができない。


彩「(やばっ!)」


咄嗟に腕を交差して身を守ろうと身体を堅くした瞬間


ガキィンッ!!


と、金属と金属がぶつかり合う音が聞こえた。


咲「これで貸し一つね、彩人」


彩「咲夜・・・助かったよ」


自分の前には能力で移動したのだろう、咲夜がナイフで刀を受け止めていた。

攻撃が受け止められたことにより、襲撃者は一度距離を取りこちらの様子を伺っていた。


咲夜「こんなときに考え事なんてらしくないわね、どうしたの?」


彩「いや、大した事じゃない。 それよりも今は目先の敵だ」


咲夜「襲撃された本人が言う台詞じゃないわね」


軽口を叩きながらも目の前の襲撃者からは意識を外さない。


彩「霊夢!魔理沙!先に行ってろ。必ず追いつくから」


少し先に居る二人に対して叫ぶ。

霊夢は何も言わずに目配せだけして、魔理差は大声で「必ず来いよ」と叫び霊夢の後を追っていった。

霊夢達が行ったのを確認してから改めて襲撃者の方を見る。

襲撃者を見て、俺は驚いた。

相手も若干驚いているようだった。


彩「妖夢・・・」


妖「まさか・・・賊が彩人さんだったなんて」


襲撃者は冬の日に偶然出会った少女だった。彼女は困惑気味に刀を構えている。


咲夜「何?知り合い?」


彩「一度会っただけどな」


咲夜はふ~んとジト目でこちらを見てくるが警戒は解いていなかった。


咲夜「(どうして彩人の周りは女性が多いのかしら)ボソッ」


咲夜の呟きは彩人には聞こえない。


彩「なぁ、この異変は妖夢が起こしたのか?何が目的なんだ?」


妖「私の目的は、主の願いを叶える事。 それ以外に目的はありません!」


咲夜「なるほど、つまり貴女の主が黒幕なのね」


咲夜の言葉に妖夢は、しまったという顔になるがもう遅い。


妖「くっ、まぁいいです。ここから先へは通しません」


彩「すでに二人通しているけどね」


妖「うっ、うるさいです! いちいち人の揚げ足を取らないでください!!」


若干羞恥に顔を染め、手に持っている刀を構える。

弄り易い子だなぁ。


妖「彩人さん「彩人でいいよ、それと敬語もいらない」彩人、どうしてもこの先に行くつもりですか?」


敬語が抜けていないがきっと普段からこのしゃべり方なのだろうと、勝手に推測する。


彩「まぁね、約束もしたことだし」


妖夢は一瞬悲しげな顔をした。しかし、すぐに元の表情に戻りこちらに向けて殺気を飛ばしてきた。


妖「そうですか、なら仕方ありません。 貴方達にはここで帰ってもらいます」


ナイフを構えて臨戦態勢をとる咲夜を手で制する。


彩「咲夜、ここは俺に任せてくれ」


咲夜「・・・大丈夫なの?」


彩「あぁ、せっかく刀を持っていることだしな」


咲夜「そういうこと、わかったわ」


俺の言いたい事が分かったのか、ナイフをしまって桜の木に寄りかかったところを確認すると再び前を向いた。


彩「悪いけど、俺達も引くわけにはいかないんだ。だから・・・」


春疾風を鞘から抜き春風を逆手に、春疾の切っ先を妖夢に向ける。


彩「押して通らせてもらうよ」


妖夢は答えない。そのまま互いに睨み合ったまま、一陣の風が吹き抜ける。

そして、空を舞う花びらがほんの刹那の間、視界から妖夢の姿を隠した。

俺は念話で二人に話しかける。


彩「(二人とも、行くよ?)」


咲姫「(はい!)」


舞花「(任せて!)」


視界から花びらが消え、妖夢が居た場所にはすでに彼女は居なかった。


妖「ハァッ!」


彩「ッ!!」


左側面から妖夢の刀による横薙ぎを、刀を地面に突き刺して受け止める。

咄嗟に反応できたはいいが、両手で刀を握っている分一撃が重い。


ガキィィンッ!

チィィン!

ヒュンッ!


金属と金属が激しく打ち合う音が響き、続く二閃、三閃目は受け流して、避ける。

バックステップで距離を取り、こちらが体制を整える前に妖夢が再び動いた。


妖「人符『現世斬』!」


ただでさえ人間の動体視力では捉えるのが難しいスピードで斬りかかって来る妖夢の斬撃がほとんど捉えられないスピードで襲い掛かる。

一瞬の間に、妖夢は先ほど居た場所から間反対の場所に刀を振り切ったままのポーズで立っており、俺はその場からほとんど動いていなかった。


妖「やはり、一筋縄では行かないようですね」


こちらを向いて、再び構える。

その表情は、驚愕、そしてほんの少しだけ愉悦が混ざっていた。


妖「まさか、その場からほとんど移動しないで全て捌かれるとは思いませんでした」


妖夢の斬撃は、人間の俺にとっては目で追うのすら難しい。

斬撃の流れが読めても、避けて、流すだけの動きが追いつかないほどの連撃を受ければ流石に捌ききれない。

ならばどうしたかと言うと、答えは簡単。

時間の流れを弄ってしまえばいい。

自分だけ時間の流れを少しだけ速める。すると、それに比例して周囲がゆっくりと動く。

さながら、DVDで0.8倍速とかで映画なんかを見てみるとイメージできると思う。

妖夢の動きがゆっくりになり、目、身体、神経を総動員して全ての斬撃を捌いたという訳だ。

だがこれは物凄く体力を使う上、霊力をガリガリと削っていくのであまり多用はできない。

今回は斬撃の数こそ多いものの、一瞬の刹那の間に起こった攻防だったので思ったよりも消費が少なかった。

咲夜は俺の能力を知っている為、特に驚いた様子もないがその事情を妖夢は知らない。


妖「師匠以外で刀同士の戦いは初めてですが、こんなにも戦いが楽しく感じたのは初めてです。ですが、同時に残念でもあります」


喜色の表情から一転して妖夢が悲しそうに刀を構え、濃密な霊力を練り始めた。


妖「私もまだまだ未熟ではありますが、その私から見ても貴方の太刀筋は荒削りです。しかし、同時に見惚れるほどに真っ直ぐで力強い。貴方は間違いなく強くなります。そして、強くなった貴方ともう一度戦いたい。だからこれが最後です、退いて下さい」


霊力と殺気が濃くなる。おそらく、これを断ったら最後の一撃を放つ心算なんだろう。

自然と頬を汗が伝う。妖夢は本気だ。これを断ったら本気で殺しにくる。それに俺が仮に死んだとして今度は咲夜が黙って居ないだろう。後々紅魔館の面子にも知れるだろうし、またフランが暴走するかもしれない。そうなると、この状況を丸く収めるためには俺が妖夢に勝つしかない。

構えてた手をだらりと下げる。それを見て、妖夢は退くと判断したのか安堵の表情を見せる。


彩「悪いけど、答えはノーだ。約束は守らないといけないしな」


妖夢の表情が歪む。勝手に勘違いした向こうが悪いのだがなんだかこう罪悪感が芽生えるな。


妖「そうですか、ならこれで決めます!」


妖夢がスペルカードを取り出すと同時に俺もスペルカードを取り出した。

この勝負に弾幕は不要、ならぶっつけ本番だけど剣術スペルで迎え撃つほか無い。


彩「いくぞ、妖夢!!」


妖「来なさい!!」


二人の霊力が高まり、スペルカードが輝く。

この一撃で終わらせるために、二人は叫んだ。


彩「剣舞(けんぶ)狂乱彩華(きょうらんさいか)』!!」


妖「獄界剣『二百由旬の一閃』!!」


一瞬で二人の姿が掻き消え、周囲を舞っていた花びらは粉々に切り刻まれる。半径20メートルの範囲を中心に目では到底追いきれない程の斬撃の嵐が場を支配し、しかしそれでも咲夜が立っている場所だけは斬撃が飛んでこなかった。

時間にして約30秒、スペルの効果が切れると同時に現れたのは気絶した妖夢を抱えて立っている彩人の姿だった。気絶してなお、刀を離さなかった事は賞賛に値するが所々切り傷が目立つ事からあの中では壮絶な斬り合いが行われていたことは想像に難くない。


咲夜「終わったのね?」


彩「あぁ、なあ咲夜?」


彩人は咲夜の方を見ないで問いかける。その視線は今気絶している妖夢へと注がれている。


咲夜「何かしら?」


彩「俺ってさ、甘いのかな?」


唐突な問い。前置きも無くいきなり問いかけられた意図を咲夜は正しく理解していた。戦闘中にずっと咲夜が感じていた違和感。それは彩人の動きからも容易に感じ取ることができた。


咲夜「そうね、甘いわ」


戦闘中彩人は妖夢にかすり傷一つ付けていなかった。それに妖夢は気付いていなかったようだが気絶させたのだって、首に一撃入れて意識を刈り取る方法を選んだ。

相手が殺しに来てる戦闘であまりにも不相応な戦い方をしていた。それが咲夜が感じた違和感であり、彩人が咲夜に聞いた問いだ。

そっか、と自嘲気味に彩人は笑う。


彩「実はさ、怖くなったんだ。刀で人を傷つけるのが」


手近な木に妖夢をもたれさせ、自分の愛刀の柄を撫でる。


彩「弾幕ごっこは自分が気を付ければそうそう相手が死ぬって展開にはならないけど、剣同士は違う。怖いんだよ、相手の命を奪うっていう行為そのものが」


目の前の少年が酷く儚い存在に見える。いつもと違う雰囲気に咲夜は息を呑んだ。今年の夏に自分が仕える主の屋敷に攻めてきた侵入者と同一人物だとはとても思えない。あの時は常に感じられる余裕が今は欠片も感じられない。

だから・・・





ーーーそれが許せなかった。








パァンッ!!



乾いた音が響き渡り、彩人は呆然と左の頬を押さえる。

目の前には腕を振り切った咲夜が居る。つまり、叩かれたのだ。


彩「咲夜?」


咲夜「らしくないわよ、貴方はそんなに弱かったのかしら?妹様を救った時の貴方はそんなに弱い存在じゃなかったはずよ。絶対の自信に溢れていた、だから信じることができたって妹様はうれしそうに話されていたわ。人を傷つけるのが怖い?当然よ、私だって最初は躊躇ったわ。でもね、私はそんなことよりも守ることが出来たのに守れなかった事や大事な紅魔館の皆が傷つく方がよほど怖い。だから私はナイフを振るうのよ」


ふと、咲夜は微笑む。慈愛に満ちた、まるで聖母のような微笑みを彩人だけに向けた。


咲夜「人を傷つけるのが怖いと思うのは当然よ。そんな考えはここじゃ甘い、すぐに死ぬわ。でも私は嫌いじゃないわ、それが貴方の強さでもあるのだから。さぁ、彩人!しっかりしなさい!約束したでしょ、後から行くって」


彩人は弾かれたように目を見開く。それからゆっくりと目を閉じて、次第に口角が上がっていった。


彩「そうだな、約束したもんな。約束なら守らなくちゃいけないよな」


咲夜「当然よ、女の子の約束をすっぽかす男なんて論外だわ」


どこかすっきりした顔をして、階段の先を見つめる。隣に立つ強い少女の方を向かずにつぶやいた。


彩「咲夜、ありがとう」


返事は無い、だけどその言葉はしっかりと届いたようで隣からクスリと笑う声が聞こえた気がした。


二次創作で東方が解禁されて本当に嬉しい。リアルの忙しさに負けずに完結を目指すのでどうぞよしなに。

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