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春は曙 雪の頃はさらなり?

春雪異変第一幕です。


それでは、どぞー

side~彩人~



寒かった日々も過ぎ去り、残り少なくなった雪がそれを実感させてくれる。

桜の枝は遠目から見ると、微妙に色づいていることから開花までもう少しと言ったところだ。

まだ冬の名残である冷たい風に吹かれると、あの美しい銀世界が見られないのは寂しくもあり同時に先の楽しみでもある。

暖かい太陽が出る日もあれば、冷たい風が吹く日、そして冬ではなかなか見られない雨の日が新しい春が近づいて来たことを教えてくれる。

そして、桜が咲けばそれを見ながらみんなで美味しい物を食べて、飲んで、騒ぐ宴会が始まるのだ。

桜の開花まであと少し・・・・・・








彩「のはずなんだけどね~」


カレンダーで言えば、既に4月の中旬に差し掛かっていた。

普通ならばすでに桜の開花が始まっており、お花見はいつにしようか? などとあれこれ考えている時期なのだが、


咲姫「未だに眼前は銀世界ですね」


彩人にくっついて暖を取っているのは刀の付喪神である咲姫だ。 ちなみに反対側には舞花がくっついている。

咲姫が言ったように未だ幻想郷は雪が降り続いていた。

ちょっとやそっとじゃない、2月に降るレベルの大雪がもつもつと降っているのだ。


舞花「これって異変じゃないのかな~?」


そう言う舞花の視線の先では、霊夢が炬燵に入って蜜柑をもそもそと食している。

その姿は正にぐーたら巫女。


彩「なあ霊夢、これって異変だろ? 解決しに行かなくていいのか?」


霊「めんどい」


・・・・・・取り付く島もねぇ。

困ったな、これじゃあお花見が出来ないし何より新しいお菓子のアイディアがあるのに冬のままじゃ手に入らない食材もある。

俺は両隣の二人にアイコンタクトで指示を出す。


咲姫「困りましたね、これじゃあお花見で彩人様の美味しい料理でお酒が飲めませんね」


ピクッ!

霊夢が少しだけ反応する。


舞花「そうだね、それに春は筍が旬だからいろんな筍料理も食べられないしね」


ピクピクッ!

霊夢の反応が大きくなる。


彩「そんなこと言ってもしょうがないだろ。 せっかく新しい茶菓子のアイディアもあるのに春が来ないんじゃどうしようも 「なにしてるの、これは完璧に異変よ! さっさと解決しに行くわよ!!」 変わり身速いな」


霊夢が炬燵から出たと思ったら40秒掛からない3秒で準備を終えていた。

フッ、チョロい。


霊「おっ花見おっ花見、たっけのこたっけのこ♪(春を奪うなんて随分と舐めたことをしてくれるじゃない、博麗の名においてとっちめてやるんだから)」


本音と建前が逆だ。 流石普段から気のままの生活をしているだけはある。


霊「何してるの彩人、さっさと行くわよ!」


彩「わかったよ」


さてさて、どんな奴が黒幕なんだろうか。














神社を飛び出してから数分、遠くから二つの人影がこちらに近づいてきた。


魔「お~い、霊夢ぅ~、彩人ぉ~」


霊「あれは魔理沙と・・・」


咲夜「久しぶりね、霊夢。 彩人は、数日ぶりかしら?」


彩「そうだな、数日ぶりだな咲夜」


二つの人影は、魔理沙と咲夜だった。


霊「魔理沙は大方異変と睨んで出てきたんでしょうけど咲夜は?」


咲夜「私はお嬢様の命令でね。 寒いからどうにかして来なさいって」


彩「はは、レミリアらしいな」


という事は、ここに居る全員が同じ目的という事か。


霊「それじゃあ、さっさと行くわよ」


そう言うと、霊夢は先に飛んでいく。


魔「どうしたんだ? やけに張り切っているじゃないか」


咲夜「そうね、前の異変の時よりもやる気満々ね」


彩「あー、ちょっとな」


霊「ちょっと、早く来なさい! 置いてくわよ?」


霊夢が遠くで叫んでいる。


彩「霊夢が呼んでいるから早く追いかけようぜ。 話は移動しながらでも出来るだろ?」


そう言って霊夢に追いつく為、少しスピードを上げて追いかけた。












咲夜「なるほど、それで」


魔「全く霊夢らしいぜ」


霊夢がどんどん先に行くので、必然的にその後を追いかける形になる。

だが、当ても無くただ飛んでいる訳ではない。


彩「どこに向かっているんだろうな?」


霊夢の勘は鋭い、魔理沙が言うには特に異変に対する直感は百発百中らしい。

今は丁度、霧の湖の上空辺りだろうか。

不意に霊夢が停止した。


魔「? 霊夢どうしたんだ?」


霊「あやしい奴が居るわ」


霊夢の視線の先、そこには・・・



チ「見て見てレティ、ついに雪だるまが完成したよ! やっぱりアタイったらサイキョーね」


レティ「随分大きいわね」


チルノの隣にはチルノの身長の5倍はあろうかという巨大な雪だるまがあった。

それをチルノが一人で作ったのだとしたら、ある意味サイキョーなのかもしれない。


彩「なんだ、チルノとレティじゃないか。 二人が怪しいのか?」


霊「馬鹿(チルノ)の方は冬が長引いて元気なだけでしょうけど、あの妖怪は冬に力が強くなる妖怪よ。 なら動機としては十分じゃないかしら?」


そう言うと、お札と針を構える。


彩「いや、多分違うぞ? 確かに動機としては十分だけどレティにそんなことできるとは思えないな。 とりあえず話してみようぜ」


そう言って返事も待たずレティとチルノに近づいた。

上空から見たときは小さかった雪だるまも近づいて見ると本当に大きかった。


彩「よう、お二人さん」


レティ「あら彩人」


チ「あー、彩人だ!」


二つ目の雪だるまを作っていたチルノは手を止めてこちらに駆け寄ってくる。


チ「どう? アタイ一人で作ったのよ、すごいでしょ?」


ふふん、と踏ん反り返って胸を張るチルノ。


彩「ああ、すごいな。 というか、よく頭を乗せられたな」


雪玉の直径が、体はチルノの3倍、頭は2倍ほどの大きさだ。 必然的に重量も増えるはずなんだけど。


チ「アタイはサイキョーだからそんなの楽勝よ」


レティ「ところで、そんなに大勢でどうしたの?」


すると、霊夢が口を開いた。


霊「もう春だって言うのに未だに雪が降り続いているでしょ? これは絶対に異変よ、だから黒幕を探していたのよ」


レティ「なるほどね、でも私じゃないわ。 もちろん、チルノでもない」


レティはチルノを庇うように引き寄せる。 チルノは話が分かっていないようだ。


霊「そう、ならいいわ。 行きましょう」


彩「またな、チルノ、レティ」


二人に手を振って、霊夢の後を追おうとすると


レティ「ちょっと待って!」


レティに呼び止められた。


レティ「貴方達は春を取り戻しに行くんでしょう? この長く続いた冬を終わらせる為に」


そう言うレティの瞳には諦めにも似た光が見え隠れしていた。

彼女は、冬にしか見かけることが出来ない妖怪。

しかも冬に出歩く人はもちろん、妖怪でさえ家に閉じこもるか暖かいところに居る。

そうすると彼女を覚えている者、知っている者は限られてくる。

もしかしたら、俺もチルノに紹介されるまで彼女と出会うことが無かったかも知れない。

忘れられる事は本当の意味で死ぬ事なのだから。

そっか、レティはただ自分の事を覚えていて欲しいんだな。


彩「違うよ、終わらせるんじゃない。 また冬の季節が来た時に、思い出すために行くんだ」


レティ「思い・・・出す?」


彩「そう、去年の冬はこんな事があった、あんなことがあった。 そういう思い出があるから次の冬が楽しみになるんだ」


レティ「貴方はそう思ってくれるのね。 でも、他の人間や妖怪は冬が好きなんて思っちゃいないわ そして・・・いずれ私の事を覚えている人なんて居なくなるわ。 この子を除けば、貴方もいずれそうなるわ」


チルノの頭を優しく撫でる。

チルノを見る目はまるで妹を見る姉のようだ。


彩「ふ~ん、そっか。 ならこうしよう」


レティに近づき、その手を掴む。

レティの手はまるで雪のように白く、粉雪のように柔らかくすべすべしていた。


彩「毎年冬になったら、俺に会いに来てくれ。 もし俺が忘れていたら、絶対に思い出すから。 それにもし忘れていたら、レティの言う事を何でも聞いてやるよ」


そう、忘れたならば思い出せばいい。

まあ、そんなことはありえないが。

レティはきょとんとしていたが急に笑い出し、


レティ「プッ、アハハハハ! 分かったわ、もし忘れていたら絶対に思い出してもらうわよ。 それと、何でも言う事を聞いてくれるのね?」


彩「二度は言わないよ、まあ忘れていたらだけどね」


よかった、少しはレティの助けになったみたいだ。


レティ「ねぇ、春ってそんなにいいものなの?」


彩「ん? そっか、レティは見たことが無いのか。 それなら、いいものを見せてやるよ」


ポケットから一枚のカードを取り出す。

設定は当たり判定無し、単純に範囲が広いだけの観賞用スペルとして発動する。


彩「狂咲『桜花爛漫』」


周囲に桜の花びらを(かたど)った弾幕が展開される。

当たり判定は無いので、幻影と大差無い。


彩「どう? これが春の醍醐味の一つ、桜吹雪だよ」


レティ「綺麗・・・」


花びらが一つ一つ縦横無尽に舞い踊り、自然に降って来た雪と共に華麗なダンスを演出する。

ひらりひらりと重力に従いながらも風の抵抗を受けて真っ直ぐには落ちない。

雪で作られたキャンパスの上を桜色で染め上げる。

普通ならば絶対に見ることの出来ない光景は、まさに幻想世界と表現しても過言ではないだろう。


レティ「ありがとう、もう十分だわ。 また来年も見せてくれるかしら?」


彩「それくらいお安い御用だ。 それじゃ、またな」


俺は雪と擬似的に作った桜の花びらの中を通って、霊夢たちを追いかけた。

スペカの当たり判定無しの観賞用とは作者が勝手につけた設定ですのであしからず。


感想待ってます。

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