番外 ルーミアのターン
この話は本編のサイドストーリーです。
ぶっちゃけると、ただ書きたかったから書きました。
この話を読んでニヤニヤして頂けたら嬉しいです。
side~ルーミア~
ル「.........ッ!!!」
ガバッと勢いよく体を起こした。
鼓動が早い、胸が苦しい。
額には玉のような汗が、着ている服も汗で濡れて気持ち悪い。
浅く速い呼吸を繰り返し、幾分か落ち着いたところで外を見た。
太陽はすでに沈んでおり、満点の星空と少し欠けた月が夜空を彩っている。
寝床の一つである大きな木は空洞となっている部分があり、丁度子供が数人寝転がってもまだまだ余裕があるくらい広い。
穴から外に出ると、風が額の汗を冷やしてくれて少しだけ心地良かった。
妖怪である私は本来なら今から活動する時間帯なのだが、最近は昼間に活動して夜になると眠るという、いかにも妖怪らしくない生活習慣となっている。
大分落ち着きを取り戻すと同時に、先ほどまで見ていた夢の内容を思い出してしまった。
ル「・・・・・!!」
思い出した瞬間、頬を涙が伝う。
どうしようもなく悲しくて、胸が締め付けられるように切なくて・・・
ぼろぼろと止め処なく溢れてくる涙を必死に拭うが、涙は止まるどころかさらに勢いを増したかのような錯覚さえ覚える。
ル「っ!!」
だから・・・私は飛んだ。
この悲しみを取り除く為に、優しくて暖かいあの人の元へ・・・
side~彩人~
いつもと同じように一日が始まるかと思いきや、今日の朝はいろんな意味でいつもと違っていた。
ル「・・・・・・・」
彩「えぇと・・・ルーミア?」
霊「・・・・・・(じとー)」
朝起きると、何故かルーミアが布団の中に潜り込んでいた。
夜寝た時は居なかったはずなのに、朝起きると腰にしがみついていた。
それは、まあいい。 咲姫や舞花で慣れたし、ルーミアが泊まる日は必ずそうなっていたからだ。
しかし、今日は様子がおかしかった。
いつもなら起きて顔を洗った後に居間で朝食が出来るのを大人しく待っているのだが、どういうわけか今日は俺の服を掴んだままどこまでもついて来るのだ。
それでも朝食はしっかりと食べる辺りは、なんというかかんというか。
流石におかしいと思い、理由を聞いても「なんでもない」の一点張りだし、稽古の時も離れようとしなかったので今日の修行は中止にしたくらいだ。
彩「なあルーミア、本当にどうしたんだ?」
ル「・・・・・・・」
縁側に腰掛けてルーミアは膝の上に座っている。
朝から何度目かの問い掛けに対して、ルーミアは決まって俺の胸に顔を埋めて背中に手をまわし、ギューッと抱きついてくるだけだった。
霊夢は妖怪退治の依頼に行ったし、咲姫と舞花は空気を読んでか席を外している。
今ここに居るのは、ルーミアと俺だけだった。
ル「・・・・・・の」
彩「えっ?」
唐突にルーミアがしゃべったのだが、小さすぎてよく聞こえなかった。
ル「怖い・・・・・・夢を見たの」
胸に顔を埋めた状態のまま、少しずつルーミアが話しだした。
ル「最初は、真っ暗な空間の中に私が居るだけだった。 その中で私は眠っていたの。 そのときは不思議と落ち着けるような感じだったんだけど、そこに一筋の光が差し込んだと思ったら、周りが明るくなって目の前に彩人が居たの」
俺は黙ってルーミアの話しに耳を傾けていた。
ル「そこで私は、前に紅魔館で聞いた彩人の能力のことを思い出したの。 きっとこれがそうなんだって思って、それで近づこうとしたら彩人は手を振って私が居る方とは反対側に歩きだして・・・」
俺の服を掴む手に力が篭る。
ル「私は必死で追いかけたけど、少しも近づく事が出来なくて・・・ 彩人がどんどん離れて行くたびになんだかすごく不安になって、大声で叫んだけど全然振り向いてもらえなくて・・・」
声には嗚咽が混じり、小さな体は小刻みに震えだした。
ル「このままじゃ彩人が居なくなっちゃうって、何故だか分からないけど急にそんな気がして来て、がむしゃらに追いかけたけど彩人が見えなくなったと同時にまた目の前が真っ暗になった。 でも最初のように落ち着ける感じは全然しなくて、逆に怖いって思ったの。 まるで、今までのことが全部無かったことになるような、胸の奥が凍えるように寒くなって、そして、そこで目が覚めた」
ルーミアが顔を上げる。
涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔、目の辺りは真っ赤に腫れ上がっている辺り昨日からのものだろう。
ル「夢だって分かった時、すごくホッとした。 でも、それが本当のことだったらって言う考えが頭に浮かんで来て・・・、だから彩人の顔が見たかったの! 見て、彩人に抱きついてちゃんとここに居る事を確かめたかったの!」
ルーミアは呟く。 自らの願いを・・・、この悲しみの根本である原因を消し去る
ル「お願いだからぁ、勝手に居なくならないでぇ・・・ひっく、彩人が居ないと寂しいよぅ~」
そしてルーミアは泣いた。 まるで慟哭のように、声をあげてわんわんと泣き出した。
彩「ルーミア・・・」
俺はそんなルーミアの背中をぽんぽんと叩いて顔を上げさせ、その顔を見ながら手を顔の前まで持っていき、
彩「ていっ!」
ピコンッ!
ル「あうっ!」
少し強めにでこピンを喰らわせた。
ル「?、?、?」
ルーミアは額を押さえながらキョトンとした顔で俺の目を見る。
驚きのせいで涙も止まっていた。
そんなルーミアをちょっと可愛いと思ってしまったが、それは置いといてルーミアの頬をつまんでむにむにと弄る。
むにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむにむに・・・・・・・・
無言でルーミアの頬をむにる、むにる、むにる。
ル「彩人~、なにすんの~?」
ルーミアのほっぺはかなり柔らかく、両手で弄っているにも関わらず言葉がはっきりと発音できているのは正直すごいと思う。
もう涙は出ておらず控えめに抵抗するが、本気で嫌がりだしたので手を離し、ルーミアの目を真っ直ぐ見つめる。
彩「あのなぁルーミア、どうして俺がルーミアを置いていくんだ? というかどこへ行くつもりなんだよ、その夢の中の俺は?」
まったく、失礼にも程がある。 俺は楽しい事は皆でとことん楽しむって決めているんだから、ルーミアだけ除け者にするなんてありえるはずが無い。
彩「それに、俺は幻想郷に骨を埋めるって決めたんだ。 今更外の世界に帰りたいなんて思わないしな」
ル「でも!」
彩「それに、だ!」
ルーミアが何か言いそうになるのを遮り、言葉を告げる。
彩「ここには、咲姫に舞花、霊夢と魔理沙、紫にフランにチルノや人里の皆、他にも沢山の人や妖怪や神様、そして何より・・・」
そこで言葉を切って、ルーミアを抱き寄せる。
彩「ルーミアが居る。 外の世界でも別の世界でもない、この場所にルーミアが居る。 俺をこんなにも思ってくれてる子が居るのに黙って居なくなるなんて事はしないよ」
何時の日かと同じように迷子にでもなったかのような表情を浮かべているルーミアの頭を優しく撫でながら、
彩「だからほら、何も心配する事なんてないよ。 それでもまた不安になったり、怖い夢を見たときは、」
ルーミアの前髪を掻き揚げ、額に軽く触れるだけのキスをする。
彩「俺の所においで。 ルーミアの気が済むまで、ずっと側に居てあげるから」
そう言って、わしゃわしゃと頭を撫でてやる。
下を向いて俯いているため表情は見えないが、耳が真っ赤に染まっている。
すると、また俺の胸に顔を埋めてきた。 しかし今度は、頭をグリグリと押し付けてきた。
雰囲気から、もう微塵も不安を抱えてはいないが何時まで経っても一向に離れる気配が無かった。
彩「ルーミア、そろそろ離れて欲しいんだけど・・・?」
ル「嫌」
そう言って顔を上げたルーミアの表情は、悪戯を思いついた子供のような小悪魔的な表情を浮かべていた。
ル「彩人言ったよね? 私の気が済むまで側に居てやるって、だから今日一日私は彩人から離れないのだ~」
そう言って笑うルーミアの顔は今までで一番可愛く見えた。
今回のルーミアはどうでしたか?
補足しておきますが主人公はロリコンではありません。
断じて違います、子供に好かれやすい体質ですが子供好きなだけです。
もう一度言います。 この主人こ(ry
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