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それは、神の奇跡か?

それでは、どぞー

side~彩人~


ぺら・・・・・・ぺら・・・・・・


しん、と静まり返った空間に紙をめくる音だけが響く。

薄暗い空間にいくつも並んでいる巨大な本棚。

その一つ一つには隙間無く本が並んでおり、その貯蔵量はざっと見ただけでも国家図書館並みにあるのではないだろうか?

俺は今、紅魔館の図書館に来ている。

理由は、魔法の修行の延長線でやってみたいことがあったからだ。

一つは、俺が持っているエレキギターに付加を付けたい。

こっちに来てから、一度として弾いていないが。

やはり、ギターだけではサウンドが薄っぺらいのでどうにかできないかと考えていると、魔法でどうにかできんじゃね?ってことでそれについて調べる為にここに来たのだ。

しかし、そこで問題が発生した。

パチュリーに頼んで、付加について書かれた魔道書を借りたのだが、


彩「うん、読めない」


日本語でも英語でもない、全く見たことが無い文字で書かれていた。

冒頭の一文は借り受けて、少しめくった時のもの。


パチェ「でしょうね、普通は読む以前に開いただけで発狂するのだけど」


彩「は!? それを知ってて教えなかったのか!?」


パチェ「だって、貴方なら大丈夫でしょ? それだけ魔力があるんだもの」


確かに、そこらの奴と比べてかなり持っているけどせめて一言欲しかった。


パチェ「それで、どうするつもりよ?」


こあ「パチュリー様も素直じゃないですね~、私が教えてあげるって言えばいいのに」


パチェ「アグニシャイン!!」


こあ「こぁ~~~!!」


向こうで、こあの悲鳴が聞こえた気がするがどうしたのだろう?

しかし、読めないとなれば教えを乞うしかないか・・・


彩「なあパチュリー、付加の魔法を教えてくれないか?」


パチェ「調べるまでもなく、最初からそうしなさい。 別にいいわよ」


彩「本当か! ありがとう!」


パチェ「その代わり、あとで一曲聞かせてもらうわよ」


彩「そのくらいお安い御用だ。 それで、どうすればいいんだ?」


パチェ「まずは、攻撃魔法と違って・・・」




魔法の知識とか作者は皆無なので割愛します。


少年受講中・・・

少女講習中・・・




パチェ「っとまぁ、こんなところね。 それじゃ、早速やってみなさい」


持ってきたギターを机の上に置き、意識を集中させる。

ギターの下から広がるように魔方陣っぽい物が現れ、ゆっくりと回転している。


パチェ「いい感じね、後は呪文を詠唱するんだけど貴方の魔力なら注ぎ込むだけで後は魔方陣の方が勝手にやってくれるわよ」


言われたとおり魔力を注ぎ込むと魔法陣が輝きを増し、同調するようにギターも輝きだした。

さらに魔力を注ぎ込む。

すると魔方陣はパリンッと音を立てて消え、ギターも輝きが無くなった。


パチェ「上出来ね、これで貴方の望む付加が付いたはずよ、って大丈夫?」


心配そうに見下ろすパチュリーの方を何とか見て、


彩「大丈夫じゃねぇよ、魔力ほとんど持ってかれた」


あの魔方陣に注いだ魔力は、全体の8割5分。

感覚としては、いきなり血液を大量に抜かれた感じだ。


パチェ「だらしないわね、そこのソファ使っていいから少し休みなさい」


彩「パチュリー、こうなる事知ってたろ?」


パチェ「さぁ、何の事かしらね?」


このやろう、確信犯か。


パチェ「ところで、どんな付加を付けたのかしら?」


彩「ギター以外の音を出せるようにするのと、同時に複数の音を出せるようにしたんだよ」


これはイメージが大事だが、まあなんとかなるだろう。

練習あるのみだ。

ああ、ダメだ。 意識が遠く・・・・・・・・・

そこで、意識が途絶えた















あれからどれくらい経っただろう?

何時間も寝ていた感じもするし、ものの数十分しか寝ていない感じもする。


彩「う~ん」


目を開けるとそこには・・・


?「・・・・・・・・」


彩「・・・・・・・・」


?「シャンハーイ」


小さな女の子が居た。

いや、よく見ると人形だった。


?「どうしたの、上海? ってあら、目が覚めたのね」


声がした方を振り返ると、これまた等身大の人形が・・・いや、人形のような少女が居た。

とりあえず起き上がり、鈍った体を解すと俺の上に乗っていた人形が落ちた。

それを受け止めて、先ほどの少女の下へ歩いていく。


彩「初めまして、俺は彩人。 狂咲彩人だ。 君の名前は?」


手に持っていた人形が浮き上がり、少女の隣に移動したのと同時に少女が口を開いた。


ア「私はアリス・マーガトロイド。 こっちは上海」


上海「シャンハーイ」


まるで、生きているかのような動きで返事をする上海を見ていると、


ア「ふふっ、そんなに珍しいかしら?」


彩「少なくとも、俺の居たところでは無かったな」


ア「そりゃあ、外の世界に魔法は存在しないしね。 噂の外来人って、貴方のことでしょ?」


噂のって、碌な噂じゃ無さそうだな。


ア「曰く、吸血鬼姉妹を仲直りさせたとか、曰く、フラワーマスターと引き分けたとか、ね」


彩「やっぱり、そんなところか」


文には、きつくお灸を据えたから変な記事はもう無いと思うが・・・


パチェ「あら、目が覚めたのね」


レミィ「まだ寝ていたら、血をもらおうかと思ったのに残念ね」


奥から、パチュリーとレミリアが歩いてきた。

というかレミリア、なに恐いこと言ってんだ?


レミィ「安心しなさい、眷属にするだけだから」


彩「余計怖いわ!!」


何さらっと、人を辞めさせようとしてんだよ。

しかも、さらっと心読んでるし。


パチェ「もう体は大丈夫かしら?」


彩「ん、大分良い感じ」


腕を回して調子を確かめる。

大分魔力も回復したし、いい感じだな。


レミィ「それなら、アフタヌーンティーは彩人に一曲演奏してもらうわよ」


ア「私も同席して構わないかしら?」


レミィ「別に構わないわよ。 咲夜、お茶の準備と皆を集めなさい」


咲夜「畏まりました、お嬢様」


なにやら、大変な事になってきたな。












場所は変わって、三階の大広間。

大きなテーブルが用意されており、レミリア、フラン、咲夜、パチュリー、こあ、咲姫、舞花、アリス、俺が座って紅茶を飲んでいる。


フラン「彩人って楽器弾けるの?」


彩「一応ね」


フラン「すごーい!ねぇねぇ、歌は歌えるの?」


彩人「それなりには歌えるよ」


フランは、俺の膝の上に座って上機嫌だ。


レミィ「フラン、そろそろ避けなさい。 彩人、そろそろいいかしら?」


フランは名残惜しげにしていたが優しく降ろし、ギターを手にとって音の調整を始めた。

えっ? 絶対音感ですが何か?

何時の間にか、妖精メイドたちがわらわらと集まって来ていた。


彩「さて、それじゃあちょっと切ないけど俺の好きな曲を一つ」


弾き始めはゆっくりと、声も少しだけ力を込めて・・・ピアノの音が響く。


彩「~~~~~♪」


館中に彩人の歌声が響く。

思い浮かべるのは、今は遠い場所に居る彼女の事。

この歌声が彼女に届けばいいな、と寂しさを紛らわすように、逢いたい気持ちを歌に乗せて全身全霊で歌い続ける。

ギターを弾く手にも力が入る。

最後のサビに差し掛かった。


彩「~~~~~~~~♪」


今までで一際力強く、感情を目一杯詰め込んで最後の一小節を歌い上げた。

音の余韻が消えるまで、誰一人として喋る者は居ない。


彩「どうだった?」


レミィ「とても綺麗だったわ、案外良い声してるじゃない」


パチェ「そうね、同感だわ」


こあ「切なかったですけど、とても良い曲でした」


咲夜「月並みだけど良い歌だったわ」


ア「なかなかやるじゃない」


上海「シャンハーイ」


皆の評価は上々だ。


彩「フランはどう感じた?」


すると、フランがいきなり抱きついてきた。


フ「彩人の馬鹿!!」


そして怒鳴られた。


フ「寂しいなら寂しいって言えばいいのに! 私はその人の代わりになれないけど彩人が寂しい時に側に居てあげることは出来るんだよ?」


俺を見上げるフランの瞳には涙が溜まっていて、今にも零れ落ちそうだ。


咲姫「彩人様が歌っている時、とても寂しそうでした」


舞花「フランはそれにいち早く気付いたんだよ」


どうやら、無意識のうちに寂しいって感情が漏れていたみたいだ。

参ったな、心の奥底に閉まったはずなんだけどな。

どうやら、人一倍寂しいって気持ちに敏感なフランやずっと一緒に居る咲姫や舞花には分かったみたいだ。

フランの頭を優しく撫でる。


フ「彩人がそんな顔をしてるの、見たくないよ」


彩「うん、ごめんねフラン」


こんなに小さな少女に心配されているようじゃ、まだまだだな。

こんなことじゃあいつに笑われてしまう。

それに、俺は独りじゃない。

こんなに心配してくれるフランや咲姫に舞花、皆が居る。

時間は掛かるかもしれないけど、今よりもずっとずっと強くなろう。

そう心に決めた。



















side~外の世界のとある人物~



あの人が居なくなってから、どれくらい経っただろうか?

確か、約三ヶ月くらいが過ぎただろうか?

自分の感覚では、すでに3年は経過しているのではないかと思うほど時間の流れが緩やかだ。

相変わらず私の心にはぽっかりと穴が開いたようで、振る舞いは完璧なはずだがやはり分かる人にはわかってしまうみたいだ。

正直に言って寂しい。

可能ならば今すぐ探しに行きたい。

だけど、それは許されない。

私にはやるべき事がある。

それを放棄してまで探しに行って、仮に見つけたとしても堂々と顔を向ける事など出来ないだろう。

今はとにかく、やるべきことをやろう。


?「境内のお掃除でもしましょうか」


ふと、ある曲が頭を流れた。

あの人が好きだった曲の一つだ。

なんだか、私を慰めて励ましてくれているような気がする。

なんで、このタイミングで?

いや、これは偶然じゃない。

これはそう、奇跡の力だ。


?「ふふっ、随分と粋なことをするじゃないですか」


もう少しだけ、頑張れる。

あの人も頑張っているんだ。

私もがんばらなくちゃ。

感想・誤字指摘・要望ありましたらどうぞ。


3/15に修正しました。

ギター付加についての説明が抜けていましたので。

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