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八雲一家とほのぼの?でちょっぴりシリアス?な話

タイトルは、ほのぼのを書こうとしたら何時の間にか曖昧な感じになっていたのでこんな感じにしました。


それでは、どぞー

side~彩人~



彩「ごめんくださ~い」


玄関の前で叫んでから十数秒。

中からぱたぱたと足音が聞こえてきた。


?「はいは~い、どちら様? って彩人様に咲姫、舞花! いらっしゃい、待ってたよ」


出迎えてくれたのは猫の耳と尻尾を二本生やした少女、橙だ。

頭の耳はピコピコせしわなく動き、尻尾はゆっくりと左右に揺れている。


彩「こんにちは、橙。 遊びに来たよ」


前から遊びに行く約束をしていたのだが、修行やら異変の解決やらで結局先延ばしになっていた。


?「橙、誰が来たんだ?」


奥から狐の尻尾を9本生やした少女が出てきた。


彩「やぁ、藍。 昨日ぶりかな?」


藍「彩人達か、いらっしゃい、待ってたよ」


そう言って、嬉しそうに笑うのは紫の式神の藍だ。ちなみに橙は、藍の式だ

昨日人里で買い物していると偶然藍と会い、そのまま今日遊びに行くと言う約束をしていたのだ。


藍「立ち話もなんだから上がってくれ。 橙、私はお茶を準備するから居間まで案内してやってくれ」


そう言って、台所へ引っ込んだ。


橙「はい、分かりました! こっちだよ!」


俺の手をぐいぐいと引いて、中へと入っていく橙。


彩「っとと、そんなに焦んなくてもいいよ、橙」


咲姫「お邪魔します」


舞花「こんにちは~」


紫の家は古き良き日本家屋でそれなりに大きい。

これなら大宴会も開けるかもしれない。

通された居間で待っていると、藍がお茶を運んできた。


藍「せっかく来たんだ、ゆっくりしていってくれ」


渡されたお茶を飲んで一息吐く。

霊夢のお茶もおいしかったが藍の入れてくれたお茶もおいしい。

例えるなら、霊夢はなんだか優しい感じがして、藍は和むような感じがした。


彩「そういえば、紫は?」


藍「紫様は結界の見回りに行ってらっしゃる。 昼頃には戻られるはずだ」


てっきり居るものだと思っていが、なるほど結界の見回りか。


彩「それって、頻繁にやっているものなのか?」


藍「ああ、少しの綻びも放って置くと重大な決壊になりかねないからな。 定期的に見回りをされているよ」


紫もこの世界を護る為に頑張っているんだな・・・


彩「そうなのか・・・・・よし!」


徐に立ち上がり、バッグから包丁を取り出す。


彩「皆でさ、今から昼食を作ろうぜ。 うんとおいしいのをさ」


時間的には10時を少し過ぎた辺り、今から下ごしらえしていけばきっと良い物が作れる。


藍「どうしたんだ、急に? 昼食の時間にはまだ早いぞ?」


舞花「お腹空いたんですか?」


彩「そうじゃなくて、いつも頑張っている紫を皆で労ってやろうってことだよ」


こうして俺がここに居られるのも、皆と出会えたのも、あの日紫が俺を見つけてくれたから。

全ては紫のお陰だ。


彩「だからさ、在り来たりかも知れないけど皆で美味しい物を作って一言、いつもありがとうってお礼がしたくなったんだ」


一番最初に反応したのは橙だった。


橙「藍様、私も紫様のために美味しい物を作りたいです!」


その次に、咲姫と舞花。


咲姫「確かに、紫さんが居なかったらわたし達はあのまま道具屋で眠っていただけかも知れないですね」


舞花「そして、彩人様にも会えたしね」


やっぱりこの二人は俺が基準なんだな、嬉しいけど。


藍「私が賛成することはあっても、反対する理由は無いよ」


当たり前だが、全員頷いてくれた。


彩「それじゃあ早速始めよう」


そう言って、全員で厨房へと向かった。












side~紫~



紫「ここで、最後ね」


私は幻想郷を囲んでいる結界に綻びが無いかをチェックしていた。

ある程度は、自動で修復するように境界を弄っているので本当は定期的に見回る必要はあまり無いのだが・・・


紫「ほんの少しでも、危険因子は取り除いておくに越したことは無いわね」


私はこの幻想郷の管理者。

そして、最も幻想郷(ここ)を愛している。

様々な困難、苦難を乗り越えてようやく実現した私の夢。

何度も何度も挫折を繰り返し、諦めかけた事もあった。

他の妖怪に笑われ、馬鹿にされながらも夢に向かって一歩一歩進んでようやく掴んだのだ。

絶対に壊されたくない。

だからこうして、念入りに綻びが無いかをチェックするのだ。


紫「ふぅ、どこにも異常は無かったわね」


流石に幻想郷全体を囲っている結界を全てチェックするのは疲れる。

朝早くから行っても、どうしても昼ごろまで掛かってしまう。


紫「そういえば、今日は彩人達が遊びに来る日だったわね」


私が外から連れてきた少年。

今は霊夢の所で修行させている。

最初は、彼の内包している力に興味があって観察していただけだった。

しかし、その少年を観察している内に不思議と惹かれる部分があり幻想郷に招待した。

彼を落とした場所は迷い家。

普通の人間ならば、二度と出る事が出来ない場所であり、私の家もそこにある。

だが彼はたった二日で博麗神社までたどり着いた。

しかも、初めての弾幕ごっこで生き残り、人喰いの妖怪と仲良くなって一緒に神社にやってきたのだ。

これには、心底驚いた。

今までの外来人は、妖怪に食べられるだけだったのに対し、彼は妖怪と仲良くなったのだ。

同時に、確信めいた予感がした。

彼は幻想郷にとって、重要な人物になると。

実際にその予感は当たっていた。

この前の紅霧異変、吸血鬼の小娘が霧を出して幻想郷を支配しようとした。

霊夢がそれを阻止して、異変解決となるはずだった。

それをあの少年は、吸血鬼姉妹の仲直りまでやってのけたのだ。

異変の解決だけでなく、異変を起こした理由を完全に摘み取ってしまった。

ほんの少し前まで敵対していたというのに、終わってみればすぐに彼の周りは楽しげな雰囲気に包まれていた。

それは彼の持っている気質のせいか? はたまた何かの能力か?

それは分からないが、予感は確信へと変わった。

何より、私自身がすでに彼の事を気に入っている。

藍も橙も彼の事は気に入っているようで、よく話題にあがる。


紫「考えたら会いたくなっちゃったわね」


そろそろお昼時、おそらく彼の性格上藍と昼食を作っているはずだ。


紫「彩人の料理は絶品だから楽しみね」


私は家へと帰るため、スキマを開いて中へと入っていった。











side~彩人~



彩「よし、だいたいこんなもんだろう」


粗方料理を終わらせて、後は紫が帰って来るのを待つだけだ。


藍「む? どうやら帰って来たみたいだな」


藍が言い終わると同時に、空間に亀裂が入り中から紫が出てきた。


紫「はぁ~い、お久しぶりね彩人」


彩「紫、ご無沙汰」


橙「紫様! 早くお昼ごはん食べましょうよ!」


橙が待ちきれないとでも言うかのように紫を急かす。

早く自分が作ったモノを食べてもらいたいのだろう。


紫「そうね、私もお腹が空いたわ。 藍、用意して頂戴」


藍「分かりました」


居間に移動すると、すでに料理が並べられており各々自分の席に座った。

いただきますと声を合わせて合掌する。


橙「紫様、その焼き魚は私が作ったんです! 食べてみてください」


ところどころ焦げている部分はあるものの、中までしっかりと火が通りほぐすとふっくらとして脂の乗った身が顔を出す。

シンプルに味付けは塩のみ、素材の味を存分に生かした一品だ。


紫「!! とてもおいしいわ、すごいわね橙」


橙「えへへ、紫様いつもありがとうございます」


紫に褒められて嬉しそうに笑う橙。

一方、紫は何に対してお礼を言われたのか分かっていないようだった。


藍「この料理は私たち皆で紫様のために、いつも頑張っている紫様にありがとうの気持ちを込めて作ったんですよ」


彩「そして、紫が俺を見つけてくれたお陰で今ここに居られる」


咲姫「私達は、紫さんが彩人様を連れて来てくれたから」


舞花「彩人様と出会う事が出来た」


藍「紫様・・・」


彩・咲姫・舞花・藍・橙「「「「「いつもありがとう(な)」(ございます)」」」」


皆で声をそろえて、紫への感謝を伝えた。


紫「な、何を言っているのよ? そ、そん・・・・な・・・・こ・・・と・・・・・・」


顔が歪みそうになるのを必死に我慢しているのが分かる。

言葉がだんだん途切れ途切れになって遂には俯いてしまった。

声を押し殺してはいるが、肩が震えているのを見る限り泣いているのだろう。

全員の視線がこちらを向いている。

この場で男は俺一人、皆が何を言わんとしているかは容易に想像がつく。

紫の隣に行き、震えている肩を包むようにして抱きしめた。

紫は縋るように俺の服を掴み、そのまま体重を預けてきた。

この時、紫の体は小さく少し力を入れれば壊れてしまうのではないか?と感じてしまうほどだった。

この幻想郷を管理するほどの大妖怪が、見た目相応の少女にしか見えないから不思議だ。

俺は、紫が泣き止むまで抱きしめた腕を放すことはしなかった。


ありがとうって伝えられる・・・基本なだけにとても難しいことですよね。


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