因果応報
ヤバイ、最近スランプで全然話が浮かばない!!
それでは、どぞー
side~彩人~
宴会の翌日、一人では大変だろうと朝食を食べた後、咲夜と宴会の後片付けをしている時だった。
美鈴「あ、彩人さ~ん」
咲夜「美鈴貴女、門の仕事はどうしたの?」
ため息を吐いて頭を抱える咲夜。
いつもこうなのかな?
美鈴がなにやら慌てた様子で紙束を持ってこちらに近寄ってきた。
彩「どうしたの、そんなに慌てて?」
美鈴「ここ!ここを見てください」
美鈴が紙束の一面を指差す。
それを受けとると、どうやら新聞のようだった。
そういえば、文が去り際に新聞が今日配られるとか何とか言ってたっけ?
とりあえず、美鈴が指差した記事を見てみることにする。
咲夜も気になるのか、横から覗き込んできた。
そこには信じられない事が書かれていた。
―噂の外来人、幼女趣向か!?―
タイトルだけで頭痛がしてくる。
記事の内容なんか見るまでも無い。
添えられた写真はルーミア、フラン、橙に始まりチルノや大ちゃん、妖精メイド多数と俺が写っている。
しかも、昨日聞かれたインタビューは少しも記事に出てきていない。
咲夜「あの鴉天狗の仕業ね。 多分、もう幻想郷中にばら撒かれているんじゃないかしら?」
彩「・・・・・・・」
どうやら、あの鴉天狗が作る新聞は誇張と捏造がてんこ盛りの新聞らしく盗撮なんかは当たり前に行われているらしい。
こんなのが幻想郷中にばら撒かれているなんてぞっとしない。
それにしても、ここまで頭にきたのは何時振りかなぁ?
彩「咲夜、ゴメン。 ちょっと、妖怪の山に行って来るね」
あの鴉、見つけたらどうしてくれようか?
顔は笑っているのに威圧感が凄まじい。
彩人の瞳は黒色から金色に変わっており、まるで猫の目みたいになっている。
咲夜「え、えぇ。 こっちは私一人でも大丈夫だから心配しないで。 それと、貴女はさっさと門番の仕事に戻りなさい!」
酷く困惑している様子で返事をしながら、美鈴にナイフを投げつける。
多分、俺の目を見て戸惑っているんだろうけどそれは後で説明しよう。
レミィ「待ちなさい、話は聞かせてもらったわ。 私とフランもついていくわよ」
フラン「お姉さまから外に出ても良いって許可が下りたんだよ~」
レミリアとフランがそれぞれ日傘を手に庭に出てきた。
フランは嬉しそうにニコニコしている。
次いで咲姫と舞花も出てくる。
彩「咲姫、舞花妖怪の山に出かけるから準備しといて」
咲姫「分かりました」
舞花「は~い」
彩「さてレミリア、理由は?」
レミリアの方を向き、理由を尋ねる。
レミィ「決まってるわ。友人であり恩人でもある貴方が侮辱されたんだもの、貴方が良くても私が良くないのよ」
要するに、癪に障ったわけだ。
フラン「ねぇねぇ彩人、何で瞳が金色になっているの?」
フランの問いかけに全員がこちらを向く。
彩「生まれたときからの体質なんだ。感情が昂ぶったときだけ、こんな風に目が金色になるんだよ」
フラン「ふ~ん、とっても綺麗だね。 ねぇ、もっとよく見せて」
そう言って、フランは両手で彩人の頭を押さえて瞳を覗き込む。
フランの紅い瞳はまるでルビーのようで、目が逸らせない。
端から見ると見つめ合っているようにしか見えず、もう少し近づけば唇が触れ合うくらいの距離だ。
そんな二人の間に咲夜が割って入る。
咲夜「フラン様、淑女は無闇にそのような行為をしてはいけません」
フランは文句を垂れていたが正直助かった。
フランの瞳を見ていたら、なんだか言い知れぬ感覚に襲われた。
吸い込まれそうな、それに近い感覚だ。
レミィ「危なかったわね、もう少しでフランに魅了されるところだったわよ?」
彩「魅了?」
レミィ「そ、吸血鬼は相手を魅了して意のままに操る事ができるの。もっとも、フランは意識していないでしょうけどね」
愉快そうにレミリアは笑うが、こちらとしては冷や汗ものである。
彩「さて、そろそろ行こうか」
そう言って刀になった咲姫と舞花を腰に差し、空へと飛び立つ。
後を追うようにレミリアとフランも飛んだ。
目指すは妖怪の山。
文とは一度じっくりオハナシしないとね。
顔は笑っているのに目が笑っておらず、後日幻想郷縁起には怒らせてはいけない、等と加筆される事となった。
妖怪の山
人間にとって幻想郷で最も危険な場所の一つである。
その山を治めるのは天狗という妖怪の中では種族的に強い方に位置し、現代でもそれなりに知られている妖怪達だ。
天狗は妖怪の中でも珍しく、天魔という最も力の強い天狗が頂点に立ち、社会という組織で上下関係がはっきりしている。
ゆえにプライドが高く、自分達より強い者には媚び諂い、格下は虐げる傾向が多い。
そしてもちろん、人間は天狗から見て格下の最たる者という認識が大多数を占めている。
そんな妖怪の山を人間の少年が登っていく。
無造作に見えなくも無いが不思議と整っている黒い髪にかなり整った顔立ち、服装はジーパンにカッターシャツと外の服装ながら腰には二振りの刀を差しており、肩には小人ほどの少女が二人座っている。
これだけなら普通の少年に見えなくも無いが、瞳が違っていた。
瞳孔は縦に細くなり、日本人なら濃い茶色をしている部分は金色になっている。
それはさながら猫の瞳に似ていた。
そんな少年の両隣りには同じ日傘を差した少女が二人。
一人は流水を思わせる水色の髪にピンク色の服を着てナイトキャップのような帽子を被り、背中には背丈に見合わない大きな羽が生えている。
もう一人は金色の髪をショートカットにし、赤を基調とした服に先ほどの少女と同じ帽子を被っている。
背中には、七色の飾りがついた羽のようなものが生えていた。
紅魔館の主、レミリア・スカーレットとその妹、フランドール・スカーレットである。
そして、少年の名前は狂咲彩人。
最近幻想郷に移り住んだ外来人であり、肩に乗っている少女達の名前は春疾咲姫と春風舞花で彩人の差している刀の付喪神である。
5人は隠れもせずに山を飛んで登っていく。
すると、5分もしない間に背中に黒い翼を持った天狗に呼び止められた。
?「止まれ侵入者! ここがどこd」
しかし、その言葉が最後まで放たれる事は無く、天狗は弾幕の波に飲まれていた。
彩「あんなのをいちいち相手にしていたんじゃ日が暮れる。 最短距離を最高速で突き進むぞ」
レミィ「えぇ、いいわよ」
フラン「分かった!」
5人が目指しているのは、天狗の里。
そこに居るある人物に用があり、宣戦布告とも取れる行動を取っているのだ。
次から次へと下っ端天狗どもが沸いてくるが、幻想郷でもトップクラスの戦闘力を誇る吸血鬼姉妹と夢の中とはいえフランと一緒に修行してきた彩人にとって、数の差など在って無い様なものだ。
フラン「ちゃんと避けないと痛いよ? せーの、それーーー!」
そのほとんどをフランの余りあるパワーで撃ち落しつつ進んでいくと、集落が見えてきた。
おそらく、天狗の里だろう。
ここまで来ると、流石に力の強い者たちが居るが迂闊には攻撃して来なかった。
そのため、すんなりと天狗の里に降り立つ事が出来た。
周囲には大小様々な天狗がこちらを睨みつけてくる。
そして、最奥から他とは明らかに違う天狗がゆっくりと歩いてきた。
ざっと見ただけでも二メートルを超すほどの体格、その体に比例するかのように妖力も桁違いに多い。
年老いた外見に似合わず眼光は鋭く、視線だけで相手を殺せるのではないかと思うほどだ。
その瞳が自分を捉え、口を開いた。
?「人間、我ら天狗の地に何のようだ?」
低く唸りを上げるような声が響く。
人間としての本能が告げている。
逃げろ、敵う相手じゃない、と。
しかし、不思議なことにそれが体には現れない。
震えや喉の渇き、浅い呼吸などといった症状は見られない。
彩「射命丸文に用があるんだ」
レミィ「そうよ、さっさと出しなさい」
フラン「だせー♪」
彩人達の返答に天魔は苦い顔をし、
天魔「またあやつか、この前妖怪の賢者に散々な目に合わされたばかりだというのに・・・」
そう言って、頭を抱えた。
どうやら誇張と捏造を目いっぱい注ぎ込んだ新聞を作っては、あまりに酷い内容のときに当事者から制裁を受けているらしい。
で、その後処理が天魔の仕事になっていると、こんなところかな?
天魔「あやつならここにはおらん、見つけ次第好きにするがいい」
凪から聞いたとおり、少しは融通が利く様だな。
彩「分かった。 じゃ、俺達は行くから」
そう言って飛び立とうとすると天魔に呼び止められた。
天魔「ちょっと待て、人間、名は?」
彩「?・・・狂咲彩人」
天魔「ほう、お主がそうか。 凪が面白い人間に会った、と嬉しそうに話していたが・・・なるほどな」
こちらを値踏みするかのようにジロジロと視線を這わせる。
天魔「彩人とやら、お主にこの山の入山を許可しよう」
彩「話が見えないんだけど?」
天魔「凪に頼まれたのだ。お主の入山を許可してやって欲しいとな」
なるほどね、これで会いに行きやすくなるな。
彩「そうか、凪によろしく言っておいてくれ」
天魔「うむ、今度は遊びに来るが良い」
そう言葉を交わして天狗の里を後にした。
彩「み~つけた~♪」
文「あやややや!何で追いかけてくるんですか~!?」
レミィ「貴女が逃げるからよ」
フラン「あはははは!待て待て~!」
人里周辺の上空を飛んでいた文を発見するやいなや、レミリアとフランは弾幕を放ちながら追いかけ始めた。
幻想郷最速の異名を持つ文でも吸血鬼二人掛かりから逃げ切るのは難しい。
さらにフラワーマスターと引き分けたこともある人間が加わるのだから絶望的だ。
最も、彩人が能力を使えばすぐにでも捕まえられるのだが、フランは初めて外に出られたのだから思う存分遊ばせたいのでしばらくはこのままにしておく。
二時間後・・・流石に疲れてきたのか、最初ほど動きにキレが無くスピードも落ちてきていた。
フラン「つかまえた~♪」
そして、遂にフランに首根っこを捕まれてしまった。
文の顔には疲労の色が濃い、レミリアでさえ額に汗が浮かんでいる。
それに対し、フランは多少息が乱れている程度でまだまだ余裕そうだ。
彩「さて文、覚悟はいいかな?」
とってもいい笑顔を文に向ける。
文「あ、あやや~。な、なんのことでしょうか~?」
露骨にとぼけようとするがそうは問屋が卸さない。
彩「まあいいよ、天魔から好きにしていいって許可は出ているしとりあえず幽香のところにでも行くか」
文「え!? いいいい嫌ですよ、あんなところにいったら何されるか分かりません!」
本気で嫌なのか、何とか逃げようとするが残念ながら力ではフランに遠く及ばないので抜け出すことは不可能だ。
あ、若干涙目になっている。
レミィ「貴方、結構顔が広いわね。 まだ一月ちょっとしか経っていないんでしょう?」
確かに、一月で結構知り合いや友達も増えた。
フラン「ねぇねぇ、その幽香って人は友達なの?」
彩「ああ、俺の友達だよ」
フラン「私も友達になれるかな?」
フランの目は期待と不安が半分ずつといったところで、背中の羽は落ち着き無くパタパタと動いている。
彩「きっと友達になれると思うよ」
そう言って頭を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めた。
彩「よし、それじゃ太陽の畑に行くか」
そう言って、太陽の畑がある方向に飛ぶ。
無論、文は強制連行する。
この日はフランに新たな友達ができ、鴉天狗の少女の悲鳴が幻想郷中に響き渡った。
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