宴会~準備編?~
宴会の準備編って言っていたけどどうしてこうなった!?
それでは、どぞー
side~彩人~
俺はキッチンで宴会の仕込みをしている。
宴会自体は夜から始まるので、その間に下ごしらえや時間が掛かるものを粗方終わらせておく。
咲姫も舞花も一人で作れるまでに上達し、今では指示を出さなくても頼んだ料理を作れるくらいまでになった。
すると、あの時のメイドさん―咲夜―がキッチンに入ってきた。
咲夜「私も何か手伝おうと思ったんだけど、これなら必要なさそうね」
彩「ああ、もう粗方終わったからね。 もしかして、使っちゃいけない食材でもあった?」
咲夜「いいえ、それよりも少し話がしたいんだけど構わないかしら?」
彩「別に構わないけど?」
料理の仕込みも終わり、時計の長針は短針と重なる位置にまで来ていた。
目の前には4人分の紅茶が入ったカップ、言わずもがな咲夜が用意してくれたものだ。
カップを一つ取り、一口飲む。
紅茶の温度は少し熱いくらいで、口から鼻に掛けて紅茶の香りが行き渡る。
味はほんのりと甘く、それでいて紅茶の旨みが存分に味わうことが出来る。
彩「!・・・おいしいな」
俺も婆ちゃんから紅茶の入れ方を教わったが、咲夜の入れてくれた紅茶はどこか違う。
なんというか、とても気分が安らぐのだ。
咲夜「ふふ、ありがとう」
自分の入れた紅茶を褒められたのが嬉しいのか、微笑む咲夜。
自分も紅茶に口をつけ、喉を潤おす。
彩「それで、話ってなんだ?」
咲夜「いくつか聞きたい事があるのだけど、いいかしら?」
彩「俺に答えられる範囲でならね」
咲夜「それじゃあ、貴方はどうして妹様の気持ちが分かったの?」
妹様、フランの気持ちか・・・
彩「俺は、外の世界で自分よりも年下の子供達とよく遊ぶ事が多かったんだ。
そのときに、悩みを聞いていたりしてたからなんとなくフランの気持ちが分かったんだ」
実際、姉と喧嘩して泣きながら訪ねてきた子が居た。
今回のケースとは全然似ていないけど、根本は同じと思ったからなんとなくではあるけれどフランの気持ちが分かった。
彩「後は、小さい頃の俺と似ている部分があったからかな?」
同じ、家族の愛に飢えていた。
それを救ってくれたのが婆ちゃんだ。
いつかは、婆ちゃんのようになりたいと必死にその背中を追いかけていた。
今でもそうだ、まだまだ婆ちゃんには敵わない。
咲夜「妹様を・・・恐いとは思わなかったの?」
彩「いや、全然。 吸血鬼って部分を除けば普通の可愛らしい女の子にしか見えなかったな」
咲夜「妹様の狂気を見たでしょう?それでも、微塵も恐いって思わなかったの?」
何か、勘違いをしているみたいだな。
彩「咲夜は狂気をどういう風に解釈してる?」
咲夜「えっ?えっと、常軌を逸脱した精神状態ってところかしら?」
いきなりの問いかけに戸惑いながらも的確な回答を返してくる。
彩「そうだね、でもフランの場合はちょっと違うんだよ」
咲夜は疑問符を浮かべながら彩人の説明を待っている。
紅茶を一口飲んでから口を開く。
彩「フランの場合はね、寂しさからきてるんだよ」
実際にフランが狂気と呼ばれている表情をするとき、彩人にはとても寂しそうな表情に見えていた。
だから、その狂気を抑える方法をとる事が出来た。
彩「姉に対する愛が強いから、気付いて欲しくて狂ったように見えるけど、本当はただ自分を見て欲しいだけだったんじゃないかな?」
実際にフランの口から聞いた事は無い。でも多分、それで合っている。
だって、レミリアと仲直りした後のフランに狂気なんてものは微塵も感じられなかったから。
咲夜「妹様が貴方に懐いている理由が分かったわ。これじゃ、好かれて当然ね」
呆れたように見えるけど、どこか嬉しそうに笑う咲夜。
それに釣られて、彩人も笑う。
それからは、普通に雑談した。
外の話や紅魔館の日常など話せばキリが無いくらい話のネタには困らなかったが時間は、すでに時計の針が二周していた。
彩「そろそろ、休もうかな。 二人もすでに限界そうだし」
さっきからおとなしいと思っていたら、互いに寄りかかって寝ていた。
咲夜「それじゃ、部屋に案内するからついて来て」
彩「分かった。 咲姫、舞花、とりあえず刀の姿になって」
声を掛けると、二人は刀の姿になった。
それを腰に差して咲夜の後ろについていく。
案内された部屋に入る前に、
彩「おやすみ、咲夜」
咲夜「ええ、おやすみなさい彩人」
挨拶を交わし、部屋に備えつけられたベッドに倒れ込むようにして目を閉じた。
side~咲夜~
彼が寝室に入るのを確認してから、私も自室に戻った。
妹様が乱入されたときはどうなる事かと思ったけど、全て丸く収まってホッとしている。
今回の異変、私は正直乗り気ではなかった。
しかし、私は従者。 主の命令は絶対であり、私はそれに従うだけ。
お嬢様の行動は、全ては妹様のためだった。
お嬢様が妹様のためにどれだけ努力されて来たのかは全てではないが知っているし、私達も手を尽くしてきた。
しかし、どれも妹様には届かなかった。
それが、見ていてとても辛かった。
それを、あの少年があっという間に変えてくれた。
まだこちらに来て日が浅い外来人が、妹様のことを理解し、仲直りさせるまでやってのけたのだ。
だから、興味が湧いた。
いったいどんな人物なのか?
とても興味があって、彼が居るであろうキッチンへと向かった。
予想通りキッチンにいたが、料理の仕込がほとんど終わっていた。
かなり料理の腕がいいのだろう、今度料理について聞いてみるのもいいかもしれない。
彼は、こちらに気がつくと笑顔で話しかけてきた。
不思議な人だ、さっきまで殺伐としていたのにそれが無かったかのように友好的に話しかけてくる。
休憩がてら紅茶を入れて、話をしたいと言うとあっさり了承してくれた。
私が入れた紅茶を飲み、おいしいと言ってくれた。
それが嬉しくて、つい頬が緩みそうになるのを抑えて妹様の事について彼がどう思っているのかを聞いてみた。
すると、彼は私達とは違う見方で妹様を見ていた。
これには、正直驚いた。
私達は妹様の狂気を気が触れているからだと思っていたが、彼はそう見てはいなかった。
――フランの場合はね、寂しさからきてるんだよ――
このときの、彼の言葉は不思議と納得できる何かがあった。
だからだろう、妹様があんなに彼に懐いているのは・・・
その後は、普通に雑談をしていた。
外の世界の事を聞いたり、紅魔館の日常を話したりしているとあっという間に時間が過ぎていた。
ここまで時間の流れが速く感じたことは今までに無かった。
時を操る私にとって一日はとても長い。
しかし、彼と話している時間はとても短く感じた。
同時にとても楽しかった。
人と話すのがこんなにも楽しく感じることなんて今までに無かった。
ほんとに不思議な少年だ。
もっと、彼と話してみたい。
もっと彼の事が知りたい。
そう思わせるくらい彼との時間は楽しかった。
咲夜「次は何を話そうかしら?」
彼と話すための話題を考えながら、私は目を閉じた。
なんだか、咲夜さんとの会話になっちゃってました。
次こそは、宴会だーーー!!
感想・要望待ってます。