I love you
ここで多くは語りません。
それでは、どぞー。
side~霊夢~
あれから、戦いはさらに激しさを増した。
相手はただでさえ強い吸血鬼。
この吸血鬼一人なら勝てなくも無いが、魔理沙と戦っているメイドが厄介な能力を持っていた。
たった一瞬で無数のナイフが空間に配置され、それらが全て魔理沙に向かって飛んでいくのだ。
その度に魔理沙は力任せにナイフを吹き飛ばすが、その時どうしても隙が出来てしまう。
それをカバーする為に動くと、こちらにナイフが飛んできて避けたところに合わせる様に吸血鬼が攻撃を重ねてくる。
しかし、本気で潰しにかかるような攻撃ではなく牽制のような攻撃だ。
流石は主従関係ね、見事な連携だわ。
どうやら、あの吸血鬼は一対一をお望みのようね。
メイドはさしずめ、魔理沙のストッパー兼私のストッパーって所かしら?
魔理沙に遅れを取らない時点でかなり強いことは明白だ。
そしてこの連携プレー、二人で攻められちゃ厳しいものがあるわね。
レミィ「ククク、そろそろ観念したらどうだ博麗の巫女?」
レミリアが話しかけてきた。
その顔には余裕の表情が浮かんでいる。
レミィ「あの白黒は咲夜が抑えているし、お前はなにやら戦いに集中できていないように見える」
っ!!、気付かれていたか。
確かに少しだけ別のことを考えていたが、それを気取られるとは思わなかった。
霊「なんだっていいでしょ? 私は早く帰ってお茶が飲みたいだけよ」
レミィ「ふんっ、嘘ではないようだが真でもないな。大方、門番と戦っていた男の事でも考えていたのだろう?」
私の目が無意識に見開く。
あわてて戻すがもう遅い。
今の反応で図星だった事がばれてしまった。
レミリアがニヤニヤと笑っている。
レミィ「ククク、その反応はどうやら図星のようだな。門番は倒したようだが今だここに来ないのを見ると既にやられたか、迷子になっているかのどちらかだろう」
彩人は強い、ここ一ヶ月で私達と比べても遜色ないくらいに強くなった。
正直、ここまで強くなるなんて思ってもみなかった。
特に弾幕を見切る判断力と、声を掛けても揺さぶっても気付かない集中力には目を見張る物がある。
それに彩人には咲姫と舞花もついている。
そんな彩人がやられる?ましてや迷子?ありえない。
そう考えると、今まで少しでも心配していた自分が馬鹿らしく思えてきた。
肩の力を抜き、一瞬だけ隙だらけになる。
しかし、レミリアは警戒して何もしてこない。
霊「ふふ、あいつがやられる? ましてや迷子? そんなのありえないわね!」
そういえば、ゲームの途中だったわね
それなら、コイツを倒せば私の勝ちということになるわけね。
確か、一人を選んで何でも言う事を一つ聞かせることが出来るのは勝者だけだったっけ。
やるからには勝つ! 当然よね?
霊「さあ、覚悟しなさい吸血鬼! あんたを倒して私が勝つわ!」
再度、お札と針を構え戦闘態勢に入った。
side~レミリア~
あの男の話を振ったあと、いきなり隙だらけになったから何事かと思えば何も無かった。
霊「ふふ、あいつがやられる? ましてや迷子? そんなのありえないわね!」
巫女が笑う。
それも、嬉しそうに楽しそうに笑った。
霊「さあ、覚悟しなさい吸血鬼! あんたを倒して私が勝つわ!」
そう言って、巫女は飛び上がりお札を投げてきた。
なんだ、さっきと同じパターンか・・・
私はそれを難なく避ける。
そして、どこからかカードを取り出す。
レミィ「そろそろ強めのを出してもいいかしら?」
カードを掲げ、宣言する。
レミィ「紅符『スカーレットシュート』!」
私を中心に中弾と小弾が付随した大弾を撒き散らす。
そして、中央の玉は相手に向かって飛んでいく。
だが巫女は、それを軽々と避けている。
先ほどのように、考え事をしていなければ何か別のことを考えているわけでもない。
途端に動きが格段に良くなったのだ。
レミィ「なかなかやるじゃない! なら、これはどうかしら?」
二枚目のカードを取り出し宣言する。
レミィ「天罰『スターオブダビデ』!」
周囲に陣を張り、その陣のあちこちから弾を撃ち出す。
難なく避けている巫女だが、それでもだんだんと動ける範囲が狭まってきた。
すると、痺れを切らして巫女がカードを取り出す。
霊「チッ、夢符『封魔陣』」
縦長の赤い陣、横長の青い陣を張り、開くように展開する。
そして、レミリアの陣ごと弾幕を全て消し去った。
レミィ「なっ!?」
陣ごと弾幕を消された為、今はお互いの姿がはっきり見える状態。
レミリアは驚きで一瞬動きが止まった。
そして、霊夢がその隙を見逃すはずも無く、
霊「これで終わりよ!霊符『夢想封印』!」
複数の大玉がレミリアに向かって飛んでくる。
いくつかは避けたが、目の前には既に五つほどの大玉が迫っていた。
レミィ「(やられる!!)」
咲夜「お嬢様ッ!!」
咲夜が叫んでいるのが聞こえるが、それどころではない。
大玉との距離が後2メートルのところで、視界に金色が映った。
レミィ「えっ?」
目の前で大玉は残らず爆発し、煙が晴れるとそこには・・・
フラン「大丈夫、お姉さま? 怪我してない?」
私を心配そうに見つめる、妹の姿があった。
side~フラン~
私は恐かった、お姉さまを見た瞬間に自分が自分ではなくなってしまうのではないかという不安があった。
彩人のおかげでいろいろなことを知る事が出来たし、手加減も多少出来るようになった。
でも、いままでの事があるから平静では居られないかも知れない。
それでも、私はお姉さまに会いに行く。
そう決意し、扉を開けた。
部屋に入ると、今にも大玉がお姉さまに襲い掛かろうとしていた。
このままでは、お姉さまはあの攻撃で傷を負うだろう。
いくら吸血鬼だからと言ってあの攻撃は無傷では済まない。
咲夜「お嬢様ッ!!」
咲夜が叫んでいるのが聞こえる。
このままじゃ、お姉さまがケガをする? そんなのは嫌だ!!
そう思った時にはお姉さまの前に立ち、私は能力を使っていた。
この全てを破壊する力で、私の大事なものを護るんだ。
フラン「大丈夫、お姉さま? 怪我してない?」
煙が晴れ、呆然とこちらを見ているお姉さまに問いかける。
レミィ「えっ? あっ、だ、大丈夫よ」
良かった、ケガは無いみたいだ。
どうやら、先ほどの心配は杞憂のようだった。
彩人はこうなる事を分かっていたのかな?
咲夜「お嬢様ッ!ご無事ですか!? って、妹様!? 何故ここに!?」
いきなり、咲夜が現れる。
時間を操作して移動してきたのだろう。
フラン「二人を助けに来たんだよ」
二人はポカンと口を開けていたが、一瞬早くお姉さまが我に帰った。
レミィ「だめよ、今すぐ部屋に戻りなさい!!」
咲夜「妹様、ここは危険です。 お嬢様の言うとおり、お部屋にお戻りください」
お姉さまから有無を言わさないプレッシャーを感じる。
だけど、ここで引いたら何のためにここまで来たのか分からなくなる。
フラン「嫌だ、私だって戦えるんだよ?」
レミィ「それでも、ダメよ」
それ以上は何も言わず、ただ無言でこちらを見つめてくる。
フラン「そっか、そうだよね。 私はいらない子、だから長い間地下に閉じ込められていたしずっと一人だった。 そんな奴の助けなんて、むしろ迷惑なだけなんだね。 結局は私の一人よがりか・・・」
そこでお姉さまは、始めて焦った顔をした。
レミィ「フラン、それは違っ!」
フラン「そっか、そっか~。 もう何でもいいや。 みんなみんな、コワレチャエ!!」
私を中心に、狂気が渦のように放出される。
この場に居る全員が私に向けて、臨戦態勢を取る。
霊「ちょっとちょっと、何なのよ? いきなり、敵が増えたと思ったら今度は仲間割れ?」
魔「霊夢、あれは本気でかからないとまずいぜ」
向こうで紅白と白黒が何か叫んでいるが関係ない。
フラン「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
そして、両端がスペードの形をし、柄の部分が曲がっている杖のような物を取り出し、
フラン「サア、イクヨ?」
お姉さまに向かって、振りかぶった。
フラン「なんて、出来るわけないよね?」
狂気の渦は初めから無かったかのように霧散し、私の目の前には呆然としているお姉さまがいる。
フラン「お姉さまを理由も無く攻撃するなんて、今の私には出来ない。 ねえお姉さま、フランの話を聞いて?」
私は、お姉さまを真っ直ぐに見つめる。
自分の気持ちを伝える為に。
フラン「495年間、私は一人だったわ。 始めのうちは、寂しくてよく泣いてた」
暗い暗い地下の底、とても冷たく、とても暗く、そしてとても寂しい場所。
フラン「でも、何時からだったかな? それが当たり前になっていた」
これが、当たり前。 自分の世界になるまでそう時間は掛からなかった。
そうしなければ、私は取り返しのつかないところまで壊れる所だった。
フラン「でも、いつかはお姉さまが迎えに来てくれる! そう信じて待っていたけど結局お姉さまは来なかった。 来るのはいつも妖精メイドかパチュリーに小悪魔、咲夜に美鈴だけ。お姉さまは一度だって来てくれなかった」
レミリアは俯き、辛そうにフランの言葉を聞いている。
心なしか体が震えていた。
フラン「どうしてフランがこんな所に居なくちゃいけないの!?ってお姉さまをに対して怒ったりもしたけど、結局来なかった」
咲夜の表情も辛そうだ。
紅白と白黒は空気を読んでか、傍観を決め込んでいる。
フラン「だけど、それでも、私は本気でお姉さまを嫌いになることなんて出来なかった」
その言葉が信じられないとでも言うように勢いよく顔を上げるレミリア。
フラン「どんなに恨んでも、怒っても、最後にはきっと迎えに来てくれるって言う希望が勝っていた。 ねえ、お姉さま・・・フランの事どう思っているのか分からないし、聞くのは恐いけど私は、フランドールは・・・」
目に涙が溜まって来るのが分かる。声も涙声になってきた。
フラン「フランドール・スカーレットはお姉さまの事が大好きなんだよ? もっと一緒においしい物食べたり、遊んだり、一緒に居たいだけなんだよ?」
ぽろぽろと雫が頬を伝う。
もう前が見えないほどに止め処なく涙が溢れてくる。
不意に、誰かに抱きしめられた。
彩人とは違う匂いが鼻をくすぐる。
その匂いはよく知っている。
遠い昔にいつも感じていた、お姉さまの匂いだ。
レミィ「ごめんなさい、フラン。 今更謝っても取り返しのつかないことをしたのはわかっているけど、ありがとう。 こんな愚かな姉を好きでいてくれて」
フランの頬に雫が落ちる。
レミリアの涙とフランの涙が一つとなって床に落ちる。
フラン「おねえさま・・・」
さらに涙が溢れてくる。
495年間、飢えていた姉の温もりが今は肌で感じられる。
フランはレミリアの背中に手をまわし、抱きしめる。
フラン「おねえさまぁ・・・寂しかった、さみしかったよぉ~」
レミィ「ごめんなさい、もう絶対に離したりなんてしないから! それから、私も貴女が大好きよ」
フラン「お姉さま・・・」
レミィ「フラン・・・」
レミフラ「「I love you.」」
二人は抱き合ったまま、泣いた。
495年の時を経て、吸血鬼姉妹の願いは今ここに叶ったのだ。
やっと、ここまで繋げることが出来た。
というか、主人公空気!?
かなりシリアスが多めだったので、今度はほのぼの分をチャージしなくては!
感想・要望がありましたらお願いします。