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果たされた約束

side~彩人~



カツーン、カツーン・・・

人気のない暗闇、その中で誰かが階段降りる音だけが響いていた。

その足跡の主はこの作品の主人公、狂咲彩人だ。

螺旋状になっている階段を一段一段ゆっくりと進んでいる。

あれから10分ほど経ったが、まだ底が見えない。

この暗闇で唯一の光源である壁の蝋燭の炎がゆらゆらと揺らめいていた。


舞花「ねえ彩人様、この先に何かあるの? 黒幕は上に居るんでしょ?」


咲姫と舞花が出てきて、両肩に乗る。


彩「約束を果たしに行くんだよ」


そう答えると二人はキョトンとしながらもそれ以上は聞いてこなかった。

二人のこういう気遣いはありがたい。

それは、自分を信頼してくれてるからなのかはわからないがそうだったらいいな・・・


咲姫「でも彩人様、飛んで降りたほうが早いのでは?」


ピタッと足を止める。

それは思いつかなかった。

確かに螺旋階段なら飛んで降りたほうがずっと早い。


彩人「そのとおりだな・・・なんで気付かなかったんだろう? ありがと、咲姫」


お礼を言うと、うれしそうに笑う咲姫。

よし、それじゃ・・・ショートカットしますか。

助走をつけ、真ん中目掛けて跳躍する。

身体は重力に引っ張られ、加速しながら落下していく。

もう底が見えてきた。

普通の人間ならそのままの速度で突っ込むが、飛べる俺は徐々に減速させ着地した。


彩「うん、早かったな。 ものの十数秒で着いた」


さてと、あいつの居る部屋は・・・見つけた。

一つだけ、中からものすごい力を感じる部屋がある。

夢の中で幾度となくぶつかり、互いに磨き上げた力が漏れ出している。

自分はもう慣れたが、二人は初めてだから顔が強張っている。

そんな二人に苦笑しながら、扉を開き中へと入った。


?「だあれ?」


部屋には少女が居た。

あの夢で一緒に修行をした少女が現実で目の前に座っていたのだ。









side~フラン~



私の世界に誰かが入ってきた。

今は食事の時間じゃないし、お風呂の時間でもない。

それに今日はお姉さまが何かするみたいで皆そっちで忙しいから誰かが来るなんて無いと思っていた。

だから聞いた。


フ「だあれ?」


別に誰でも良かった。

どのみち私の世界はここだけだ。

そう思っていた。

その声を聞くまでは・・・





彩「ちゃんといい子で待っていたか? 約束どおり迎えに来たぞ」





その声を聞いた瞬間、胸が高鳴った。

頭が真っ白になり上手く言葉が出てこない。

それは、優しい夢の中での声。

幾度となく聞いた、私を救ってくれた声。

胸がキュッとなって苦しい。

でも、全然不快ではなくむしろその声が響くたびに心が安らぐ。

声の主はもう手を伸ばせば触れられるくらいの距離まで近づいていた。


フ「約束・・・守ってくれたんだね、彩人」


彩「俺は果たせない約束はしないし約束は破った事がないのが自慢なんだ」


そう言ってニカッと笑う。

その笑顔は夢に出てきたものとまったく同じで・・・

ああ・・・もうだめだ。

私は目に涙を溜めながら彼に抱きついた。

強く、強く抱きしめる。

それに応えるように彩人も強く抱きしめ返してくれた。

私は今、とても幸せだった。






side~彩人~



しばらく抱き合ったあと、二人はどちらからともなく離れた。


彩「さて、とりあえずフランにも二人にも紹介しないとな」


言葉の意味が分からず、きょとんと首を傾げるフラン。

その仕草に苦笑し、咲姫と舞花を呼ぶ。

二人は、人型で俺の隣に立った。


フ「えっ!? おねえちゃんたちだれ?」


いきなり現れた二人に驚く。


彩「フラン、紹介するよ。 俺の護り刀で付喪神の咲姫と舞花だ。」


咲姫は礼儀正しく深く頭を下げ、舞花は笑って「よろしく~」と軽く挨拶をする。

まったく正反対の性格を持つ姉妹である。


彩「そして、この子はフランドール・スカーレット。 ここの黒幕の妹だな。 敵じゃないから安心してくれ」


フ「フランドール・スカーレットです。 フランでいいよ、よろしくね」


フランは元気いっぱいに挨拶をする。

自己紹介が終わったところで、咲姫が口を開いた。


咲姫「彩人様、どういうことか説明してくださいますよね?」


おそらく、何故この少女とこんなに親密かが聞きたいのだろう。

その事も含めて話をするつもりだったからちょうどいい。


彩「安心しろ、全部説明してやるよ。 でも、少し長くなるから移動しながらでいいか?」


二人はコクリと頷く。 しかし、瞳には微かに不安の色が映っていた。

だから、二人の不安を取り払うように頭を撫でてやった。

咲姫と舞花はぎゅーっと抱きついてからまた刀に戻った。

よし、そろそろ霊夢たちも黒幕を見つけた事だろう。

ここから面白くなりそうだな。

でも、急がないとクライマックスに間に合わない。

役者はまだ出揃っていないからな。

フランの手を握り、そして言う。


彩「さあ、フラン! そろそろちっぽけな世界から飛び出して、楽しい事がたくさんある世界へ行こうぜ!」


フ「うん!! 私を導いて、彩人!」


二人は元気良く扉を吹っ飛ばして螺旋階段を昇っていった。







同時刻、とある大広間にて・・・

博麗霊夢と霧雨魔理沙は館の主とその従者と対峙していた。


霊「あんたが黒幕ね、今すぐ霧を止める? それとも、退治されてから霧を止める? 私はどっちでもいいわよ」


魔「こんな紅い霧が蔓延っていたんじゃ洗濯物が乾かないぜ!」


霊夢はめんどくさそうに、魔理沙は意気揚々と相手を見据える。

対して、館の主は威厳たっぷりに、従者は主の側に静かに立つ。


レミィ「ククク、博麗の巫女よ! 貴様の血、誇り高き吸血鬼であるこのレミリア・スカーレットが一滴残らず吸い尽くしてあげるわ!! 咲夜、あなたはあの白黒の相手をなさい」


咲夜と呼ばれたメイド服の少女は銀のナイフを構え、


咲「かしこまりました、お嬢様」


鋭い眼光を魔理沙へと向ける。

魔理沙は箒に飛び乗り、


魔「おっ? 私の相手はお前か? 霊夢!そっちのちっこいのは任せたぜ」


さりげなく挑発しながらも戦闘体勢に入る。

霊夢は相変わらずめんどくさそうにお札を構え、


霊「ハァ、早く帰って、彩人のお茶請けでお茶が飲みたいわ」


相変わらずペースを崩さなかった。


レミィ「さぁ、覚悟なさい! 吸血鬼の力、特と見せてあげるわ」


レミリアの言葉が終わると同時に戦いの火蓋が切って落とされた。


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