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門番と魔女、稀に小悪魔

side~彩人~



チルノと大ちゃんを仲間に加え、しばらくすると目的の館が見えてきた。

しかし、


彩「紅いな~」


遠目からでも良く分かったが、近くまで来るとその異常さが良く分かる。

皆も口々に「紅い」とか「趣味悪い」とか言ってる。

あれか、吸血鬼だから紅が好きなのか? それにしたってこれはやりすぎだと思う。

何かあるといけないので館の近くで地面に降り、そこから徒歩で近づくと大きくて立派な門が見えてきた。


舞花「彩人様、門の前に誰かいるよ」


舞花の指摘通り門の前には門番らしき人物が壁に寄りかかるようにして立っていた。

もう目と鼻の先くらいまで近づくと、門番が目を開きいきなり殴りかかってきた。

とっさに前に出て、拳をいなし勢いを利用して門の方へ投げる。

が、空中で態勢を立て直し再びこちらを向いて構えた。


?「正面から堂々と歩いてくるなんてよほど自信があるようですね」


彩「いやいや、ただ単に中央突破が好きなだけだ」


相手はシリアスな空気を出しているがこっちとしてはそういうのが苦手なのでわざとおどけて答える。

こうして話している間にも相手はスキを見せない。

さっきのやり取りで下手に攻撃するとかえって痛手を負う事が分かってしまったようで、スキを見せているにも関わらず動こうとしない。


彩「皆、誰が一番早く黒幕を倒せるか勝負しようぜ。 俺はこの門番を倒してから行くから」


せっかくこれだけの人数がいるのだから手分けすれば早く見つかるはずだ。

それに、異変解決も楽しんだほうが絶対お得だ。

勝者は、一人を指定して常識の範囲内で言う事を一つ聞く、というルールを説明した。


霊「わかったわ。 先に行くから必ず追いついてきなさいよ」


魔「先に行って待ってるぜ~」


チ「最強のアタイなら楽勝ね。大ちゃん、ルーミア、早く行こう!」


大「待ってよ~、チルノちゃん」


ル「彩人~、また後でね」


霊夢と魔理沙が先に、次いでチルノ、大ちゃん、ルーミアが飛んで中に入っていく。

さて、俺もさっさと中に入るかな。

未だ、こちらを睨んで動かない門番の方を向く。


彩「どうして、すんなりと通したんだ?」


?「博霊の巫女は通すようにお嬢様から言われているんですよ。後は、妖精と低級妖怪、人間が一人、対して問題はありません」


なるほど、霊夢以外は数に入っていないのか

しかし、チルノ達はともかく魔理沙、お前なめられてるぞ。


彩「そうか。なら尚更あんたを倒して先に進まなくちゃな」


霊力で身体能力を向上させて合気道の構えをとる。


?「簡単に言いますね、悪いですがここは通しません」


中国拳法のような構えをとる門番。

わざわざ近接戦闘、それもおそらく相手の土俵である格闘技で戦うのは、その方が勝った時に気持ちいいからである。


彩「そんじゃあ・・・狂咲彩人、推して参る!」


静かに、しかし、よく通る声で名乗る。

一度やってみたかったんだよね。


美鈴「相手が名乗ったのならこちらも返さなければいけませんね」


どうやら、相手も名乗るようだ。

なんだか、これから決闘が始まるみたいだな。

それに近い事はしてるけど。


美鈴「我が名は(ほん)美鈴(めいりん)!我が主、誇り高き吸血鬼、レミリア・スカーレットの命により門を死守する者なり!!」


こちらとは、対称的に高らかに名乗りあげる。

その後はお互いに動かない。

まるで、ミュートに設定したかのように静かだが、それも一時。

先に動いたのは美鈴だ。


美鈴「先手必勝!華符『芳華絢爛』」


美鈴を中心に弾幕がばら撒かれる。

っていうか弾幕!? 接近戦じゃないの?

いきなりで驚いたが流れが読めるので最小限の動きだけで避ける。


彩「美鈴の土俵は接近戦じゃないのかよ!」


弾幕をかわしながら訴える。


美鈴「確かにそうですが、貴方の武術は厄介そうですから今回は弾幕でいきます」


俺が使う体術は合気道をベースとし、自分流にアレンジした物だ。

普通の合気道は相手を傷つけずに無力化することが基本であるが、俺はそこに相手の力を相手自身に返す技を加えた。

接近戦を得意とする美鈴にとって、相性が悪い事この上ない。

ましてや、合気道は【流れを司る程度の能力】と相性が良く、能力のおかげでどのように動けばいいかが自然と分かってしまう。

そのことに気付いたのだろう、あの一瞬で。

他の武術相手にどれくらい通じるか試して見たかったけどしょうがないな。

この異変が終わったら改めて組み手してもらおう。

美鈴の方に意識を向けると、なにやら動揺している。


美鈴「どうして、空も飛べないただの人間がそこまで容易く避けられるんですか!?」


あまり意識していなかったけど、飛ばずに弾幕を避けていたようだ。

地面はあちこち、穴だらけである。


彩「あらら、あちこち穴だらけだな。 美鈴、穴埋め頑張ってね」


この場に似つかわしくない、まるで世間話でもするかのような気軽さで話す。

シリアス? なにそれ? シリアルの仲間?


美鈴「あ、ありがとうございます・・・じゃなくて貴方のせいじゃないですか!!」


おっ、今素が出たな。 

やっぱりいつもは皆と同じような感じなんだな。

その事がなんだかうれしくて自然と笑えて来る。


美鈴「何が可笑しいんですか?」


美鈴が訝しげな顔をしている。


彩「別に、なんでもないよ・・・・・・あのさ、この異変が終わったら組み手をしてくれないか? 飛ぶのも弾幕も無しで純粋に体術だけでさ」


美鈴は驚いた顔をしている。

そりゃそうだ、敵にこんな事を言われたら誰だって驚く。


美鈴「それは構いませんが、私は貴方の敵ですよ?」


至極真っ当な疑問を言ってきた。


彩「別に今は敵同士でもそれが終われば仲良くしちゃいけないなんて事は無いだろ? それじゃ、約束だからな」


ニッと笑いながらスペカを取り出す。


彩「それじゃ、そろそろ通らせてもらうわ。 薫風(くんぷう)『桜花の嵐』!」


掌からレーザー状の桜吹雪が美鈴を包み込んだ。

スペルが終了し、目を回して倒れている美鈴を門の近くに寝かせる。

威力は抑えたからすぐに目が覚めるだろう。


彩「さて、いよいよ敵のアジトに潜入開始だ!」










彩「なにこれ!? 広ッ!! そして紅ッ!!」


館の中は外見以上に広く、同じくらい紅かった。

目が悪くなりそうだぜ。

さてと、どこに居るのかな?

無数とも思える部屋を一つ一つ探していたのでは時間が掛かる。

それなら、他とは違う扉だけ狙って探せばいい。

しばらくはそうしていたが、なにぶん広いし数が多い。

一階だけでもかなりの数がある。

やっぱり、手分けして正解だったな。

廊下を走っていると爆発音が響いた。 距離的には近い。

まさか、誰かやられたのか?

爆発音がした方角へ走っていくとひときわ大きな扉があった。

その扉の先には、本、本、本。 一目で何千何万冊の本が棚に敷き詰められていた。

その中を探すと、困惑している魔理沙と紫色の寝巻き着のような格好をした少女が苦しそうに咳き込んでいた。


晴「魔理沙ッ!! 無事か!?」


急いで魔理沙の元へと駆け寄る。


魔「あ、彩人!? いいところに来た。 こいつ、様子が変なんだ。 弾幕ごっこをしていたら急に苦しみだして・・・」


魔理沙は泣きそうな顔でこちらに助けを求めてきた。

どうやら、大技を放った直後にいきなり苦しみ出したようだ。

この症状・・・喘息か? また、厄介な病気を患っているな。


彩「魔理沙、この子を前かがみで座らせて胸元あたりまで服のボタンを外してくれ。 下着を着けているならそれも緩めて、出来るなら鎖骨のあたりを暖めてやってくれ。 その後は背中を擦ってやってくれ」


魔「わ、分かったぜ!」


魔理沙は言われたとおりに服のボタンを外し始めた。

さて、どこかに喘息の発作を抑える薬か呼入器があるはずだ。

それか、コーヒーは無いかな。

本棚の間を覗いて見ると、なにやら頭と背中に悪魔の羽をつけた少女が起き上がっていた。


?「いたたた・・・ハッ! 貴方はさっきの白黒の仲間ですね!? パチュリー様は!?」


パチュリーとはさっきの少女のことだろう。

時間が無いので手短に説明する。



少年説明中・・・



彩「というわけで、喘息の薬とかないか?」


しかし、少女は疑っているようで・・・


?「それが本当だとして、何故助けようとするんですか? 私達は貴方の敵ですよ?」


なに言ってんだこいつは?

その言葉にカチンと来たので大声で叫んでいた。


彩「今はそんなこと言ってる場合じゃねーだろッ!! 目の前で苦しんでいる奴が居て、それを助けるのに理由なんかいるのか!?」


いきなりの大声に驚いたようだが、もう疑いの視線はなくなっていた。


?「分かりました、貴方を信じます。 私は小悪魔、こあって呼んでください。 貴方は?」


彩「俺は彩人、通りすがりの外来人だ。 急ぐぞ!」


俺とこあは薬を持って、先ほどの場所まで急いで戻ってきた。


こあ「パチュリー様、大丈夫ですか!?」


こあがパチュリーに駆け寄り薬を飲ませる。

どうやら、間に合ったようだな。

パチュリーの服が乱れているので見ないように一応後ろを向いておく。

魔理沙がこちらに近づいてきたので帽子の上から手を頭の上に置く。


彩「魔理沙、お疲れ様」


魔「いや、これくらいどうって事無いぜ。 私一人じゃどうしようも無かったからな」


魔理沙は照れたように笑う。


彩「魔理沙、この場は俺に任せて、捜索の続きをしてくれ。 多分、上の方に居るはずだ」


魔「何でそんなことが分かるんだ?」


そんなもの決まっている。

もはや、ゲームでは鉄則といってもいい。


彩「城や館にいるラスボスってのは最上階に居るって相場が決まっているんだよ」


ちなみに、勝手な自論なので本気にしないでね。

だけど魔理沙はどこか納得したようで・・・


魔「なるほど、だから一階にはどこにも居なかったんだな。 それじゃ、私は2階を探してくるぜ」


そう言って、箒に乗って飛んでいった。

こちらが話しているうちに落ち着いたようで、パチュリーが話しかけてきた。


パチェ「貴方のおかげで助かったわ、ありがとう。 私はパチュリー・ノーレッジよ、貴方の名前は?」


発作も完全に治まったようで呼吸も安定している。

その事に安堵しつつ、こちらも自己紹介をする。


彩「俺は狂咲彩人、彩人でいい。 この紅い霧を止めに来た外来人だ」


外来人という単語に反応し、「へぇ、外来人ね。始めて見たわ」とか言いながらジロジロ見てくる。

さすがにもう慣れたがやっぱりむず痒い。

なので、早速本題に入る。


彩「この霧を発生させているのは、パチュリーなのか? もし、そうなら今すぐ止めて欲しいんだけど」


今回の目的は霧の方であって必ずしも黒幕を倒す必要は無いのだ。

ここで止められたら異変解決なんだがな。

しかし、パチュリーは困ったように眉を下げ、


パチェ「確かに霧を発生させているのは私だけど、レミィに頼まれた事だから私の一存では決められないわ。 ごめんなさい」


申し訳なさそうに頭を下げる。

こあも深々と頭を下げている。

やっぱり、黒幕をどうにかするしかないのか・・・ハァ、面倒だな。


彩「ふたりとも、頭を上げてくれ。 なんだか罪悪感が出てくるから」

とりあえず、頭を上げさせこれからどうするか考える。

異変はいずれ霊夢たちがどうにかするだろうから心配ないが問題はそれをどうやって面白い方向に持っていくか、だ。

そうすると、やっぱりあの子をどのタイミングで登場させるかだけど、まずは見つけないと話にならないな・・・

とりあえず、パチュリーに聞いてみるか。


彩「なあパチュリー、この館には地下室とかってあるのか?」


そう聞くと、何故か驚いたようで、


パチェ「あそこの扉から行けるけど、行かない方がいいわよ。 というか何で知ってるの?」


彩「城や館には地下室がつきものだからな。 もしかしたら、お宝がねむっているかも♪」


夢で聞いた・・・なんて言えるはずもないので、適当に答えておく。


パチェ「悪い事は言わないからやめておきなさい、死ぬわよ」


その顔は冗談を言っている顔ではなく、


パチェ「この地下に居るのはとても強い力を持った吸血鬼よ。 少々気が触れているから地下に閉じ込めているけどわざわざ会いに行くようなまねは自殺行為だわ」


その表情はとても真剣で同時に俺のことを心配してくれていることも伝わってきた。


パチェ「貴方は私にとって恩人よ、その恩人が死んだとあっては目覚めが悪いわ。 これは冗談ではなく・・・本気よ」


そのとき、パチュリーとあっちに残してきた少女が一瞬重なって見えた。

内心驚いたが、それも少しの間だけ。

逆に少しだけうれしかった。

なんだか励まされているような気がして、こんなにワクワクする世界に居てもあいつのことを忘れていない自分が居る事がうれしくて。

そんな自分に安堵しながら、いつか夢の中で言ったときと同じように・・・


彩「大丈夫、俺は死なないよ」


絶対の自信に満ちた笑顔を向けた。

その顔に驚いた後、あきれたような顔になり、


パチェ「どうやら、何を言っても無駄なようね。 そこまで言い切れるのだから絶対に生きて帰ってきなさいよ」


彩「心配しなくても、すぐに帰ってくるさ」


そう言って地下へと続く扉を開け、中へと進んでいった。










side~パチュリー~



彼が地下へと続く扉から先に進んだすぐ後、私は彼のことを考えていた。

なんなんだ、あの人間は?

敵であると知りながら、私を助けたり。

こちらが危険だと注意してもどこ吹く風で危険区域に入っていったり。

確かに力はそれなりに持っている。

しかし、彼は外来人と言っていた。

それも一ヶ月くらい前に来たばかりだという。

外では妖怪はほとんど信じられておらず、彼にとって恐怖の対象でしかないはずだ。

理解できない。

あの人間は何を考えているのか。


こあ「彩人さんのことを考えているのですか?」


考えに没頭しているとこあから声をかけられた。

顔に出るくらい分かりやすかったかしら?


パチェ「彼は何者なのかしらね?」


なんだか、こちらを敵だと認知していないように感じる。

まるで世間話でもするかのような気軽さで話しかけてきた。


こあ「さあ、私には分かりません。 ただ・・・」


パチェ「ただ?」


こあ「悪い人では絶対に無いです。 あのときの彩人さんは本気でパチュリー様のことを心配していましたから」


発作が起きた時のことだろう。

確かに彼が居なかったらどうなっていたか分からない。

もしかしたら、最悪死んでいたかも知れない。

その点に関しては、本当に感謝している。


パチェ「なんにせよ、彼のことをもっとよく知らないと分からない事だらけね」


今度会ったら、もう少し話をしてみよう。

そう決め、私は本へと視線を戻した。


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