子供と歴史と少女達の雑談
ついに、10000PVを超えました。これも皆のおかげです。
どうか、これからもよろしくおねがいします。
それでは、どぞー
side~彩人~
若々しい青葉に日差しが降り注ぎ朝露が光輝いている。
そんな清々しい朝、博麗神社の境内に金属音が鳴り響く。
彩「ハッ!」
キィン、と音を立てて刀と刀がぶつかり合う。
舞花「いい感じだね、ちゃんと剣圧が伝わってくるよ」
いつもより早く目が覚めた彩人は、特にすることも無いので朝稽古に勤しんでいた。
いつもと時間が違うだけなのに、周りの自然も朝の空気もどこか新鮮で稽古もまたいつもとは違う感じがする。
偶にはこういうのもいいかな、などと考えていると、
舞花「スキありっ!」
舞花の剣撃を捌ききれず、刀が弾き飛ばされてしまった。
弾き飛ばされた刀が地面に落ちる瞬間、少女の姿に変わりこちらに駆け寄ってくる。
舞花「もう~~~っ!!彩人様、余計な事考えてたでしょ?」
舞花が膨れっ面になりながら詰め寄ってくる。
彩「あ、バレた?」
どうやら、先ほどの事を考えていたのが剣筋に出ていたらしい。
舞花「当たり前だよ!彩人様に剣術を教えているのは私たちなんだよ?」
どうやら、機嫌を損ねてしまったようだ。
とりあえず、舞花の頭を撫でながら謝っとく。
彩人「ごめんね、偶には早朝に稽古をするのも悪くないって思ってさ」
舞花は気持ちよさそうに目を細める。
舞花「まぁ、いいよ。彩人様は思った以上に上達が速いから」
そりゃそうだ、2~4日に一度とはいえ、フランを相手に弾幕ごっこだの能力の練習だのやっているからな。
もちろん、弾幕ごっこでは刀を使っている。夢の中だし何でもありだし。
最近は、お互いに大分力の使い方が分かってきて、今では全力で弾幕ごっこをしている。
最初は力任せだったフランも緩急を付けたりといろいろ考えている。
俺自身、最初のうちは能力を使って避けるだけで精一杯だったが今では互角に戦える。
夢の中なら周りを気にする必要もないし、何より全力を出し合う事で能力にも磨きがかかる。
つい最近気づいたが、霊力や魔力は限界まで使うほど、その上限が上がるらしい。
しかも、夢で全力を出し切ると、少しだが確実に霊力・魔力の上限が増えていた
おかげで、総容量が霊夢と同じくらいになった。
咲姫「一段落着きましたし、そろそろ朝食の準備をしませんか?」
咲姫がそう提案してくる。
確かに、そろそろいい時間だな。
彩「よし、それじゃ朝食を作るか」
二人を連れて、台所へ向かった。
朝食を食べ終えた俺たちは、幻想郷の地理を把握するために散歩へ出かけた。
照りつける太陽の光を能力で調節して、澄み切った空を飛んで行く。
一応お昼には一旦戻る予定だが、さて、どこに行こう?
咲姫と舞花はちっちゃいサイズになって肩に座っている。
彩「とりあえず、人里に行ってみるか」
人が多いところに行けば何か面白い情報があるかも知れない。
それにまだ見て回って無い部分もあるし。
そう思い立ち、人里へ向けて飛んだ。
少年・付喪神移動中・・・
彩「よっと、到着~」
人里は相変わらず賑わっているようだった。
まだ朝方と言う事もあって、いろんな人がせしわなく動いている。
そんな中、伸さんの姿を見つけたので挨拶に行った。
彩「伸さん、おはようございます」
咲姫・舞花「おはようございます」
咲姫と舞花も人型になり挨拶をする。
伸「おう、彩人に嬢ちゃん、おはよう」
伸さんは作業の手を止め、こちらに近づいてきた。
彩「みんな忙しそうですね、いつもこんな感じなんですか?」
伸「おおよ、この季節は日が長いからな。朝早く起きて、仕事しに行くんだ。それよりも・・・」
いきなり肩をつかんだと思ったら豪快に笑い、
伸「いやー、やっぱり俺の目に狂いはなかったわ」
肩をバシバシ叩いてくる。正直痛い・・・。
彩「は?ええと、何のことですか?」
訳がわからないので取り敢えず理由を聞いてみると、
伸「とぼけんじゃねぇよ。人里の男どもを落ち着かせ、尚且つ、助六ん所の嬢ちゃんを助けたじゃねぇか」
ああ、あの時の事か。別にあれは、子供は最初から助ける気だったけど、あいつらの行動に腹が立ったから勝手にやっただけで深い意味は無い。
伸「あのあと、お前の評価はうなぎ上りでなぁ、いやー、正直やる男だとは思ったが予想以上だったな」
どうやら、嫌われずに済んだらしい。あれだけ派手にやったからどうなるかと思ったが杞憂だったようだ。
彩「そうなんですか。ところで、この人里で面白そうなところとか無いですかね?」
話が終わったようなので情報収集に入る。
伸「面白いかは分からないが、慧音先生がやっている寺子屋と後は、人里で一番大きな屋敷に住んでおられる稗田様が幻想郷縁起つって歴史を書き残しているな。今は九代目だったか?・・・悪い、これくらいしか思いつかねぇ」
そう言って、頭を下げてくる。
彩「いえいえ、十分ですよ。では、そちらに伺ってみます」
伸さんに別れを告げ、歩きだす。
さて、まずは寺子屋に行って見ようかな。
確か現代で言う学校だったよな。
少年・付喪神移動中・・・
どうやら、ちょうど休み時間になったようで子供たちが元気に走り回っている。
そのうちの一人の女の子がこちらに気づき近寄ってきた。
?「やっぱり!あの時私を助けてくれたお兄ちゃんとお姉ちゃんだ!」
そう言いながら抱きついてくる。確かこの子は・・・、
舞花「確か、七瀬ちゃん・・・だったっけ?」
七瀬「そうだよ、覚えててくれたんだね」
今度は、舞花と咲姫に抱きつく。
他の子供たちもわらわらと集まってきた。
七瀬「ねぇねぇ、一緒に遊ぼ?」
べつに、急ぎの用事も無いので了承しようとしたら、
?「すまない、ちょっといいかな?」
後ろから声を掛けられた。
そこには、あの時先生と呼ばれていた少女が立っていた。
なるほど、ここの先生だったのか。
しかし、あの時は暗くてよく分からなかったが、青みがかった白髪に端正な顔立ち、メリハリのあるスタイルに頭には前衛的な帽子を被っている。
若干、幼さが見え隠れしているがそれでもかなりの美少女だ。幻想郷には美人しか居ないのか?
そんなことを思っていると、
?「先生はこの人達と少し話があるから戻ってくるまで自習しててくれ」
そう言うと、子供たちは蜘蛛の子のように散らばっていく。
七瀬「残念だけど、また今度遊ぼうね。お兄ちゃん、お姉ちゃん!!」
そう言って、七瀬も戻っていく。
?「ここで、立ち話もなんだし、上がってくれ」
そう言って、寺子屋の一室に案内された。
先ほどの少女が、お茶を入れて戻ってくる。
自分達の正面に座り、凛とした声でしゃべりだした。
慧「さて、まずは自己紹介をしよう。私は上白沢慧音、この寺子屋で教師をしている」
彩「俺は狂咲彩人、博麗神社で修行中の外来人だ。こっちは俺の愛刀の付喪神で俺の家族、名前は咲姫に舞花だ」
俺の挨拶に合わせ、二人は軽く会釈をする。
慧「彩人に咲姫と舞花だな、よろしく。しかし外来人か、なるほど、始めて見るがどおりでここらじゃ見かけない服装をしているわけだ」
慧音が一人納得しこちらをまじまじと見てくる。
なんだか居心地悪いな。
彩「それで、話というのはなんですか?」
話が進みそうに無いのとこっ恥ずかしいのでこちらから切り出した。
慧音は咳払いをし、いきなり頭を下げ謝罪と感謝をしてきた。若干、頬が赤い気がする。
慧「そうだったな。彩人、咲姫に舞花、面倒をかけてすまなかった。それと、皆を守ってくれてありがとう」
おそらく、七瀬を助けた時の事を言っているのだろう。
正直、自分としては子供が死ぬと聞かされて、放って置くほど人間捨ててないし―最近、人間離れしてきたけど―あの馬鹿どもに関しては、腹が立ったから言いたい事を言っただけだし、それが結果として守ったって事になったんだろうけど。
彩「別に、七瀬の件は確かに助ける気でやったけど、助六達の事に関しては結果的にそうなっただけだよ。どちらも俺が勝手にやった事だ」
だから、感謝する必要は無い、そう伝えたのだが、
慧「それでも、あのままじゃ皆森に突っ込んで行っただろうし、私では止めることは難しそうだった。七瀬も無事だったかは分からない、だから・・・」
ありがとう、と年相応だがとても綺麗な笑顔を見せてくれた。
おそらく、何かお礼をするまでは引かないだろう。そういう雰囲気だ。
だから、こんな笑顔が見れたのだから、労働の報酬としては十分だ。
彩「それじゃ、慧音のその綺麗な笑顔が見れたから今回の件はそれでおしまい!それでいいな?」
多少強引だが、この子はかなり義理堅い性格のようだし、こうでもしないと納得しないだろう。
予想通り、慧音は顔を赤らめながらも、納得していないようだった。
慧「なっっ!!何を言っているんだ、お前は!///」
彩「慧音だって、皆が笑っていられるように皆の事守っているんじゃないの?」
その言葉に慧音は押し黙る。何か言いたそうにしているが、かまわず続ける。
彩「今回の事で、七瀬も慧音も不特定多数の人も無事だった事を喜んで、今を生きている。俺としてはそれで十分なんだよ。慧音は違うのか?」
慧「私だってそうだ。だから人里の守護者をやっている。」
慧音は力強く言った。
彩「人一人ができる事なんてたかが知れてる、今回は慧音一人じゃ手に負えなかった。だから、代わりじゃないけど俺達があの子を助けた。それだけのことなんだよ」
慧音もどうやら納得したようだ。
それと、一つ約束をさせる。
彩「慧音、これからは一人で全部背負おうとするな。慧音が傷ついて喜ぶ奴なんてここには居ないからな。どうしても、一人じゃ無理だと思うなら、俺達を頼れ。お前が守りたいものくらいお前ごと守ってやるよ」
そう言って、さわやかに笑ってやった。
それを聞いた慧音は顔を赤くしながらも、控えめに頷いた。
彩「それじゃ、そろそろお暇するわ」
冷めたお茶を一気に煽り立ち上がる。
それに合わせるように咲姫と舞花も立ち上がる。
慧「もう行くのか?いろいろと話をしたかったんだが」
慧音は少し残念そうに言う。
彩「いや、授業しないといけないだろ?」
慧「あっ!」
どうやら、忘れていたらしい。
子供たちが騒いでいる声が聞こえてくる。
彩「また今度、授業が無い日にでも、な?」
慧「わかった、また今度だな」
そういい残し、慧音は教室へ、俺達は稗田の屋敷に向かった。
稗田の屋敷は、里で一番大きいとの事だったのですぐに見つけることが出来た。
途中で手土産を買っていくのも忘れない。
規模、装飾、建築美、全てにおいて他の家の追随を許さない造りは、なるほど、九代も続いているにふさわしい景観だった。
彩「でっかいな~」
舞姫「おおきいね~」
咲姫「おおきいですね~」
三人そろって同じ感想を口にする。それだけ、大きいのだ。
屋敷の門にいる門番に当主に会いたい、と言うと意外にもあっさり中へ通してくれた。
外見もすごかったが中もすごかった。
特に庭なんかどこぞの高級料亭も顔負けの造りだった。
ある部屋の前で使用人が止まる。
どうやらここが当主様の部屋のようだ。
使用人が声をかける。すると・・・、
?「入りなさい」
声を聞いたとき、驚いた。
その声は女性で、自分よりも年下のようだからだ。
使用人に中へ案内され、おそらく当主であろう―やはり見た目は自分よりも幼い少女だ―の目の前に座る。
使用人は出て行き、襖が閉められたと同時に少女が口を開く。
阿「ようこそいらっしゃいました。私は稗田家九代目当主、稗田阿求と申します。」
阿求と名乗った少女は外見からは考えられないくらい大人びていた。
その一挙手一投足がとても優雅だ。なんというか華がある。
彩「俺は狂咲彩人、博麗神社で修行中の外来人だ。こっちは俺の愛刀の付喪神で俺の家族、名前は咲姫に舞花だ。今日は、幻想郷縁起を書いているって聞いたものでね、それを出来れば見せてもらいたくて訪ねた次第だ」
その言葉に阿求はうれしそうに笑みを浮かべ、
阿「お安い御用ですよ、一番最近の物でよろしいですか?」
彩「ああ、かまいませんよ」
少女はクスッと笑い、
阿「別に畏まらなくてもいいですよ。私も少し砕けますから」
と言っても、あまり変わらないように見えるが、せっかくなのでお言葉に甘える。
阿求は使用人に指示を与えると、こちらに話しかけてきた。
阿「それでですね、お願いがあるのですが・・・」
どうやら、俺達の事は結構噂になっているらしく、阿求が、俺達が来たら通すように門番に指示を出していたらしい。
だから、あんなにあっさりと通してくれたのか。
それで、人里の女の子を救った俺達を幻想郷縁起に乗せたいのでいろいろ話を聞きたいそうだ。
別に、不都合もないし、俺が幻想郷縁起を読んでいる間に咲姫と舞花が話をするという事に決まった。
たまに俺も補足程度に会話に参加するけどね。
少年読書中・・・
少女達おしゃべり中・・・
幻想郷縁起とは、どうやら厳密には危険な妖怪への対処の方法が書かれたものらしく、妖怪の山などは近づかない方が良いと書かれていた。その他にも歴史とか。
阿求達は、この間にかなり仲良くなったらしく今はきゃいきゃいとおしゃべりしている。
さて、そろそろお昼時だし、神社に帰りますか。
そっちもひと段落したようだし。
彩「それじゃ、そろそろ帰るよ。それと、なかなか面白かったよ」
そうお礼を言う。
阿「ありがとうございます、そう言っていただけると書いた方としてもうれしいです」
阿求は咲姫達と仲良くなったためか、かなりくだけた風に笑う。
漫画だったら、にぱーと言う擬音語が書いているだろう。
阿「またいつでもいらしてくださいね。歓迎しますから」
咲姫「さようなら」
舞花「またね~」
阿求と別れ、昼食を摂るために博麗神社へと向かった。
次回の投稿は来年の一月三日以降になると思います。
今年はこれで最後の投稿です。
皆様、良いお年を。