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魔女はオトコノコ!  作者: 蒼穹月


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8/14

オトコノコと魔女の薬 -1/2-

音夢は仕事があるから部活には参加しない。

よって休日は店に立っている。いや、ロッキングチェアに座って揺られている。


「ふわぁ〜あ。良い天気だな〜」


ぽかぽか陽気の中で魔法で揺らしている椅子は、夢の世界へと誘う。現に先程からあくびが出ては涙目になる目をパシパシ瞬いてなんとか抗っている所だ。


「もう、お客さんいないからってだらしない」


外の掃除をしていたノアールが、玄関扉を開けるなり見えた音夢に口を尖らせる。

音夢はノアールに誤魔化し笑いを向け、そしておや?と視線を動かした。

視界の先にはノアールの背後からピョコンと除く可愛らしいお顔。


「ぴゃっ」


可愛らしいお顔は音夢と目が合うとノアールの後ろに隠れてしまった。

優しく花が咲くような微笑みを浮かべた音夢。


「これは可愛らしいお客さんだね」


驚かさないようにゆっくり立ち上がって言った。

ノアールはヤレヤレと言わんばかりに小さく溜息を付いて一歩横にずれる。そうすれば隠れた可愛いお顔が見つかった。


「ひゃうっ」


全身が顕になったのは可愛らしい女の子。歳の頃は小学中学年頃だろうか。最近の子は大人びているからもう少し下かもしれない。


「いらっしゃい」

「ひゃいっ」


隠れる場所を探してキョロキョロしていた女の子は、観念して、けれども緊張で噛み噛みに返事を返した。

魔女のローブを翻して近寄る音夢を、女の子は今度は逃げずに足を踏ん張って待った。

そんな女の子の目線に合わせる為に屈んだ音夢。

ノアールはその様子を見届けてから店の奥に向かった。掃除の後だから手洗いうがいをするのだ。ついでに緊張を解すお茶を用意しようと思っている。


「一人で来たの?迷わなかった?」

「迷ってないよ。お母さんが具合悪くてね、だから一人で来たの」

「そっか、それは大変だね。疲れたでしょ?お話聞くからそこに座ってね」


音夢が見えるように体をずらすと、そこには先程までなかったファンシーな小さい丸テーブルと椅子が現われていた。


「ふわー!可愛い!」


一目で気に入ったのか、女の子はトトトと軽い駆け足で近寄り、椅子を引いて直ぐに座った。座った後で椅子やテーブルを触って感動している。

その可愛らしい挙動に音夢もクスリと笑い、対面に座った。


「それで、お母さんの具合はどういうふうかな?」


問われてハッとした女の子は、スカートを両手でキュッと握りしめる。そしてうるうると瞳を濡らした。


「あのね。お母さんお咳が止まらないの。ずっとコンコンってしててね。夜も寝れてないみたい……。お医者さんにも行ったけど治んないの……。お、お母さん大丈夫って言うけど、全然辛そうで、だ、だから……。お母さん死んじゃったらどうしよう!!」


話しているうちに心配な気持ちが溢れてしまい、女の子はとうとう泣き出してしまった。

音夢は椅子を女の子に近付けて、頭をヨシヨシと撫でる。


「そっか、それでここまで来たんだね。頑張ったね。

大丈夫だよ。お兄ちゃんはお薬作るの名人なんだから。絶対お母さん治すからね」

「お、お姉ちゃ〜ん!」


優しくされて女の子は音夢の胸にしがみついてワンワンと泣く。

それを優しく包み込んで落ち着くまで頭を撫でる音夢。顔は若干複雑そうだ。


「お兄ちゃんって言ったのにな……」


可愛い格好は大好きだけど、心はちゃんと男の子なのだ。

しばらくあやしていると奥からフワリと甘く、爽やかで、落ち着く香りが漂って来た。

その匂いを追うようにノアールが姿を現す。手には丸いファンシーなお盆とその上に乗った茶器一式。香りはそのポットから漂っている。


「勇敢なお姫さまの為にお茶をお入れしましたよ」


コトリと目の前に置いたカップに、ポットのお茶を注いでいく。

女の子がスンスンと鼻を啜りながら見ていると、何と言うことでしょう!青い色のお茶がピンク色に変わったではありませんか!

これには泣いていた子も思わずビックリ。


「ふぇ〜!すごいすごい!魔法みたい!」

「ふふふ。これは誰にでも出来る魔法ですよ。魔女様にお薬用意して貰っている間に作り方を教えますね」

「!ほんと!?約束だよ!」


泣いた子も笑顔にするノアールに、音夢も安心して女の子を任せることにした。いつの間にか離れていた女の子に気付かれないように、そっと離れて薬棚に向かう。


(咳が止まらない。っか。長く続いているなら肺炎か咳喘息って診断されたかな?)


考えながらも音夢の動きは止まらない。手の平には女の子を撫でた時に移った心配の力が宿っている。薄く灰色を帯びたその力は勿論常人には見えない。

魔女だから見えるし触れる。

その力がとある薬棚に近付いた途端にウニョリと動いた。まるでイヤイヤとでも言うように逃れる姿に、音夢は容赦なく一つ一つ薬に近付けていった。


(ん。これと、これ。それにこれもか)


心配の力が全力拒否を示した薬を取り出して、それを持って大鍋に向かう。

空の鍋に魔法の水をたっぷり注ぎ、そこに心配の力と薬を同時に投入する。薪に魔法の火を着けたら大きな木製のお玉で掻き混ぜていく。

すると魔法の水は透明から曇天のような濁った灰色になった。


「魔法のお水さん。頑張り屋さんで心配屋さんの女の子のお母さんの様子を教えて」


魔法の力を込めて魔法の水に語りかけ、そして虹色に輝く小瓶の液体を数滴垂らした。

波紋を広げた魔法の水は、灰色の水を渦のように回転させて、そして光った。


『ごほごほ!』


すると魔法の水から女の人の声が流れてくる。

回転が止まると水面には寝込んだ女の人が映った。


「この人がお母さんか。う〜ん、成る程これはまた」


頷いた音夢はまた薬棚に向かった。

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