オトコノコと魔法の箒 -4/4-
お気に入りの箒の柄を手に入れた音夢。
ニコニコご満悦で歩いている。
いや、心なしかスキップのリズムが生まれている。
「魔界産仙桃かぁ、穂の部分も合わせたいよね」
言いながら確認するお財布の中。
しかし一円玉と五円玉しか残っていない。
「うくぅ〜。穂までは手が出ないかぁ」
ご満悦から一転。眉尻を下げてショボンとなった。
スキップも止まっている。
そこに又もやスマホが鳴る。
音夢は口を引き結んでスマホを取った。
『音夢』
「ハイ」
一言だけで伝わる。
母親は偉大である。
「道具は使い込む程魔力も扱いも馴染む。でしょう」
『わかってるなら寄り道せずに帰りなさい。ノアールが心配してるわよ』
「はーい」
音夢は諦めてトボトボ帰る。
マイ箒が無い音夢の交通手段は勿論公共交通機関である。
バス停の時刻表を覗き込み、現在時刻に近い場所を指で探す。
「猫バスは行ったばっかかぁ。
次のは……」
時刻表に書かれていたのは種類である。
魔女達の公共交通機関は大半が生き物なのだ。
「烏便か普通のバスかぁ」
勿論生き物でないのもあるが、運転するのは魔女である。という事は。
「あ、普通のバスのが早く来た」
音夢の視線は上。空を見ている。
つまりバスは空を飛んでいるのだ。
箒や車が有ればそりゃ、バスもタクシーも有るってものだ。
バスの行き先を見ると人間界経由魔界行きとなっている。そのままバス停で待てばバスは止まってドアを開けた。
音夢はバスに入ると、入り口付近にある読み取り機に手を翳した。
「人間界まで」
翳したまま言うと、手と読み取り機の間に一瞬魔法陣が光る。そして直ぐに消えて
『ピッ』
と電子音が鳴った。
音を確認して音夢は空いている席に座った。
「人間用と違って残高見えないのだけが不便だよねー」
ポツリと漏らした声は、空いている車内では誰も聞いている者はいない。
誰にも聞こえていないのを良い事に音夢は「ぷぅ」と小さく頬を膨らました。
(帰ったら直ぐに箒作ろ)
魔女たる者、やっぱり自前の箒で飛び回りたいと思う音夢だった。




