オトコノコと魔法の箒 -3/4-
音夢が振り返れば、これぞ魔女と言った風体の老婆が腰に手を当て、杖を突いて立っている。
音夢はそんな老婆に口を尖らせた。
「スゥお婆。それじゃ僕がいつも壊してるみたいじゃないか」
老婆な魔女、スゥに心外なと頬を膨らませると、スゥは目元の皺を深めて「ほぅほぅほぅ」と笑う。
「そうだったかね。長く生きてると時の感覚が鈍ってしょうがない」
「そうでしょう。そうでしょう」
ウンウンと頷く音夢だが、スゥの目は細くなりキラリと輝いた。
「前は夏なのに寒い日で、セーラー服の上から魔女服で暖を取っていた。
あれはいつだったか」
とても細かく覚えている。全く歳を感じさせない。
音夢は口を噤んで冷や汗を掻く。
何故ならそれはまだ古いとは言えない記憶だったからだ。
そんな心情を正しく読み取るスゥは、目も口も弧を描いて「そうだそうだ」と然も今思い出した風に口を開いた。
「去ね」
「うあー!スゥお婆オススメの珍しい柄無いかな!?」
音夢は無理矢理言葉を遮って、わざとらしく柄を取っては次々とスゥに見せる。
スゥはそれに「ほぅほぅ」と皺を深めて笑う。
「そうさね、今し方面白いのを入荷したよ」
スゥは音夢の誤魔化しに乗ってくれる様だ。
腰に手を当て、杖をコツンコツンと突きながら音夢を案内する。
これ幸いだと音夢もそれに付き従う。
着いた先は会計の裏側だ。
スゥは箒の材料取り扱い店の店長なのだ。
「ほれ、これなんかお前さん好きだろう」
好みを把握される位に音夢は常連だった。
音夢はスゥから柄を受け取り矯めつ眇めつ確認する。
「仙桃の木?別に珍しくなんて……」
木目、触感、匂い等から正確に材質を読み取る音夢。
魔法薬屋を営む者として、鑑定には自信があるのだ。
仙桃と言えば天国やら神界やら、兎に角圧倒的聖なる地に生えてるで有名だろう。
とは言え魔女のコミュニティ力が有れば割と良く手に入る部類だ。
音夢も期待した分拍子抜けした顔で値札を見た。
そこには値段の他に商品の詳細が載っていて、
「魔界産!?
は!?神界でしか咲かない筈でしょ!?
ちょっ!どういう事!?」
目が飛び出す勢いで驚いた。
値札を握り締めてワナワナと震えている。
スゥはしてやったりと皺を深めて「ほぅほぅ」笑った。
「植物研究家魔女のレベッカが遂に咲かせおったのよ」
「ふわぁ!凄いねぇ」
魔女の成果と聞けば感嘆の声が出る。
音夢だって頑張って新しい魔法を研究しているのだ。それが並大抵な事じゃ無いとわかる。
改めて憧憬の眼差しで仙桃の柄を見る。
持つ手も恭しくなっている。
「それで、買うのかい?買わないのかい?」
「買う!!」
即断即決。
気に入ったなら値札は気にしないのだ。
スゥも音夢に買えない値段は紹介しない。




