オトコノコと魔法の箒 -2/4-
ノアールにお留守番を頼んで音夢はショッピング中。
「はわ〜っ、満月の下でタップダンスをしたマンドラゴラの蜜漬けがあるー!
あ!アッチには星光りに照らされた火山口の雨粒!滅多に取る人いないからレアなヤツじゃん!欲しい!高い!」
物欲をガンガンに刺激されて、音夢のお財布は大忙しだ。
残高はもう乏しく、必死な形相で雨粒とお財布の中身を見比べる。
何度数えても少し足らない。
(カードはまだ持たせて貰えないからキッツいなぁ)
クレカもタッチ決済も人として未成年の内は駄目だと、両親にキツく厳命されている。
使い過ぎた時に支払うのは結局親なのだ。
お財布を持つ手も両目もキュッと閉じて葛藤する。
(箒の材料買わなきゃだし)
キュキュッと更に力が入る。
(妥協したくないし)
キュキュキュッと更に更に力が入る。
「う〜っ」
後ろ髪をビンビンに引っ張られ、後ちょっとで力が緩む所にスマホが鳴った。
鳴り響くメロディは母親からを物語っている。
瞬時にスンッと真顔になると、直ぐ様スマホを取った。
『我慢』
「ハイ」
どうやらノアールから顛末を聞いた母親が、我が子の行動を見越してバッチリなタイミングで連絡して来た様だ。
「ママの未来予知は的確だなぁ」
『そりゃ魔女の年季が違うもの。貴方もしっかり修行するのよ』
「わかってる。早く一人前になってパパを安心させてあげなきゃね」
『う、う、うぉぉぉーっ!音夢ー!早く帰っておいで!』
「パパ!?聞いてたの!?」
『そりゃそうよ。私だけ音夢と話してたらこの人拗ねるんだから』
スマホ越しに父親が咽び泣くものだから、音夢も半笑いになる。
スマホを切ると、今度は後ろ髪を振り払って前を向いた。
向かう先は箒の材料取り扱い店だ。
「箒の柄は〜」
魔女界でもメジャーな魔法具である箒。
その上壊れ易さもピカイチな箒。
けれどカスタマイズが容易な箒。
そんな箒の材料取り扱い店は中々に広い。
最近のトレンドを取り入れた店内はアロマな香りもして乙女心を擽って来る。
(僕、男の子だけどね)
全く違和感無く溶け込む音夢を、気にする魔女はいない。
魔女の感的に気付いているが、そもそも珍しい男の娘魔女は有名だ。
今更気にする魔女はモグリと揶揄されるだろう。
ゆったりと店内を歩き、お目当ての柄コーナーを見つけた。
ニコッと口で弧を描き、一本一本手に取って確認する。
(満開桜は無いかぁ。残念。
柊は流石に多い。安定感有るから選ぶ人多いもんね)
メジャーな材質は品質も多種多様に揃っている。
でも男の子たる者特別な一本を作りたい。面白味の無いのは次々と戻していく。
夢中になっていると、ふと真後ろに気配がした。
「おやまぁ音夢じゃないか。また箒を壊したんだね」
そしてしわがれた声が耳に届く。




