オトコノコと魔法の箒 -1/4-
音夢は魔女です。
魔女は箒で飛ぶものです。と、某有名な魔女が言っていた。
「箒が」
音夢も箒派だ。
今両手に握るのも箒の柄だ。
その手は俄かに震えている。
「折れた」
そう。
右手に柄のみ、左手に穂に繋がる柄を別々に持っていたのだ。
「調子に乗ってジェットコースター飛行なんてするから木にぶつかるのよ」
哀しげに眉を下げる音夢に、ノアールは辛辣に返す。
何故ならノアールは危ないと止めていたからだ。
けれども男の子な音夢は止まらない。だって男の子は無茶をするものだもの。と自分に言い訳する。
「うう〜。作り直しかぁ」
がっくしと項垂れて、魔女の箒に必要な材料と魔法を考える。
折角なら可愛く凝った箒にしたいから、考える材料はどれも貴重な物になりそうだ。
「もういっその事他の魔女みたいに車で飛ぼうよ」
ノアールは知り合いの使い魔が優雅に助手席に乗っていたのを思い出した。
何度思い返しても羨ましい光景だ。
だって車なら落ちる心配が無いんだもの。
音夢はそんなノアールの様子に口を尖らせる。
「僕まだ免許無いよ」
音夢はまだ高校生になったばかり。勿論車の免許は持っていない。
けれども音夢とノアールが言っているのはそれとは違うものだ。
「ああ、箒しか取ってないんだっけ。何でよ」
そう。魔女の乗り物免許の事だ。
今の魔女は一昔前と違い、空を飛ぶにも免許がいる。
決まりを守らないで飛んだら一般人に迷惑が掛かるから。それはもう厳しい試験をクリアしなきゃならない。
箒のようにポピュラーな免許は割と取りやすい。が、音夢が箒しか無いのは理由が違う。
「魔女と言ったら箒一択でしょ!」
キリッとした顔で言い切る。
そう。音夢は魔女に憧れて魔女になった男の娘。格好良いよりも、便利よりも、可愛いが大事。
「駄目かぁ」
ノアールも音夢のことはわかっている。
駄目元で言っていたので直ぐに諦めた。と言っても嘆息はしちゃう。
「んー。柄は何にしようかな。
魔除けに柊か、日本らしく桜も良いけど、満開に咲いた時の枝が良いしな〜」
折れた箒を持ったまま、向かうのは素材置き場。
住居兼店舗の横にドールハウスのような小屋がある。
そこに入って行き、キョロキョロする音夢。
ノアールは付き合いきれないから店舗でお店番をする。
「やっぱ無いか〜。中々出回らないんだよね。満開桜の枝」
口を尖らせて樽の中に入った枝を物色する。
真っ直ぐな枝から曲がりくねった枝まで多種多様だ。
「これって言うのないや」
全てを見終えても満足出来ず、口を尖らせる。
下唇に人差し指を当てて、「ん〜」と思案しながらとある方角を見た。
視線の先には壁しか無いけど、見ているのはそのずっと先だ。
「よし。買い出し行くか」
久し振りのショッピング。ワクワクは止まらない。




