オトコノコと店魔女の必須魔法 -2/2-
呼び鈴魔法。
それは来訪者を告げると共に、呼び鈴設置場所と現在地を繋げる魔法。
呼び鈴が鳴ると魔法使用者に通知され、受けると自分を中心に設定した範囲だけ空間が繋がるのだ。
「ポピュラーな魔法だけど、転移魔法以上に難しいんだよね〜」
ロッキングチェアに座る音夢が、魔法書を両手で掲げて唸る。
「そりゃそうよ。転移して終わりの転移魔法と違って、空間の軸をズラして一時的に固定するんだもの」
ノアールがお茶を入れながらが返す。
勉強が捗る様にお茶請けにチョコレートも用意してる。
「うぅ〜……。えっとぉ、お店の認識と、自分の認識を混ぜる?掛け合わせる?んんん〜?」
魔女の魔法は理屈じゃ無い。
だから魔法書も暗号みたいな文章で、内容の殆どが図解である。
音夢は図解を頼りに指を動かした。
「茶室固定。呼び鈴発動」
呪文は何でも良い。
魔法に決まりは無いのだ。
クルクル指を動かして、魔法の要を作る。ポワポワしたピンク色の魔力が渦を巻き、玉の形になり、そしてリボンの付いた可愛らしい呼び鈴の形になった。
指をノアールのいる方に向かってピュンと振ると、魔法の呼び鈴が振った方にヒューンと飛んでいく。
そして呼び鈴はノアールの前で止まった。
「呼んでみてー」
「わかったわ」
ノアールが呼び鈴を手に取り軽く振る。
チリリリリン♪
軽やかな音色が鳴り、そしてそれは音夢の耳にも直接響いた。
「わ。もしかして成功?」
ワクワクしながら言うが、そのまま何も起こらず時は過ぎる。
「あれ?」
「呼び鈴魔法は受けないと繋がらないんじゃなかった?」
「あっ、そうだった。
はーい今行きまーす」
テヘッと小さく舌を出してから魔法を受ける。
すると音夢の目の前の空間が歪み、
「ワクワク」
ぽん。
そしてノアールの入れたお茶が目の前に現れた。
「失敗!」
「許可式転送魔法ね」
アチャーと両手で顔を覆い仰ぐ音夢。
冷静に指摘するノアールは、一回で成功する訳ないとスンとした顔だ。
「もう一回!」
「出来るまで頑張ってね。私は留守番しないから」
「わかってるもん!」
母親に言明されたのだ。
今回のお休みでノアールに留守番を頼めない。
音夢は男らしく……のつもりで可愛らしいガッツポーズをして気合を入れた。
「絶対習得するんだからっ!」
頑張りも虚しく修行はお休み直前まで続くことを、悟りを開いた顔のノアールだけが予測しているのだった。




