オトコノコと店魔女の必須魔法 -1/2-
「音夢ちゃん、遊び行こうよ」
「明日から連休でしょ?たまにはお仕事休んで遊んでも良いじゃない?」
女友達に囲まれて、音夢は目をパチクリさせている。
音夢は修行中の身だ。
お仕事も修行の一環だ。
さてどうしたものかと思案する。
(ノアール留守番してくれるかなぁ)
などと考えていたらスマホが鳴った。
メロディは電話帳登録毎に変えている。
見なくても分かるスマホの表示は、『お母さん』。
音夢はビクッと肩を振るわせてから取った。
「はい」
姿勢を正し、神妙な声で受ける。
『修行中とは言え、学生でもあるのよ。遊ぶ時には思いっきり遊びなさい』
予想に反して優しい言葉に音夢は胸を撫で下ろす。ビクビクしたのが申し訳ない。と思った瞬間。
『それに、まさか呼び鈴魔法使えない訳じゃ無いわよね?
まさかね?店舗系始めるなら真っ先に習得するものね?』
直後に圧のある言葉責めに、さっきより大きくビクッとした。なんなら冷や汗も掻いている。
魔女の師匠たる母には全てお見通し。
「嫌だなぁ。勿論だよ?へへへ」
それでも音夢は出来ないとは言えない。
何故なら怒った母は怖いのだ。
『そうよね。勿論よね。なら心配せず遊びなさい』
「はい」
最後まで圧が強く、有無を言わさずプツリと切られた。
(絶対習得してないのバレてる)
ノアールがいるからついつい後回しにしちゃったのだ。
音夢は連休前に大きな宿題を抱え、途方にくれた。
(連休まで、あと、1週間無い)
そんな音夢に、女の子達は心配になる。
「大丈夫?無理しなくて良いからね?」
「そりゃ、一緒には遊びたいけど」
心配させてしまった事に、音夢は慌てて被りを振った。
「ごめんねっ。大丈夫だよっ」
萌え袖になっている両手を口の前でポスンと合わせ、眉を下げつつニコッと笑う。
座っているから上目遣いになっているのはワザとでは無い。あざとい訳でも無い。
けれども女の子達は声にならない黄色い声を上げた。
魔女じゃ無いけど心の中は通じ合っている。
(((可愛いっっっ)))
心の中で悶えつつ、平常心を装って、女の子達もニコッとする。
「ホント?行けそう?」
問えば今度こそ音夢は頷いた。
「うんっ、行くっ」
嬉しそうに笑い、心の中で習得までのスケジュールを組んだ。
暫く休む暇は無さそうだ。
(学校生活と両立するのも大変だなぁ)
自分で選んだ道。
後悔なんて無いけど。
でもやっぱりちょっと時間に余裕が欲しいと思う。
だってまだまだ遊びたい盛りなんだもの。




