1-2モネの庭でティータイム
「じゃあ、2時間後にCAFÉ すいれんで待ってる」
絵画の中から出てきた様な美少女に伝えられてから、蒼井は悩んでいた。
女性関係は今までも少しはあった。高校時代はクラスで可愛い子と付き合っていたこともあった。
たださっき常設展展示室で出会った少女は、普通ではない。
人では無い様な雰囲気を身にまとっていた。
気を紛らわせようと美術鑑賞をしたが、ピカソの絵を見終えたところで腕時計を見ると、約束の時間まで後30分であった。
このまま逃げようとも思ったが、あの人離れした少女の魅力で、不思議とその選択は無くなっていた。
常設展示室から出ると、蒼井は、CAFÉ すいれんに向かった。
「美味しいっ♪」
黒のゴシックドレスを着た彼女の目の前には、モンブラン、オペラ、プリン等が並んでいる。
彼女の黒檀のような髪がふわりと揺れ、次の瞬間にはまた別のスイーツが彼女の口へと運ばれていく。
さっきから美味しいを連呼している。
さっきまでの、人間離れした静謐な雰囲気はどこへ行ったのか。
今目の前にいるのは、ただただスイーツに夢中になっている少女だ。
「あなた名前はなんていうの?う~ん、美味しい」
無邪気に聞いてきた。
目を合わせると、目の奥がきらりと光った。一瞬虹色に見えたが、今は黒であり、気のせいかと思った。
「じゃあ先に名前を教えてください。そうすれば僕も教えます」
少女は一瞬だけ目を丸くし、次の瞬間には、ふわりと微笑んだ。
「ラデリアよ。よろしく」
ラデリア、蒼井はどこの国か分からない名前だなと思った。
「蒼井です・・」
「じゃあ蒼井さん、先ほどの常設展、どうだった?好きな作品とかあるの?」
ラデリアが訪ねてきた。
「あの美術館は、よく行ってるんですが、今日は宗教画に注目しました」
というか、ラデリアと出会った直後からあまり鑑賞に集中出来なかったのが本音ではある。
「あと、僕は印象派の作品が好きで、モネ作品とかついつい長く鑑賞してしまいます」
「モネおじさん良いよね!あの光を描き込んで、空気そのものなのが素敵」
「モネおじさん!?」
蒼井は、モネをおじさん呼びする人初めて見たと思った。
「私は、美術全般が好きかな。絵も彫刻も全て、全ての美術作品は誰かが生きてきた証だから!」
そこからのラデリア手にスプーンを持ったまま、堰を切ったかのように喋り始めた。
宗教画に始まり、印象派、写真との関係性、現代アートまでずっと喋っていた。あまりの熱量で聞き入ってしまい、蒼井は途中で来たコーヒーには手を付けず、終わった頃には冷めてしまっていた。
「さて、本題っ!」
手をパシッと目の前で叩いて、ラデリアは言った。
「蒼井さん、貴方には半年後フェルメールの真珠の耳飾りの少女、来日した際の日本の研究チームに入って欲しいの」
「え・・・!?」




