chapter6(final chapter) ~nothing~
Scene7/8
私の友達はいつも心強い。
私が困っているとき、手を差しのべてくれるのはいつもこの人だ。
私がミスをしても、その埋め合わせをしてくれるのはいつもこの人だ。
私は、そんな友達に何をしてあげられるのだろう。何をしてきたのだろう。
「――仲間のことを思って、笑うのも怒るのも、全て君だけができることだよ。」
「……そうだね」
私は友達の手を取って立ち上がる。
痛みなんて、もう気にしない。
「《オーディン》、ちょっと目を閉じてくれ」
「…いいけど、なにするの?」
「いいからいいから」
私が目を閉じていると、《トール》から声がかかる。
「うん。これで大丈夫」
不思議と、体が軽かった。
我慢しようとした痛みもなくて、まるで魔法のようだった。
「なに、したの?」
「元気になるおまじない」
「…ありがとう《トール》」
「お、おぅ」
《トール》は吹き飛んで壁際で動かない敵を見る。私も警戒を強めて同じことをする。
「さっきはどーも」
「……2対1は不利ね」
「逃がすと思うか?」
「ワタシが逃げると?」
敵は立ち上がる。
左腕を外して。
「《オーディン》っ! あれを使う!」
「――閃光焼夷弾。」
「っ、!?」
彼の声が聞こえた瞬間、《M202閃》から一発の弾が射出されていた。
地下放水路に光が灯る。
「っ、眩しい…!」
敵の声が爆音に消え、私は事前に目を閉じていたにも関わらず、目が痛く感じる。
激しい光が消えていき、目の痛さが引いたところで敵の姿を探す。
「――リロード。」
《G17》に入っているマガジンを射出して、持ってきたマガジンを《G17》に差し込む。すぐに、上部のパーツを手前にスライドさせて、弾を装填する。
「――右だ。」
私たちの右側にある柱に《G17》を構えて出てくるのを待っていると、敵は予想より上から飛び出してきた。
翼が直っている。
だけど、さっき持っていた左腕はない。
「左腕を犠牲にしたなら、遠距離武器はない!」
「残念だけど、まだあるのよね」
敵が手にしているのは、さっきまで敵が着けていたヘッドギア。
これも変形をするのかと思っていたら、そうではないらしい。
そのまま左腕の接続部分へ合体させて、それで終わり。
「それだけじゃ、どうしようもないだろっ」
移動弾を使って柱に飛んだ《トール》は、敵に接近戦を試みる。
「――左翼へ。」
「うんっ」
《トール》に当たることなく、空間を突き進んだ《G17》の弾は、タンクのない左翼へ命中し、穴を開けた。
体勢を崩した敵に、《トール》は《M202閃》を叩きつける。
鈍い音を立てて敵は床に叩きつけられ、《トール》は柱を蹴って落下による衝撃を減らして着地した。
「なんだ、妙に手加減されてる感じが…?」
《M202閃》の装填を行いながら、《トール》はそう呟く。
「――まずいな。」
「《トール》、気をつけて。リーダーが良くない感じがするって」
「なに?」
床に落ちた敵は何事もなかったかのように立ち上がり、左腕を《トール》に向けている。
「…え」
「は?」
「アハハッ!」
2ヵ所からの銃声が鳴り響き、一人だけが痛みの悲鳴を上げた。
「っ!」
「《トール》!」
幸いにもその悲鳴は《トール》のものではなかった。《トール》は《M202閃》を盾に使ったらしく、被弾していない。
「アタシはいい!」
《トール》は射撃から身を守ることしかできず、その場から動けない。
(早く倒さないと…!)
「――急いではダメだ。」
(でもっ、そうしないとライが!)
「――君の心が弱くなるほど、君の攻撃が弱くなる。」
(…そうだけど、ライのことのほうが…!)
パン!パン!パン!
連続で撃つ私の弾は、動かない敵にすら当たらない。
「――『 』!」
(…!)
彼がなんと言ったのかは分からなかった。だけど、今一番大切なものが何かを教えてもらった。
パン!パン!
私の弾は正確に敵の武器腕に当たり、敵の攻撃が止む。
私は《SRM+》を手に取り、敵に撃つ。
武器腕の銃口部分を削り取った一撃により、完全に射撃ができなくなる。
「《トール》!」
「終わりだぁぁ!」
《トール》は地面を蹴り、叩き潰すように敵へと飛ぶ。
だが、《トール》は不自然な動きで進路を変え、柱へと激突する。
あの変な脚によって、《トール》は体を掴まれ、柱へと放り投げられたのだ。
「《トール》!」
「――カバーリング。」
「私が助けるんだっ!」
私が敵へ近づくと、敵はその脚を振り回す。
私は飛んでそれを避けつつ、《G17》を一発、顔に撃つ。
だが、それは当たらない。
外したのではなく、顔のフレームによって事前にそらされたから。
「顔も、機械…!」
「そうなの……よね!」
「っ、しまっ」
天井へと飛ばされ、私は天井を蹴り返して床へ落ちる。
それができたのも、《トール》のおまじないのおかげだ。
「まだ、負けてない!」
空へ飛ぼうとした敵の右翼についたタンクへ射撃し、それを爆破させる。
「――残弾7。」
リーダーの声を聞きながら、右翼へ左手で持った《SRM+》で射撃。
これで羽が修復されない。
「――脚へ3つと2つ。」
リーダーの指示があれば、私はそれに従う。
私は《G17》と《SRM+》を同時射撃する。
《SRM+》の弾は正確に二つとも敵の脚を貫く。一つは右脚の太ももあたりで、もう一つは左脚の脛のあたりだ。
《G17》は3発撃ち、脚部と腰部の繋がる部分に二つ、左脚の太ももあたりに一つ弾を残した。
「――残弾4と2。」
敵は地へ落ち、両足と羽から火花を散らす。
「帯電完了!」
「はっ!」
足掻きのつもりか、故障寸前の足でバックステップを行う敵を《トール》は逃がさない。
「全弾、閃光焼夷弾!」
《トール》が振り下ろした《M202閃》が敵と接触した瞬間、地下放水路内は激しい光と音、振動が広がった。
「《トール》っ!」
私の声が地下放水路に響くも、他の声は返ってこない。
だけど、爆炎の中に見えた影は、大きなハンマーを担いだ見知った身長の人。
「あ~、すっきりした!」
そう口にした人物は、間違いなく私の友達だ。
《M202閃》を帰還させ、《トール》は私を抱き上げる。
「ありがとう《オーディン》、アタシがいいとこ持ってかせてもらったよ」
「ううん。いいの。《トール》が嬉しそうだから」
《トール》が抱き寄せているからか、《トール》が付けている機械から声が聞こえてくる。
『大変だ! 地下放水路を利用した水量調整が始まった!』
「な、なに!?」
《トール》は私を下ろし、機械に向かって叫ぶ。
私はどうして《トール》がそんなに焦っているのか分からない。
「え、どういう…?」
「とにかく、アタシについてこい!」
私は《トール》に手を引っ張られる。
だが、《トール》から力が抜けた。
「ああ…っ!! こんなときにっ!!」
《トール》が膝をつき、痛みに悶える。
「《トール》!?」
『早くしないと、巻き込まれる!』
「う、るせぇ…頭に響く…!」
私には何ができるのだろう。
「――力を貸そう。」
「…! 《トール》、《M202閃》を貸して」
「は…!? 何言って…」
「早く!」
《トール》は《M202閃》を召喚し、すぐに床に置く。
「換装できる?」
「何に…?」
「――回復弾と移動弾を。」
「回復弾と移動弾に」
《トール》が驚いた顔をする。
それでも、私は求める。
回復弾が何かを知らないのに。
「……。」
トールが目を閉じると、《M202閃》からコンと小さな音がした。
「ありがとう、《トール》」
「《オーディン》…?」
私は《M202閃》に触れる。
そのまま持ち上げ、《トール》発射口を向ける。
「《オーディン》!?」
「っ、動かないで」
《トール》へ回復弾を放ち、《M202閃》を手放す。
「っ、熱い…!」
《M202閃》は射出したとき、ものすごい熱を持つ。そのため、使える者はとてつもない力と、熱に鈍感でないとならない。
私はリーダーの力を借りて、前者はよかったものの、後者はどうやっても克服できない。
「《オーディン》っ、なんで無理して…!」
「私が倒れても《トール》は私を運べるから。でも、逆は無理」
「そうだけど、自分のことも考えろっ!」
《トール》は私を担いで、《M202閃》の移動弾を使う。
『《トール》、そっちからは無理だ!』
「なんでだ!?」
『川の水を入れているのがそっちだからだよ!』
「逆ってことでいいんだな!」
『それはオッケー! それと、《オーディン》の身体パラメータが最高値を更新し続けてる! 《オーディン》の状態は!?』
「《オーディン》、大丈夫か!」
「大丈夫。なんともない」
《トール》はホッと安心して、先ほどいた場所まで移動弾で移動する。
「くっ、2発分無駄にした…!」
『待って《トール》、《ロキ》の反応が復活した!』
「え、ヤツならここに」
私と《トール》はそこにいるはずの敵を見る。
だけど、そこには姿はない。
なら、どこに…?
「先にそっちの子からやらせてもらうわ」
そう言って現れたのは、私たちが探していた敵。
突然現れた敵に、換装しようとしていた《トール》は避けられず、私も一緒に飛ぶ。
《トール》は衝撃から私を庇って壁に叩きつけられ、私はすぐに立ち上がるものの、《トール》が動かない。
「《トール》…?」
頭から血を流している《トール》は、動いてくれない。
「ぁ、そんな…」
「――よく見ろ。呼吸はある。」
「はっ、なら…」
「――一時的に気絶しているだけだ。すぐに起きる。」
「よかった」
私は《トール》を楽な体勢にして、目の前の敵に視線を戻す。
「さて、第二ラウンドに洒落混みましょう?」
私は少し怒っていた。
友達を二度も怪我させた敵には、少しだけ痛い目を見させないと気が済まないほどには。
「そんなボロボロで、私と戦うの?」
敵はすでにかなりの痛手を負っている。
顔のガードフレームが少し砕け、左腕は鉄の棒と化していて、関節を曲げられない状態だ。
左脚を引きずっていて、右脚も《SRM+》の影響で変形ができない。
それでも、《ロキ》は使える右腕と胴体、腰に追加された左の翼だけで戦う姿勢を見せている。
「ワタシは負けるのが一番嫌いだもの」
「私だって負けられない」
私は《ロキ》から距離を取り、《ロキ》の動きを見る。
(《G17》の残弾は4、《SRM+》の残弾は2。一発も無駄にはできないっ…!)
《ロキ》は腰部の翼をパージして、床に落ちる前にそれを掴む。
変形して出来上がっていたのは薙刀だった。
翼の先端が刃で、持ち手は翼が変形して中から出てきた棒状の滑りやすそうなもの。
《ロキ》は片手だけで薙刀を回し、キャッチすると姿勢を低くする。
「――来るぞ。」
「負けない!」
《ロキ》は薙刀を床に擦らせてから振り上げる。
刃のなくなった薙刀を。
「――《SRM+》、残弾1。」
《ロキ》は倒れた《トール》へ薙刀を投げつけようとする。
「させないっ!」
2発の銃声の直後、金属性の棒が三つに折れる。
元薙刀、いや。元翼は、刃先と三つの棒に分解され、床へ各々落ちた。
「――《G17》、残弾2。」
(あと、3発だけっ)
「くっ、それならっ!」
《ロキ》は必死に私に人の手を伸ばしてくる。
でも、私はもう掴まらない。
一発を左脚に、もう一発を右肩へ放つと、《ロキ》は体勢を崩して倒れ込む。
「もう諦めて。あなたの負け」
「……。」
《ロキ》は左腕を私に伸ばしてくる。
不自然に《ロキ》が微笑み、パージされたそれは光った。
「…!」
「――全弾消費。残弾なし。」
リーダーのその声の後、私は爆炎に包まれていた。
《トール》視点は《オーディン》視点とほぼ同じなので今回はなし!
書いてほしいってコメントがあれば書きます。
次で最終回だよー!




