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White bullet  作者: 七灯
2/3

chapter1 ~teammate~

Scene2/8

 日本国暫定首都、東京。

二度の世界大戦の後、焼け野原になった日本国は多くの国による間接統治が行われ、現在は主権が回復し、一つの国として独立している。

その日本国の暫定首都である東京は、日本国の人口の15パーセントを集約している大都市で、多くのビルに人々が押し込められている。


 例のタワーマンションから3キロほど離れた場所に、私たちの拠点が置かれている。

その拠点には当然、私たちの仲間がいる。


「あらあら、紅白(こうはく)ちゃん。おかえりなさい」

「ただいまです。セシリア」


セシリア。コードネームは《フレイヤ》。リーダーがいなくなってから、組織をまとめる人として行動している女の人。今は日本の大学に留学している。

今日は大きな白い布の服を着て、厨房に立っていた。


「セシリア、今日は、えぷろん? じゃない」

「紅白ちゃん、白衣って知ってる?」

「はくい?」

「理科の実験とかするときに、みんな着けるのよ」

「りか?」

「うーん、なんて言うのかしら。よく失敗するものよ」

「失敗するの?」

「そうなの。だから安全を心がけてこれを着るのよ」

「セシリア、料理失敗するの?」

「あー、料理は失敗しないけど」

「???」


よく分からない。でも、セシリアが物知りなのは分かった。


「あーっ! 紅白ちゃん帰ってきてる!」

「むぎゅ」


私はセシリアのお姉さんのエレノアに抱きつかれて、身動きが取れなくなる。

エレノアのコードネームは《フレイ》。セシリアとは違う大学に行っている。

エレノアは私を初めて「紅白ちゃん」と呼んだ人で、みんなのニックネームを勝手に付けて呼んでいる。

他のメンバーたちはそれを受け入れてる人もいるけれど、ネーミングセンスがないと言われて却下する人もいる。

どちらかというと、却下されるほうが多いと思う。

でも、名前がなかった私に名前を付けてくれた人でもあるから、私は嬉しい。


「こら、お姉ちゃん。調理場ではダメって言ってるでしょ」

「はーい。おかえり、紅白ちゃん」

「わぷ。ただいまです。エレノア」


エレノアは私を離して、セシリアを二度見する。


「セシリアはどうして白衣なの?」

「だって、今日は大学で実験してたから、着替えるのも面倒だったし」

「あ、そうだ。紅白ちゃん、白衣って知ってる?」

「さっきセシリアに聞いた。りか? の実験に使う」

「あちゃ。先越されてたかぁ」


エレノアは残念そうにすると、もう一度私に抱きついてくる。

抱きつくと言うけれど、どちらかというと抱き抱えられている。


「あーん、もう! この小さい体に細い手足、何から何まで最高だよっ!」

「ふむっ、んん」

「……お姉ちゃん?」

「あー! ごめんセシリア! 止めるからその顔はやめてぇ!」

「ふにゅ」


こうして私は二度目の解放を経て、エレノアとセシリアが喧嘩をし始めたのを放置するついでに、戦果報告をするためある部屋に向かう。


「ただいまです。《ノルン》」


拠点に設置された暗室の中で、タブレット端末の光だけが輝いている。

その光の先には、夜の空のように薄暗い髪に、星のように光る部分が点々とある、不思議な髪を持った一人の少女が壁に向き合ってパソコンのキーボードを叩いている。

彼女こそ、さっき私と通信していた《ノルン》。


「おかえり紅白ちゃん。どうしたの?」


《ノルン》は回転できる椅子に座って、椅子ごと回転して私を見る。


「データはどう?」


《ノルン》は再びパソコンに向き合い、何も表示されていない壁を見ながら呟く。


「うーん、ずっと移動してるみたいで、どこが拠点なのかはまだ分からない。でも、《トール》がいつでも動けるように準備してくれてるから、紅白ちゃんは休んでて大丈夫だよ」

「ありがとう《ノルン》」


《ノルン》には、何らかのモニターが見えているらしく、そこにいろいろな情報が出力されているらしい。

私は見たことがないから、本当に《ノルン》が見れているのかは分からない。


「それと、今は作戦が終わってるんだから、コードネームで呼ばなくてもいいよ」

「うん。じゃあ、クロノ。次の作戦は何?」


《ノルン》というコードネーム以外にも、クロノという名前がある。


「紅白ちゃん、今は休むのが作戦だよ」

「でも、クロノは作戦が終わったって……」

「紅白ちゃんの疲労が溜まって、本領発揮できなかったらいけないでしょ?」

「……そうかも」

「ボクは今こそ休むべきだと思うよ」

「分かった。休む」


クロノは私に微笑みかけると、次の瞬間には何かが起きたらしく、ハッとパソコンがある方へ向き直す。


「位置情報が止まった…? 《トール》、座標データを送る」

『りょーかい。データ更新はそっちに任せるからね?』

「はい。任せてください」


緊迫した様子でやり取りをする二人に邪魔にならないよう、私は部屋を出た。

 その頃、《トール》は――


「本当にあのスカイツリーにいるのか?」

『はい。《オーディン》の《G17》の弾の位置情報はそこを示しています』

「それなら、アタシの出番だな」

『えっ、待って! 《不完全射撃武装(ホワイトバレット)》の人前での使用は――』


東京の夜を七色に輝かせる大きな橋の主塔の上に大きな光の玉が灯る。

雷のように天から輝く玉が一つ、そこで輝いている。

人間とほぼ同じサイズのハンマー、《M202(セン)》を持ち、彼女は『発射口』を調整する。


「ここからはアタシが主役だ」


雷鳴と共に放たれたその円柱形の弾は、東京の空に通過跡の残像を残して、狙った位置に正確に着弾した。


建物に損傷が入ることはなく、ただそこには位置情報を発信し続けている彼女と、まるでテレポートをした《トール》が存在するだけ。


「よぉ、アンタが黒だな?」

「あら。お客さんかしら」

「ほざけ。スカイツリーの展望台の上に来るヤツはお客さんじゃねぇだろ」

「フフフ。確かにね」


左腕のない彼女を《トール》はじっと観察する。


「ワタシはただおかしくなる世界を見たいだけなのよ」

「なら、そんな世界は来ないだろうな」


《トール》が横振りしたハンマーは、正確に彼女の胴体を押し出し、夜空へと彼女を飛ばす。


(抵抗する気がないのか。なら、ここで殺す)


《トール》がスカイツリーを踏み切り、彼女へと飛ぶ。


「でぇぇりゃぁぁ!!」


《トール》のハンマーが彼女へと振り下ろされたその瞬間、彼女もまた、行動を起こしていた。


「またね、馬鹿力のおばさん」


《トール》が振り下ろして叩いたものは、彼女の脚。しかし、その脚は彼女へと繋がっていない。


東京の空に大きな爆発が起きた。

爆音と爆風は空間に飲み込まれ、光だけがそこに残った。


自由落下する《トール》はハンマーの打ち付ける部分の蓋を開け、地上へと狙いを定める。

再び円柱形の弾が放たれると、もう、空に《トール》の姿はなかった。

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