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サ終済みソシャゲアイドルたちは、もうライブなんてしたくない!  作者: 空清水紗織
第01章:もうライブなんてしたくない!
8/10

07話:何でもできると言ったのは嘘だ

「ぜぇ……はぁ……うぇぇぇっ」

「蒔さんがここまで体力がないとは知りませんでした……何でもできるマネージャーというのは一体……」

「ま……まだまだ……動け、ます……やると決めた……のですっ……」

「あわわわ、あかりさんの見た目で、しかもそんな地を這うヒラメみたいな姿で言われても説得力ないですよ……! と、とりあえずお水飲みましょう!」


 おかしいですね、私は何でもできるマネージャー……。体力にだって自信はあったのですが……。

ゴロンと情けなく天を仰ぎ、つい数時間前を振り返ります。


 ――円陣で気合を入れたあと、澪さんと恋詠さんには先に練習を始めてもらいました。撮影用のライブ会場の設営もマネージャーの仕事なので、私は先にそれを済ませてから合流予定です。と言っても設営は手慣れているので、そこまで時間はかかりません。天候に左右されないドーム型の会場を作れるなんて、まさに何でもできるマネージャーです。


 久しぶりの設営でしたが想定よりも早く終わったので、もう一度だけあかりの家に向かいました。……が、ドアを開けようにも、チェーンがかかっていて開きません。情緒不安定になると部屋に閉じこもってしまうアイドルも少なくないので、万が一のためにチェーンカッターも持ち歩いていますが、今は北風よりも太陽の方が良いでしょう。


 すーっと大きく息を吸い込み、


「あかりーーー! この間は正論ばかり言ってごめんなさい! ライブの話ですが、一般人に戻ったあかりの代わりに私が出ることにしました! 振りも歌も完璧に覚えてるのでご心配せず! センターは私に任せてください! 自分自身のことは嫌いになっても、『Re-Boot Glitter』のことは好きでい続けてくださーーーい!!!」


 3軒隣にまで聞こえたであろう声量で叫びました。ここまで言えばあかりも心置きなく休めることでしょう。


 学園に戻ると、2人は設営済みのステージで練習をしていました。


「あ、蒔さん! おかえりなさい! ステージ設営ありがとうございます!」

「おかえりなさい。どこかに行かれてたのですか?」

「ええ、ちょっと自宅近くまで」


 それだけで恋詠さんは何かを察したようで、深く追究しようとはしませんでした。


「それなら良いわ。さあ、時間も限られてますし、蒔さんを入れた3人のフォーメーションで練習しましょう」

「はい、よろしくお願いします!」


 ――そして私はあかりの姿で練習に参加し、ヒラメのようにステージにへばりつくことになったのでした。あかりと同じ素体のはずなのに、なぜこんなにも体力が保たないのでしょう……。


「体力が続いていないだけで、蒔さん単体で見たときの1カットごとのクオリティ自体は問題ないんですよねえ……。私たちとの連携も、数を重ねれば良いものになりそうだけど……」

「あ、あの! スタミナの問題なのであれば、Aメロ、Bメロ、サビとかで区切って撮影して、それを編集で繋ぎ合わせるのはどうですか? 編集の時間はかかっちゃいますが、通しでやるよりは……」

「確かに、その手法ならスタミナ問題は解消できそうね。蒔さん、編集はお願いしても良いかしら?」

「……編集……なら…………お任せ……くださいっ……」

「ありがとうございます。蒔さんの体力と編集のことを考えると、使える時間は多くありませんね。先ほどの練習で気になった箇所を言うのでメモできますか?」

「ぜぇ……、はい、お願い……します……」

「まずイントロ5小節目の3拍目、あそこのリズムに出遅れちゃってます。逆にそのあとのAメロは走ってますね。4つ打ちだから気分上がるのは分かりますが、ノるのはプレイヤーさんたちで私たちではないことを気に留めてください」

「同じくAメロなんですけど、2回し目の腕を上に伸ばすときの角度は少し抑えめにしないと、掌と顔が被ってもったいないです! 逆に、横に広げるときはもっとグーっと大きく広げてください! センターですし、こぢんまりとした動きだと緊張してるように見えちゃうんです」


 あ、あれ……、クオリティ自体は問題ないと言ってくれてましたが、思ったよりもできてないんですね、私……。いえ、落ち込んでいる場合ではありません。もらった指摘は頭に叩き込みましょう。それにしても、自分たちも踊っている中で私のミスにこんなにも気付けるなんて、やっぱり本物のアイドルは凄いです。


「さあ、休んでる暇はないですよ。まずはAメロまで撮り終えましょう」

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