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サ終済みソシャゲアイドルたちは、もうライブなんてしたくない!  作者: 空清水紗織
第03章:サ終済みソシャゲアイドルたちは、もうゲーム運営なんてしたくない!
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第03章_10話:離職は風のように

「では次。アプリセクション、江波さんから報告お願いします」

「はいはい。えー、先日滞りなくサービス再開できまして、お陰様で売上も上々です。もう数日後には閉じますが、これで半年ぐらいはサーバー代の心配もしないで良さそうです、関係各所ご協力いただきありがとうございました~」

「いやあ、やって良かったですね、江波さん」

「ははは、シナリオもイラストも良いものを上げていただきましたから。それに実装関連はこの矢作が一人で全部やってくれたんで、人件費もだいぶ抑えられまして」

「一騎当千ですね、頼もしい!」

「あ、はぁ……」


 サービス再開後のIP戦略会議に、私、あかり、マコさんは侵入していました。売上が好調でホクホクの江波Pとエグゼクティブプロデューサー。そこには矢作さんも連れてこられていて、何とも肩身が狭そうです。


「何でこう、偉い人ってのは品が無いのかしらね。一人に任せたから人件費が浮きましたって、美談でも何でもないでしょうに」

「部下の褒め方で、上司としての器みたいのが分かるよね……。矢作さんも全然嬉しそうじゃないし」


 けちょんけちょんに言われるプロデューサー陣。今後こういう会議は、副音声で外野からのコメントが聞こえると退屈しないですみますね。


「それで江波さん、今後の展開はどうしましょう?」

「そうですねえ、期間限定っていう特別感があってのものでしたから、すぐに何かするのは難しそうですが、弊社としても次の弾を仕込むのはやぶさかではないですね」

「実はですね、新しいユニットを出そうとか、アパレルさんとコラボしようとか、いくつか構想を練ってまして」

「おお、良いですねえ。アパレルさんだと新衣装のカードイラストも出せますし、アプリの位置情報使った実店舗コラボ施策も考えられますね」

「え、江波さん、位置情報はデバッグがキツくて……」

「もし資料などまとまっていれば共有いただけると。あとは矢作が施策に落とし込みますので」

「……は、え?」

「分かりました、資料はあとで手配させます。では皆さん、また次回お願いします」


 そうして、矢作さんを置き去りにして会議は終了。江波さんはと言うと、文句を言われる前にそそくさと会議室を出てしまったようです。


「あらら、矢作さんも大変ねえ」

「矢作さんもだけど、大変なのは……」


 あかりの言葉に被せるように、会議室を最後に出た矢作さんがドアを乱暴に閉めました。


「あーもう、無理だよ! 一人でできる量じゃないって! ……転職かなあ」


「え、転職?」

「まあ、矢作さんならどこでもやっていけそうだけど」


 こういう風にして、優秀な人は流出していくんですね……。


「エージェントにはもう話してあるし、職務経歴書を少し更新するぐらいかな……。引き継ぎ資料はもういいや。何かあっても、AIに投げりゃどうにかしてくれるでしょ」


「「……え?」」

「あーやっぱり、こうなったか……」


 思わず顔を見合わせる私とマコさん。そして苦笑いを浮かべるあかり。


「や、矢作さん、あれはAIじゃなくて……」

「向こうには聞こえてないよ、マコ」


「うわ、早速アパレルコラボの資料が来た。これをそのままAIとのチャットに転送しとこ」


 ――ピコン。


 この先の凶兆を知らせるかのような音を立てて震える私のスマホ。


「あはは、まあ、その、無理はしないでね……」


 投げやりな励ましをするあかり。


「「……も、もう」」


 そして私とマコさんは、現実世界にまで響くような声で叫ぶのでした。


「「もうゲーム運営なんてしたくなーーーい!」」


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