第03章_05話:THE LIE COMBINATION
「はぁ~……ったく、どんだけタスクやっても減らねえよ……」
すっかり電気が消えたオフィスのフロア。矢作さんのデスクまわりのみが、モニターの明かりで光っていました。堆く積まれたエナジードリンクの缶が惨状を物語っていますね……。
「だいたい仕様の策定なんて、ほとんどやったことないんだからさあ。無茶言わないでほし……ん、何の通知だ?」
『ログボのマスタ設定でお困りですか』
「え、なんだこのAIチャット。……あー、江波さんが追加してたのかな、AI使えとか言ってたし。気付かなかったな……」
変に不審がられることなく、コンタクトに成功。
『ログボ開催期間と、どれくらい豪華にしたいか伝えていただければ、最高のログインボーナスにしますよ』
「あーはいはい。AIっていつも最高だの、最適だの言ってくるよな。そのくせ、後出しでこういう方向性でもご提案しましょうかとか言って、じゃあさっきの最高の案は何だったんだよって……ま、いいや。折角だし試してみるか」
なるほど、追加提案などしたら怒るタイプですね、気を付けましょう……。
「えーっと、久々にサービス再開したソシャゲで、7日間のログボをやりたいです。7日間それぞれで配るアイテムと、その個数を、お祝い感強めで策定してほしいです……っと」
『それならば、このようなログインボーナスはいかがでしょうか。
1日目:コイン×100,000
2日目:最高レア確定ガチャチケット×1
3日目:イベントスタミナ回復薬×30
4日目:最高レア確定ガチャチケット×1
5日目:育成素材×1,000
6日目:最高レア確定ガチャチケット×1
7日目:ジェム×30,000
PRを打っていれば、初日はまずログインしてくれます。それ以降は**1日おきに最高レアが1枚入手できるという豪華感を出し、ログインを継続**してもらいます。合間でスタミナや育成素材を配布し、最後に10連が10回引けるだけのジェムをご褒美として配置しました』
「ふーん、変に太字にしてくるのは癪だけど、意外と良いじゃん……。イベントやることまでは伝えてないのに、そこまで汲み取ってくれるのか、優秀だな……」
――あっ。こちらが勝手に取得した情報込みで提案してしまいました……。良いように勘違いしてくれていますが、今後気を付けましょう……。
「じゃあ、イベントで使う楽曲を3曲選んでくれる?」
イベントの前情報も、楽曲リストもなしにこんなプロンプトを投げてくる……、やはり使い慣れてはいないようですね。
『分かりました。どんなイベントなのか教えていただければ、より良い提案ができます。また、使って良い楽曲のリストはありますか? ご共有いただければ、そこからピックアップできますよ』
「あー、こうやって、いちいち説明しなきゃいけないのがダルいんだよなあ。もういいや、自分でやろ」
そう言うと、また画面を見ながら黙々と作業を続ける矢作さん。確かにコンテキストを理解してもらうのは面倒ですからね。今回はログボがまともになっただけでも良しとしましょう。あまり複雑な依頼をされても、すぐには回答できないですし。何かあったとき、こちらから提案可能なのが分かったことも収穫です。
そうしてこの日以降、見過ごせない仕様があった際はマコさんが代案を考え、私がAIになりすまして修正するという、地味なゴーストライター業務を続けていました。これが思いのほか機能して、サービス再開への準備は着々と進んで……。
――と、上手くいけば良かったのですが、なかなかそういうわけにもいかず、いつものように難題が降ってきたのです。




