第03章_04話:ゴキゲンLogin Bonus
『――あああストア申請もしなきゃじゃんかぁ……』
「……以上です」
昨日の会議の録音を流し終えると、ミーティングルームは何とも言えない雰囲気に包まれました。
「んーまあ、なんというか……江波Pってそういう人だよねっていう……」
呆れたような、諦めたような顔で呟くあかり。そして、その隣から
「なるほどねえ、それでアタシを呼んだってわけね……」
と、嘆息しながら自分の置かれた状況を察するアイドルが一人。
「これは流石に見守っているだけでは済まない気がしたので、ゲームに詳しいマコさんにも知っていただこうかと」
「はーーー、まったく。サ終したのに引っ掻き回してくれるわね、このタイトルは」
そう言いながら頭を抱えているのは、ゲームオタクでありゲーム運営にも詳しいアイドル、鳥海 マコさん。一番好きなジャンルが美少女ゲームなのは、あまりシナリオで触れられていない悲しき設定です。
「こういうPって大体が若い頃に無茶ぶりされて、それでも運良く耐えられた成功バイアスがあるから厄介なのよねえ。そのノリでマネジメントしちゃうからチームは疲弊するんだけど、これまた厄介なのが、優秀なディレクターが下につくことが多いから、崩壊するまでには至らず会社側も気付けないのよ。ま、今回は矢作さん一人体制だから、マネジメントもクソもないんだけど……」
そう言いながら私の方を見て、
「で、アタシは矢作さんのサポートをすれば良いってことで合ってる?」
「理解が早くて助かります……。矢作さんの動向は常にチェックしておくので」
「マコはいっつもこういう役回りだねえ」
そんなあかりの同情にも淡々と返すマコさん。
「しょうがないわよ。こういう設定のアイドルとして生まれ……ん、時間の進み変わった?」
先程まで明るかった窓の外が急に暗くなり、そして再び明るくなりました。
「一日経ちましたね。ということは……」
「あー、矢作さん、ログボのデバッグ始めたな」
サービス再開を祝した特別ログボを予定しており、それのデバッグ作業をしているようです。
「ねえ蒔さん、プレイヤーさんに配るアイテムって、アタシたちも確認できるんだっけ?」
「ええ、あそこのBOXに届くようになっています」
「はいはーい。えーっと……初日は<コイン×100,000 >ね。まあ、悪くないんじゃない?」
「初手でゲーム内通貨ばら撒くのは王道だよね」
「特別感は薄いけど、物量で見栄え良くできるのがアド」
初日のアイテムで軽く盛り上がるマコさんとあかり。そして再び日付が変わります。
「お、二日目になった」
「今日のアイテムは……は?」
「え、<ジェム×100,000>? 随分とまあゴキゲンなことで……」
「さっきのコインの枚数コピペして直し忘れてるよね」
「しかも2日目からジェムかぁ……」
更に変わる日付。
「三日目は<育成素材×300>か……、うーん、ちょっと豪華感が減ったな……」
「というか、設計が下手……? イベント走ってる人はそろそろスタミナ欲しくなる頃合いだし、回復薬の方が良くない?」
「あ、四日目になった」
「<最高レア確定ガチャチケット×1>って、いや、うーん、なんかこれじゃない感……」
「せめて2日目のジェムの代わりにして、ジェムは最後の目玉に持ってくるとかした方がいいわねえ……」
「ねえ蒔ちゃん、矢作さんってこういうの苦手?」
「苦手というか、あまり経験がないというのが正しいかなと……」
三人して顔を見合わせて、深くため息を吐きます。
「これは荒療治が必要ね……。蒔さん、アタシが代わりに設計したとして、それを矢作さんに伝える術はある?」
「そうですね……。うーん……マスタを勝手に書き換えても良いですが、それだとバレた時に不審がられますよね……」
「あっ、江波さんの指示で何かしらAIは使うはずじゃない? 蒔ちゃんがそのAIになりすまして、良いように導いてあげるってのは?」
「良い案出すじゃない、あかり! どう蒔さん、実現できる?」
「なるほど……チャットツールのAIボットになりすます……。矢作さん、AI嫌いではありますが、他に案も思い付かないですし、やるしかないですね。こちらから『お悩みですか』というように連絡すれば、多少は相談のハードルも下がると思います」
「よーし、それでいこう! アタシの方でログボ設計済ませちゃうから、コンタクトはお願いね!」




