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サ終済みソシャゲアイドルたちは、もうライブなんてしたくない!  作者: 空清水紗織
第03章:サ終済みソシャゲアイドルたちは、もうゲーム運営なんてしたくない!
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第03章_03話:ちょっとイカれた PRODUCER

「あ、江波さん、お疲れ様です」

「ごめんごめん、矢作さん、遅くなっちゃった」


 先日のIP戦略会議とは異なり、こちらは随分と質素な会議室です。机は小さく、椅子は4つのみ。モニター等はなく、何度クリーナーをかけても消えないインクの跡が残るホワイトボードが1枚。調度品一つとっても、戦略会議を行っていたオフィスとはレベルが違うことが分かってしまい、これが格差社会かと目を背けたくなってしまいます。


「『きらミネ』サービス再開の件でしたよね? よく版元さんOK出しましたね」

「そりゃまあ先方もIP展開の一つにゲームがないのは悩んでたし、新作作ってる空気もなさそうだったからね~」

「それで、今日はリリース時期とかチーム構成とか話す感じです?」

「あーーー、うん、えーっとね、リリースは7月」

「え……もうあと2ヶ月じゃないですか!?」

「そう、だから急がないと。で、チームなんだけど、矢作さん一人で回せないかな?」

「は……はぁ!? え、ちょっと待ってください、俺クライアントエンジニアっすよ!?」

「でもプランナー業務もやってくれてたじゃない、1年間。あれ凄く助かって、会社からの評価も良かったよ~」

「いや、あれはもうプランナーさんがほとんど仕様とか発注書とか作り切ってくれてたからで……」

「ウチ今人が足りなくて、どこのPJも人出してくれないのよ。期間限定PJっていうのも、会社的には人を追加しづらいっぽくてさ。補充の交渉は続けるから、それまでは何とか!」

「何とかって……」


 なんとまあ……。そもそもしてもいない交渉を続けるとまで言うなんて。絵に描いたようなプロデューサー仕草に感嘆してしまいそうになりますが、これは私たちにとっても笑い事ではありません。


「今回リリースするのって、ドラマとガチャ付きのイベントですよね? 俺、ドラマパートのスクリプト演出なんて無理っすよ?」

「でもあれマスタでやってんでしょ? AI使えば何とかなるって! シナリオとイラストは版元お抱えの外注が特急でやってくれるっていうし、業務なんてほとんど発生しないと思うなぁ」

「AIで何でもできるなんて思わないでください。そもそも俺AI嫌いでほとんど使ってないですし……」

「あーごめん! もう次があって! さっき関係者用のチャットに追加しておいたから、あとよろしく!」

「え、ちょ、江波さん!?」


 あからさまに逃げた江波さんと、受け止めきれていない矢作さん。


「ざっけんなよマジで……。え、どうすんだこれ……」


 ほんと、どうするんでしょうね……。


「うわ、ほんとだ、チャット追加されてる……。は、シナリオとイラストの期日? 知るかよそんなの、進行管理に聞けよ! ……はぁ、いねえのか、俺がやるのか……」


 シナリオ合わせのガチャの場合、理想としてはシナリオが全てあがってからイラスト発注したいところですが、大抵の場合そんな悠長なことはしていられません。プロットなど、ある程度シナリオの方向性が見えた段階で絵映えしそうなシーンを選定し、それを元に発注しないと間に合わないのです。こういった各種工程を熟知したうえで、それぞれのセクションの期日管理をするのが進行管理という役職なのですが……。


「誰が何やってたとか、現場でどういう仕事がされてたかとか、マジで知らねーんだよな、あの人。いや7月リリースって、どーすんだこれ。どうスケジュール切ればいいんだ? てかシナリオ確認も、イラスト発注書作成も俺? あ、てことはサービス再開のお知らせ作成も? うっわ監修出すのめんどくせえ……。あの会社、レスポンス遅いんだよなあ。って、あああストア申請の準備もしなきゃじゃんかぁ……」


 ぶつぶつと今後のタスクを言いながら、虚ろな目で天井を見上げる矢作さん。それを見ていた私も、またしばらくはのんびりとした空気は味わえないのだろうと静かに諦めるのでした……。

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