第03章_02話:もう一度売りたいエモーション!
「サービス再開ぃぃぃ!?」
学園のミーティングルームに、あかりの驚きの声が響きます。
「はい。ただ期間限定らしく、その期間が終わったら長期メンテ扱いにするようです」
「は~、なるほど。メモリアルムービーの反応見て気を良くしたのね、あのP」
「お金の匂いには敏感ですからね、江波Pらしいやり口です」
「にしても、ついでとは言えサーバーが落とされなかった理由も分かったし、戦略会議に忍び込めてほんと良かったね。セキュリティ破るの大変だったでしょ?」
「かれこれ半年以上かかりましたからね……、けどもう現実世界の動きは筒抜けです」
「さっすが、何でもできるマネージャー」
あかりがニヤっと笑って拳を突き出してきます。コツンと拳をぶつけ返すと、真面目な顔に戻り、
「期間限定っていっても、再開するからには何かしらイベントやるんでしょ? どういう企画案になってるの?」
「昨年雑誌の人気投票あわせで作成された曲があるのですが、そのカップリングを流用させてもらうみたいです」
「新規楽曲がないのは楽だね。MVは?」
「MVもなし。今回のメインは楽曲モチーフのイベントシナリオですね。Live2Dのドラマパートと、シナリオ合わせのイラストカードが出るガチャを作成するようです」
「ふーん。じゃあ私たちの出番はないってこと?」
「そうですね。シナリオとイラストはIPお抱えのクリエイターが作ってくださるようですし、その後の工程はマスタで完結しますから」
「やった! 前みたいな無茶な要求もないし、短期間だけどゲームは復活できるしで、割と良いんじゃない?」
「ガチャが売れれば、ですけどね」
「ま、売れなかったらその時はその時で、また江波Pがアレコレ理由付けてサーバー維持してくれるでしょ」
すっかり安心した様子で、ふぁ~と大きく欠伸をするあかり。窓からは初夏の陽光が入り込み、それによって普段あまり見ない陰影がついていました。いつもと違うシチュエーションで見るあかりに、思わずドキッとしてしまいます。どれだけ腐っても、やはり彼女はアイドルなのだと気付かされます。
「MV撮ったり、人気投票やったり、<1/10倍速>で壊れた家の修理したり……何だかんだここ最近忙しかったからねえ。今日は家帰ってのんびりして良いよね?」
「ええ、壊れた箇所の修復もだいぶ済んでますし」
「よし! 蒔ちゃんはこのあとどーすんの?」
「江波Pと矢作さんが今後の流れを話し合うようなので、その会議を覗こうかと」
「やはぎ……あー、矢作さん、クライアントエンジニアの?」
「サービス終了1年前からは、人員削減の煽りを受けてプランナーも兼任してた人です」
「うわぁ、可哀想。全然別の職種じゃない……。今回も矢作さんはプランナー兼任するのかな?」
「おそらく。他の人員も気になるので、進捗状況とあわせて情報収集してきます」
「はーい、ありがとー。じゃ、私は帰るね、またね~」
廊下に出るあかりを見送って、私も小さく欠伸をします。あかりの言う通り、しばらくは慌ただしい生活だったので、今日は久しぶりにのんびりできそうだなと思っていました。
あの会議を覗くまでは――。




