第02章_08話:夏色えがおで1,2,ナーフ!
「いよいよ最終戦の第三部! その前に、ここまでの合計得票数を確認しておこう~!」
1位:巒 160票
2位:あかり 150票
3位:莉里 90票
「巒さんは第一部のクイズで作ったリードが大きかったですね~。でも先ほどの握手会で、あかりさんが追い上げました!」
「リリーはちょっと離されてるけど、最後の逆転に期待だ~!」
人気投票企画もようやく最終戦。最後までダレることなく、椎那さんと澪さんが会場を盛り上げてくれています。
「第三部で競うのはプロポーション! 知力やファンサも大事だけど、やっぱりアイドルは見た目の美しさだって大事にしたいよね!」
「食事抜いたり、運動したり、日々のお肌のケアにも気を遣ったり。ここにいる皆さんは血の滲むような努力をしてきてますよね! 現実世界だと、こういう苦労を知りもしない外野が、ああだこうだと的外れなことを言ってきますが、そんなものに萎縮することなく! 堂々と! 互いの研鑽を認め! そして競い合いましょう! この世界は閉じてるけど、その分自由だぁ~!」
少し思想強めの澪さんの煽りに、会場の熱気はますます高まります。
「プロポーションを競うなら当然水着っしょ! ってことで、出場者の三人はこのあと一人ずつ、水着姿で登場してもらうよ!」
「順番は現時点での得票数順なので、巒さん、あかりさん、莉里さんの順となります!」
「どんな水着で出てくるのか、楽しみだね~!」
会場はすっかり夏仕様にアレンジされていて、ステージを彩るトロピカルフラワーは水着と良く合うことでしょう。スチールギターやウクレレの優しく軽快なBGMが、写真集に良く使われる南国リゾートを思い起こさせます。それ自体は別に良いのですが……
「……なぜ私も水着なのでしょうか……。というか椎那さんも澪さんもどうして水着に……」
「いや~、ねー。ウチらだってそれなりに身体は磨いてっし?」
「こういうのは雰囲気ですから!」
「私たちがステージの上にいるのも……?」
「せっかく水着になったんだし、放送席に籠ってるのはもったいないじゃん? だから最後はステージに出張だよ! こーゆーのは見せてかなきゃ! ね、みんなだって見たいよね?」
「「「うおおおぉぉぉ!」」」
「ほら、ね?」
「そんな得意げな顔されましても……。というか中継カメラの操作、すぐ真後ろでやってるんですね。こんなにステージにも裏方にも近い場所だと、色々危ないのでは……」
「お! トップバッターの準備が整ったって!」
聞いちゃくれませんね……。
「それじゃ登場してもらお~! ランラ~ン!」
勢いよく噴き出す煙幕の裏から飛び出した巒さんは、お嬢様らしく気品は保ちつつも、出すとこはしっかり出していました。『きらミネ』の中でもトップクラスのスタイル、それを十分に活かしています。
「わぁお! 結構攻めたデザインの水着だね~!」
「リリース3年目の夏イベの水着をアレンジしてますね。手に持った白いパラソルが、良い具合に胸元に影を落としていてセクシーです~! それに加えて、レイヤードビキニのちょっとアブナイ雰囲気とシアーブラウスの清楚感が、届きそうで手が届かない夏のお嬢様を演出!」
わざとらしく腰を揺らしながらステージを左右に往復して注目を集めると、今度はセンターに戻ってパラソルを畳み、そのパラソルをムギュッと谷間に挟んでみせます。
「「「おおおおおおおお!!!!!」」」
大型スクリーンに映し出された双丘と、その狭間に聳える白いシャフト。観客の目はくぎ付けです。巒さんは、そのシャフトを器用に上下に……。
「あーーーっと! これ以上はさすがにエッチすぎるのでここまで!」
「もぅ、ここからが本番でしたのに……。ま、いいですわ。お集まりの皆様、ご覧いただき感謝いたしますわ~!」
大歓声を浴びて、巒さんはステージ端の待機用椅子に座ります。……いや、これプロポーションを競うものでしたよね? 色仕掛け大会じゃないですよね?
「いやぁ、一人目から凄かったね~」
「メンバーシップ限定でも良いので続きが欲しいですね!」
「そして二人目はあかりんだよ~! どうぞ~!」
――シャラララ~ン
……これは、ガチャ演出のSE?
大型スクリーンにも、ゲームで10連を引いた際の画面が表示されています。9枚目まではすべてノーマル。最後だけ虹色に輝いていて最高レア確定ですが……。
『あはは! もう、水かけないでよ~。えーい!』
あかりの獲得ボイスが流れると、スクリーンにはステージ上の実物のあかりと、アイドル獲得時にゲーム画面に表示されるカットインが合成された映像が流れます。
「おおおっと! これはあの……!」
「鯖落ち水着だぁ~!」
元から布面積が少ない水着なことに加えて、アイドル名を表示するカットインがトップスに、アイドルのサインのカットインがボトムスに被り、見ようによっては全裸に錯覚する、あの水着です……!
「「「うわっぁぁあああぁああぁあぁぁ!!!!」」」
割れんばかりの歓声で、会場全体が揺れています。ステージからは水着のイラストにあわせて水飛沫も飛んでおり、それを浴びようとお客さんが前へ前へと押しかけていてパニック状態です……!
そんなお客さんロボを一層煽るかのように、あかりは、
「も、もう。そんな風に見つめられたら恥ずかしいです……!」
その純情派アピールで更に大盛り上がり。一方、ステージ端に座っていた巒さんは猛抗議をしています。
「ちょっと! その水着はナーフされたはずでしょ! 何でまだ持ってますの!?」
「へっへ~ん。あの運営チームが、こんな使えるデータを消すはずないでしょ。毎晩こっそり見られてたこともあったわね……。あぁ、私って罪な女……」
「そもそもプロポーションで競うと言っているのに、演出ありきの登場の仕方はいかがなものなんでしょう?」
「は~? そんなこと言ったら、あんなイヤらしく日傘を胸に挟むのだってどうかと思いますけど~?」
「あれは挟めるサイズであることのアピールなのでプロポーションの範囲内ですわ。ま、持たざる者にはできないでしょうけど」
「あぁん? 別に小さくないですけど? 挟もうと思えば余裕で挟めるんですけど~?」
「はーいはい、二人ともこの時間の喧嘩はダメだよ~。それにしても、とんでもないアピール合戦になってきたね、みおっち?」
「水着はソシャゲの中でも一、二を争う人気商材ですからね。いかにストアの規制をくぐって売るか、チキンレース的な戦略が求められるわけですが、お二人の争いを見て久々にそれを思い出しました!」
「さあそして、いよいよ最後の参加者! リリーの準備も整ったみたいだよ! リリー、お願いします!」




