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サ終済みソシャゲアイドルたちは、もうライブなんてしたくない!  作者: 空清水紗織
第02章:サ終済みソシャゲアイドルたちは、もう人気投票なんてしたくない!
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第02章_05話:時間切れで引き剥がすような別れ方

 ファンサを競う第二部の会場はイベントホールです。

 既に三つのレーンが用意され、各レーンの端では、あかりたちが少し落ち着かない様子で待機しています。そしてそこから更に、ファンロボットたちでできた長蛇の列が伸びていました。


「会場の準備も整ったみたいだから、第二部にいくよ~! 第二部ではファンサで競ってもらいま~す!」

「もう気付いてると思いますが、この会場は握手会用の設営になっています。三人それぞれのブースには同じだけのファンロボットが並んでいて、制限時間内にできるだけたくさんの方と握手してもらいます!」

「でもでも、ただ流れ作業で握手したんじゃファンのみんなも悲しいよね? それじゃ参加権の搾取会になっちゃうよね?」

「はい! なので、人数だけじゃなくて、どれだけ愛想よくコミュニケーション取れたかも評価の基準になります!」

「たくさんのファンに、一人一人の特別な想い出を残してあげる、それがファンサ!」


「あ、あのー、放送席聞こえますー?」

「はいはい、リリー。どしたの~?」

「いや、どしたのっていうか、莉里たち握手会はやったことないっていうか、現実世界では中の人がやってくれてたから……」

「莉里さん、そういう初挑戦も含めての人気投票ですよ。それじゃ頑張ってくださいね~」

「あ、ちょ! 澪! また勝手にマイク切っ……」


 ブツッという音と共に、スクリーンは中継から解説画面に切り替わりました。澪さん、案外鬼ですね。


「それじゃ第二部も~」

「「「スタート~!」」」


 莉里さんの仰るとおり、この世界のアイドルたちは握手会の経験がありません。ですが、小学生が悪者に占拠された学校を取り戻すことを妄想するように、アイドルであれば一回は握手会での振る舞いを妄想するものです。イマジナリー握手会の成果をここで見せてくれれば良いのです。

 さて、どうなるでしょうか……。


「カメラはあかりんのレーンを映してま~す! これは結構良いんじゃない?」

「しっかり握手しながら、相手の目を見てお話できてますね」


「あ、あかりん、ずっと応援してます……!」

「いつもありがと~! また来てね!」

「この服、あかりんがオススメしてたから買ってみたんだ!」

「わぁ~嬉しい! 似合ってるよ~!」


 あかりはきっと上手くこなすだろうと思っていましたが、私の予想以上にできてますね。お話をするときも、ほんの少し膝をかがめて下から覗き込むように顔を近付けたり、別れ際ギリギリまで手を握ってあげてたりと、見ている私も胸が高鳴ります。幼い頃からの脳内シミュレーション量は誰にも負けていませんね。常にこうあってほしいと願うばかりです。


「続いてはリリーのレーン! ……ん~、ちょっと苦戦してるかな?」

「あ~、引き剥がし用お時間ロボとのタイミングが合ってなさそうですね」


「莉里ちゃん、会えて嬉しい~!」

「莉里も~! あ、そのネックレス可愛いね。どこで買ったの?」

「あ、えーっと」

「オ時間デース」

「あぁ~~~……」

「次ノ方ドウゾ~」

「あ、り、りりちゃん。わ、わたし、かいがいから……」

「え、海外? 凄い! どこから?」

「あ、えーと、どこ……」

「オ時間デース」


 運営側から見れば、握手会で大事なのはタイムマネジメント。富も名声も不均衡が当たり前なこの世の中で、アイドルと握手できる秒数だけは万人に等しく与えられるものなのです。それはつまり、一定時間を超えたら締め出されてしまうことにもなりますが、悲しきかな、これこそ世界の摂理なのです。

 その限られた秒数の中で、いかに時間内に抑えながらコミュニケーションが取れるか。ファン任せにせず自分から話題を振ったり、緊張してたらほぐしてあげたり。これが握手会の難しさでもあり、ファンサ力の見せどころでもあるわけです。

 莉里さんは、相手から引き出そうとする姿勢は良いのですが、短い時間でやるには難しいことに挑戦してしまってますね。途中で気付けると良いのですが……。


「頑張ってねリリー! さて、カメラはランランに切り替わったけど、これは……?」


「巒さん、いつも気品溢れるお姿をご拝見……」

「あなた、『ご拝見』だと二重敬語になってしまいますわ」

「オ時間デー……」

「ちょっと待ちなさい。それに、もう少し清潔感のある服の方があなたを引き立たせると思います。少々お待ちを」

「オ時間……」


「んー、これは時間かけすぎかなあ~」

「そもそもお時間ロボの制止を振り切ってるのがアウトです……」


 巒さんもファンの方を思っての発言なのでしょうが、握手会でやることではないのが気になります。そしてみるみるうちに、巒さんのレーンだけ空気が悪くなっていきました。


「まだ進まないんですか?」「時間は守ってよー」「これ何待ち?」「握手できなかったら返金希望」


 うーん、やはり初挑戦でやるにはハードルが高過ぎましたかね……。ただ、あかりは如才なくできてますし……。


 ――そうだ、そうしましょう!


「ど、どうするマッキー?」

「一度休憩を挟みましょう、場内アナウンスをお願いします。あと、あかりたちを控え室に集めてください」

「りょーかいっ!」


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