第02章_03話:不道徳な票
ステージ上には三人分の解答席と数枚のフリップが用意され、まさしくクイズ大会のセッティングです。ちなみに早押し機はもちろん大熊式を用意。これができるマネージャーというものです。
「みんな席に着いたね。第一部のクイズは、人気投票、アイドル、ソシャゲといった、ウチらに関連のあるジャンルから出題するよー! 正答数以外に、クイズを通してのリアクションもファンからの得票に関係するから、たっくさんアピールしてね~!」
「そしてクイズの読み手と作問はこの方!」
舞台袖から上がってきたのは……
「ごきげんよう、皆さん。夜乃 恋詠です」
「こよみんだ~! よろしくー!」
「恋詠さん、クイズも作れたんですね。ずっと同じユニットでしたが知りませんでした」
「『今回の騒動の原因の一端だ』『物語が作れるならクイズも作れるだろう』と蒔さんに詰め寄られ、急ピッチで作問しました。よろしくお願いいたします」
そう言いながら、非常に恨めしそうな目で放送席を見てきます。今の今まで忘れていましたが、確かに切羽詰まって押し付けるような形でお願いした記憶が……。
「ご迷惑をおかけしました……」
「……だいたい、ソシャゲの人気投票なんてリリースから半年くらいの順位でぼほ固定されるから嫌いなんですよね」
恋詠さんが顔に深い影を落としながら、
「序盤のうちに『この子売れるな』っていう印象が付いた子には強いスキルが与えられますし、早いうちに水着とかクリスマスのような季節限定ガチャの最高レアにも抜擢されるんですよね。そうじゃない子には外れスキルがあてがわれるし、何でもない通常ガチャの最高レアとか、季節イベのサブしか回ってこないんです。それでどうやって人気を出せというんでしょう。こっちは頑張っても周年前後の箸休め回でしかアピールできないんですよ? せっかく最高レア担当することがあっても、どうせそのガチャは回らないし、セルラン売上予測サイト見た人が『やっぱこいつは売れないな』とか言うんです。そういう一言一言が『この子人気ないね』みたいな空気に繋がるんですよ。本当やってられませんよね。そもそもセルラン予測なんかを見て売上を知った気になってる人って何なんですかね。そういう人たちって同接グラフ見ただけで配信者の年収断定するタイプですよね」
……呪詛のように思いの丈を吐き出しています……。恋詠さん、実はそういうの気にするタイプだったんですね……。
「年間のリリーススケジュール見ると悲しくなるんですよね。ああ、結局今年もこういう売り方しかされないんだな、売上の山場と山場の谷を埋めるような配置されてるなって分かっちゃうんです。運営さんは『ここ売上キツイな~』とか言いながら計画組んでますけど、じゃあその子の人気を上げるための工夫を一つでもしてきたんですかね。シナリオでもイラストでもカードスキルでも、何でも良いから売れるための仕込みはしたのでしょうか? そういう、誰かが輝くための土壌づくりこそ、数年かけてスケジュールを組むべきものじゃないのでしょうか? 愚痴を吐いている暇があるのでしたら……」
「あ、えーっと恋詠さん、そろそろ……」
「…………うふふ、ごめんなさい。何でもないのよ。家に帰って新しい小説も書きたいですし、始めましょうか」
シーンと静まりかえった会場に、なんとか活気を取り戻そうと、椎那さんの明るい実況が流れます。
「よ、よーし! 盛り上がっていこーね! それじゃ早速第一問! 早押しクイズだよ! ジャンルは人気投票! こよみん、読み上げどうぞ!」
恋詠さんが普段のテンションに戻って、問題を読み上げ始めます。
【問題】
《シリアル食品のイメージキャラクターに……
――ピンポン!
「おーっと! ランラン早い! 答えは~?」
「スフィンクス、ですわ」
「正解です」
回答の速さにどよめく会場。そして分からず悔しがっているあかりと莉里さん。あまりの早さに、リアクションを取るのも忘れてそうです。
「押すの早すぎない!?」
「というか、なんでスフィンクスが答えなんですか~!?」
「じゃあ、こよみん、最後まで読んでもらえる?」
「ええ。
【問題】
《シリアル食品のイメージキャラクターにライオンやゴリラを起用している会社の商品に使われていて、甘いものが苦手なことを理由に山椒味を推しているキャラクターがモチーフにしているものと言えば?》
という問題よ」
「いや、全部聞いても分かんないけど!?」
「これが人気投票とどう関係があるんですか!?」
……恋詠さん、だいぶ意地の悪い問題を作ってきますね……。
「解説まで用意する時間はありませんでしたので、分からなかったら検索でもかけてください。第二問、こちらもジャンルは人気投票です」
【問題】
《10年前に貰ったアクセサリーを巡るラブコメ漫……
――ピンポン!
「今回もランランが早~い! 答えは~?」
「千葉県、ですわね」
「正解」
「ちょっと~!」
「な、なにが千葉県なんですか~!?」
「問題文は、
【問題】
《10年前に貰ったアクセサリーを巡るラブコメ漫画、これに登場するヒロインの一人には熱狂的なファンがいることで有名ですが、そのファンの所在地はどこ?》
です」
「それにしてもランラン早かったね~!」
「はぁ……。あかりさんも莉里さんもアイドルなのですから、エンタメにもアンテナを張ってなきゃ駄目ですわよ」
「あんたが早すぎてエンタメかどうかも分かんなかったんですけど?」
「もー! 早押しは無しですー! ジャンルも変えてくださいー!」
「そうね、これだと張り合いがありませんし、観客の皆さんもつまらないでしょう。恋詠さん、変えてくださる?」
そう言われた恋詠さんが、呆れながらも別の問題を用意しています。他のジャンルはもう少し愛想のある設問だと良いのですが……。
「ジャンルはアイドルにしました。この問題はフリップに解答を書いてください。いきます」
【問題】
《昭和の伝説アイドルが引退の際、ステージに置いたものと言えば、何?》
ああ、これは割と素直な問題ですね。全員答えられそうですが……。
「さあ、三人とも答えは書けたかな~? それじゃ一斉にフリップをオープン!」
「マイク」
「マイク」
「……請求書」
「あーっと、割れたね~! あかりん、ランランがマイク。リリーが契約書って書いてるけど……」
「正解は、マイクよ」
「あかりさん、巒さん、正解です! 莉里さんは残念!」
「アイドルやっててこれを知らないなんて……」
「莉里さん、あなた……請求書って……。どこまで小賢しいの……?」
「はぁ~!? いやだって時代はもう令和なんですけど? 今さら昭和のこと聞かれたって莉里分かんないですぅ~。ま、先輩方は年増だから答えられたのかもしれないですけどぉ~」
「あぁ? あんたとは学年一つしか違わないでしょうが!」
「だいたい、実装されたのはわたくしよりも莉里さんの方が先なのですから、あなたの方がデータ的には年増じゃありません?」
「莉里は今この世界を生きてるんですぅ~! つまり学年的に莉里の方が若いんですぅ!データでどっちが後か先かなんて、どーだっていいんですよーだ!」
ほんと、このメンバーが揃うと碌なことが起こらないですね……。
「あはは、三人全員が良いリアクションを見せてくれてるね~! これは拳で決着をつける展開かな? 人気を殴り合いで取りにいくアイドルなんて、なんか盛り上がりそ~!」
「ちょ、ちょっと椎那さん!? 実況が煽ってどうするんですか! い、一旦CMですー!」




