27番目の婚約者
※メリバなので苦手な方はご注意ください。
ユラ公爵邸の最も見晴らしの良いテラス席にて。
「アリシア嬢、すまないが君との婚約を破棄させてください!」
公爵令嬢のアリシアは婚約者から婚約破棄を一方的に告げられた。
婚約してから1ヶ月後のことだった。これが想いを寄せいていた相手だったらアリシアはこの場で泣き崩れ喚き、最低男と罵ることもできた。
ところが目の前の相手はよく知らない地方貴族の嫡男で、顔を合わせたのも婚約を結んだその日が初めてだった。特にこれといった思い入れもなく、失恋の痛みなんてこれっぽっちもない。
アリシアの心の中で浮かんだ感想は一言。
またか。
ただそれだけだった。
アリシアは緩慢な動きでカップがのったソーサーを手に取り、一口お茶を啜る。ちらりと目の前の令息へと視線を向けると、再び視線をカップに戻した。
「……分かりました。婚約解消についてはお受け致しましょう。――ですが私の何がいけなかったのかその理由を教えて頂けませんか?」
「いや、君は悪くない。悪いのは僕なんだ! とにかく今日から僕たちは赤の他人だから!!」
表情を強張らせる令息は、侍女が出したばかりのお茶を一口も飲まずに婚約解消の証明書類をバンッと机の上に叩きつけ、逃げるように去っていった。
一人残されたアリシアは再びカップに口をつけた後はあ、と深いため息をついた。
「縁談を断られた相手の数は25人。……いえ、今の彼をカウントすると26人になるわ」
カップをソーサーにのせてテーブルに戻すと、目を伏せてこめかみに手を当てる。
ここまで結婚が難航している理由が全く分からない。
家柄に問題はないし、容姿だってそれなりに良い方だと自負している。なのに結婚適齢期の16歳になってからこの2年、縁談話が持ち上がって婚約まで辿り着いてもその先へ進めないでいる。
長く持って2ヶ月、短ければ1週間で婚約破棄された。
因みに先程の令息は1ヶ月。まあまあ持った方だ。
「一体私の何が問題なの? 毎回理由を尋ねても皆答えてくれないわ」
何が問題だったのか、直すところがあるのなら次へ活かすためにも知りたいところではある。
しかし、誰一人としてアリシアの悪いところを指摘してくれない。
毎回返ってくるのは「君は悪くない」という言葉だけ。こちらが悪くないのなら何故婚約を破棄してくるのか。言葉と行動が矛盾しているので不満は増すばかりだった。
「お父様に婚約が破棄になったと手紙で報告しないと。……どうせ、読んでくれないだろうけど」
アリシアの父であるユラ公爵は国王の右腕として国政で辣腕を振るっているが、それ以外のことには一切関心がない。それは娘であるアリシアも同様だ。
唯一関心があるのは時期公爵となるアリシアの兄のみ。その証拠に兄が留学で外国の魔術学院へ旅立ってからは一度も屋敷に帰ってこない。
とはいっても、公爵家を発展させるために娘にはそれなりの身分の相手と結婚をさせようと最初のうちは縁談に力を入れてくれていた。が、毎回アリシアが婚約破棄という残念な結果を出しているせいで呆れられ、今は執事が婿探しをしてくれている。
アリシアが侍女にレターセットを用意させていると執事がテラスにやってきた。
「お嬢様、エンニエス辺境伯がお見えです。如何なさいますか?」
「まあ、ジェラール様が!?」
アリシアは席から立ち上がるとスカートの裾を少し持ち上げて、はしたないと言われない速さで居間へと駆ける。
ジェラール・エンニエス辺境伯。
彼はこの国の北東部の辺境領を治めており、中でも隣国との国境付近の警備に力を入れている。厳戒態勢で監視してくれているお陰でこれまで一度も隣国から侵攻を受けたことはない。
普段は辺境領に引き籠もっているのだが数ヶ月おきに国王陛下へ現状報告をしに、彼自ら首都まで足を運んでいる。
小さい頃にアリシアは兄と一緒に父の忘れ物を届けに王宮へ行ったことがある。しかし、よそ見をしていたせいで兄とはぐれてしまい迷子になった。
広大で迷路のような王宮は心細く、周りの大人たちはアリシアが迷子だと気づいているのに面倒ごとには巻き込まれたくないためかその場を通り過ぎていく。
いよいよ心細さが限界に達して、我慢していた涙が溢れ出しそうになったその時。
「こんなところでどうしたの?」と声を掛け、アリシアを抱き上げ助けてくれたのがジェラールだった。
訥々と事情を説明したらジェラールは何度も相づちをうって優しく頭を撫でてくれる。面倒見が良いのか、ジェラールは父が働いている執務室まで連れて行ってくれたのだった。
アリシアはジェラールにすっかり懐いてしまい、ジェラールもまたアリシアを可愛がり、定期的に手紙を送ってくれていたため、今日まで親交が続いている。
「ジェラール様っ!」
アリシアはジェラールを見るや飛びついた。
「やあ、アリシア」
ジェラールは無邪気に飛びついたアリシアを腕の中でしっかり抱き留め、優しく頭を撫でてくれた。
頭を動かして顔を上げると、そこには溜め息が出るほど整った美貌がこちらに向かって微笑みを浮かべてくれている。
青みがかったさらさらとした黒髪に、菜の花のように鮮やかな黄色い瞳。彫りの深い顔立ちで、高くも低くもない丁度良い高さの鼻に、薄い唇。
国境付近を守る領主だというのに体つきは筋骨隆々ではなく、それなりに細く引き締まっていて上背もある。要は、ジェラールは誰もが認める完璧な男性だった。
そんなジェラールは御年36歳で未だに妻を娶っておらず独身を貫いている。
どうして独身のままなのかというと、ジェラールが若い頃の国境付近は隣国と一発触発の緊張状態が続いていて、結婚どころではなかったからだという。
嫁を探すにも首都で開かれる社交パーティーに何度も足を運ばなくてはいけない。
当時のジェラールにそんな余裕があるはずもなく、首都へ訪れても諸々の手続きを終わらせるとすぐ領地へと帰っていた。
隣国との睨み合いは続いていたが5年前に隣国の国王が急逝し、新国王が即位したことで状況は一転した。無事に緊張状態が緩和して国境付近に平和が訪れたのだ。
だが、時既にジェラールの結婚適齢期は過ぎてしまっていて、彼は結婚を諦めた。
未だに健在するその美貌をもってすれば、どんな女性もジェラールに求婚されて断る人はいないとアリシアは心底思う。
(だって、ジェラール様はこんなに素敵で格好いいんだもの)
大人の色気を纏ったジェラールを目の前にしてアリシアは頬を染めた。
アリシアに婚約破棄される原因があるのだとすれば、ジェラール以上に良い男はいないと思ってしまっているところだろう。
年の近い令息たちは誰も彼も子供っぽくて、男らしさに欠ける。けれどジェラールには大人の余裕めいたものがあり、年の近い令息たちよりも紳士的でいつだってアリシアを宝物のように大事に扱ってくれる。
(ジェラール様が私の旦那様になってくださったら、どれだけ幸せかしら)
しかしジェラールはアリシアのことを可愛い『女の子』としか認識していない。その証拠にアリシアが抱きついたにもかかわらず、動揺せずに昔と変わらず接してくれている。
「暫く会えなかったが変わりはないか?」
「ええ。今日も無事に……婚約破棄されましたわ」
うまくいかない現状を思い出したアリシアは戯けてみせたが、続いてしゅんと肩を落とした。
「実を言うと今日婚約破棄された令息は、年が近い最後の相手でした。もう周りの結婚適齢期の男性で残っている方は誰もいらっしゃいません。……このままだと誰とも結婚できず、独身のままで生涯を閉じることになりそうです」
悲しい未来を想像してアリシアは涙目になった。
自分が公爵家に唯一貢献できることは結婚することだったから。少しでも父に娘だと認めて欲しかった。関心を持って欲しかった。
結婚して務めを果たそうとしていたのにすべては空回ってばかり。結局父には見向きもされないままで、期待外れの娘という烙印が消えることはない。
きゅっと唇を噛みしめて項垂れていると、ジェラールの優しい手がアリシアの頬に触れる。
「だったら、私の妻になってくれないだろうか?」
アリシアは目を見開いて顔を上げた。
「私で良いんですか?」
「アリシアが良いんだ。辺境地から首都へ足を運んでいたのは、本当はアリシアに会うためだった。年が離れすぎている男に言い寄られてさぞかし不快だろうが、一度考えてくれないか?」
自信なさげに眉を下げるジェラール。
物憂げなその表情ですらアリシアの胸をときめかせるには充分で。
アリシアの胸は大きく脈打っていた。もしかしたら心臓の音がジェラールまで届いてしまっているかもしれない。
「いいえ。そんなことありません。ジェラール様はとても素敵で小さい頃からずっと憧れていた、殿方です……から」
自分が告白していることに気づいてアリシアは顔を真っ赤にする。
そんなアリシアが愛おしくてたまらないと甘やかな声で囁くジェラールに、アリシアはすっかりのぼせ上がってしまった。
「すぐに婚姻の手続きを行おう。そして結婚式は素敵なものにしよう」
26人の令息たちと婚約を結んできたが今日ほど幸せを感じた日はない。
(ジェラール様となら何があっても絶対に幸せになれるわ)
そんな確信めいたものを感じ取っていると、不意に背中にぞくりとしたものが駆け抜け、胸の辺りがざわざわと騒ぐ。
「……?」
突然のことにアリシアは首を傾げる。
きっとこれは喜びからくるもの。幸せを目の前にして少し怖くなっているだけ。
アリシアがゆっくりと深呼吸をしていると、甘やかな微笑みを浮かべるジェラールの顔が近づいてくる。
それに気づいたアリシアは、ゆっくりと目を閉じるのだった。
ジェラールに求婚されてから2週間後。
アリシアはジェラールが治めている辺境領で結婚式を挙げた。
出席者はジェラールの屋敷に勤める使用人や関係者だけの細やかなものだったが純白のドレスに身を包んだアリシアは幸せだった。
父には手紙で結婚を報告したが、相変わらずなしのつぶてで、代わりに送られてきたのは持参金だけだった。これで結婚や新生活の準備をしろということだろう。
因みに留学中の兄にも手紙は送ったが、外国なので返事が返ってくるまでに時間を要する。
(せめてお兄様からは祝福の言葉はもらいたいわ)
家族が誰一人として出席しなかったのは寂しいけれどアリシアは今、とても幸せだ。
空には夜の帳が下り、静寂が辺りを包み込む。
オレンジのあかりが灯る寝室でアリシアは侍女が用意してくれた夜着に着替え、ドキドキしながらベッドの縁に腰を沈めていた。
(どこも変なところはないかしら。ジェラール様にみっともない身体だと思われたらどうしよう)
アリシアは下を向いて自分の身体を隈なく確認する。
肩には薄手のショールを羽織り、白銀の長い髪を三つ編みで一括りにして右肩に垂らしている。
するとまた寒気と胸騒ぎを覚えた。
ジェラールに求婚されてからアリシアは毎日この感覚に襲われている。
それはすぐに消えてしまうし、特に病気という訳でもないので医者には診せていない。
これは世間一般で言われるマリッジブルーかもしれないと結論を出していると、扉の開く音がした。
頭を動かすと戸口の前に慈しむような目でこちらを眺めるジェラールが立っている。その姿を見た途端、アリシアの中で『マリッジブルー』という文字はすっかり消えてしまった。
ずっと憧れていたジェラールと結婚できたのだから悩むことなんてアリシアにはない。
ジェラールはゆったりとした足取りでこちらにやってくるとアリシアの隣に腰を下ろす。彼もまた夜気に着替えていて、いつものかっちりとした服装とは違ってゆったりとした生地に身を包んでいる。
引き締まった胸もとが視界に入ってアリシアは顔を赤くした。いつも以上に色気が漂っているジェラールにくらくらしてしまう。そしてこれから始まるの長い夜に全身が熱くなる。
「大丈夫、怖いことはしないから。目を閉じて」
アリシアはジェラールに身を委ねた。
するとジェラールの唇が額に落ちてくる。額から頬、頬から唇、唇から首筋へ――。
彼の熱を感じ取ってドキドキしていると、うなじ辺りでそれがぴたりと止まった。
アリシアはハッとして目を開くと、もぞもぞと身じろいでから、うなじの辺りを手で覆う。
「あ……これは生まれつきの痣なんです。誓って傷ではないので……だから……」
アリシアのうなじの辺りには生まれつき特徴的で不気味な痣がある。普段はパウダーで隠しているのだが、今は湯浴みをして夜着に着替えていたのですっかり忘れてしまっていた。
この痣の存在を知ってから父はアリシアに関心を持たなくなったと乳母が言っていた。
まさか今度はジェラールに嫌われてしまうのだろうか。怯えて俯いていると、ジェラールがアリシアの両手を取って優しく握り締めてくれる。
「大丈夫。不安がる必要はない。この痣はアリシアの素敵なチャームポイントだ。それと、私はどんなアリシアも愛している」
「ジェラール様……」
ジェラールにすべてを受け入れてもらえて、アリシアの心は一気に晴れていく。
実の父にすら受け入れてもらえなかった不気味な痣を受け入れてくれたジェラール。
その懐の深さに自分も答えたい。
「わ、私も、どんなジェラール様でも愛します!」
愛しますなんて口にするのはとても緊張するけれど、この想いをジェラールに知ってもらいたい。そんな一心でアリシアが言葉を紡げば、ジェラールは艶然と微笑んで口端を吊り上げた。
「嬉しいよアリシア。――でもこれは私がつけたものだから」
「え?」
ジェラールはアリシアの痣に触れると素早く何かを唱えた。
唱え終えた途端、アリシアは意識を失ってガクンとベッドに倒れ込む。
ジェラールはアリシアの頬を愛おしげに撫でるとうっとりとした表情で話しかける。
「どうだ今の気分は? 私から逃げ切れるとでも思ったか? ――ニナ」
ニナと呼ばれたアリシアは呻き声を上げながら上体を起こす。
伏せていた顔をゆっくりと上げれば、そこにはあどけなさが残るいつものアリシアはいなかった。
代わりに、憂えを帯びた表情の大人の女性がいる。
ニナは柳眉を逆立ててジェラールを睨み付けた。
「ジェラール! どうして私の生まれ変わりにまで執着するの? まさか自分の視力と引き換えに、私の魂に追跡を刻印するなんて!」
ジェラールが行ったのは対価を必要とする魔術――いわゆる禁術だ。
アリシアは気づいていないが彼の左目は光を認識するだけでほとんど見えていなかった。
「視力を失ってニナを見つけられるなら惜しくない。それより酷いのはニナの方だ。私は生涯をあなたに捧げると誓ったのに、まさか私から逃げようとするなんて。私はあんなに愛していたのに」
ジェラールの手が頬に伸びてきたので、ニナは勢いよく払い除ける。しかし、その表情は真っ青だ。
「私は平民上がりの魔術学院に通うただの生徒。あなたは将来有望なこの国の貴族。身分が違いすぎるし、人生を棒に振りたくなかったのよ」
ジェラールとニナが出会ったのは永世中立国にある魔術学院。ジェラールがいる国は魔術者が少なく、技術があまり発展していないため、魔術が使える貴族の子供は教育がしっかりと行き届いた魔術学院へ留学するのが習わしとなっている。
ジェラールもそれに倣って魔術学院へと留学していた。そしてニナはその永世中立国に暮らす平民で魔術が優れていたため特待生として入学していた。
ジェラールはニナに恋をしたが、ニナの方はまったく恋愛感情を抱いていなかったし、現実主義な思想を持っていたので身分違いの恋なんて絶対にしないと誓っていた。
どれだけ言い寄られてもニナがジェラールに靡くことはなく、学院を卒業すると逃げるように姿を眩ました。
だが、ジェラールは諦めなかった。
様々な追跡魔術を駆使してジェラールはニナを探した。最終的に魔術学院併設の魔術具研究所に勤めていることを突き止め、執拗に付きまとうようになった。
精神的に追い込まれていたニナは、実験の最中に誤って爆発事故を起こし瓦礫の下敷きになって死んでしまった。
身体の震えを覚えたニナはぎゅっと拳に力を入れる。
「瓦礫の下敷きになった時思ったわ。人生をまっとうできないのは悔しいけど、やっとあなたから解放されるんだって。なのにまさかアリシアにまで執着するなんて!」
「知らなかったか? 私はあなたの魂に惹かれている。今度こそ手に入れてみせると誓った」
「だからアリシアの家族を脅してわざと彼女を孤立させたの?」
「脅すだなんて人聞きの悪い。私はアリシアが生まれてすぐに彼女を花嫁にと公爵へ申し出た。だが、公爵は自分とさほど歳の変わらない私と結婚させるのは心底嫌だったようだ。だから年の近い令息と結婚できなかった時は私との結婚を許して欲しいと提案した。随分紳士的だろう?」
「紳士的なんかじゃないわ。令息たちを裏で脅迫して婚約破棄させるように仕向けたでしょう」
ニナが追及するとジェラールはあっさりと頷いた。
「アリシアが私以外のものになるなんて許せない。どんなに逃げようと私は絶対手に入れる。そのために自分の左目や臓器の一部と引き換えに魂へ追跡の刻印までしたんだ」
ジェラールは恍惚とした瞳でニナを見つめた。
ニナはさらに顔を青くして「狂ってる」と震える声で呟いたが、それはジェラールを喜ばせるだけだった。
「そう。私はあなたに狂わされている。狂おしいほど愛している」
瞳に狂気の色を滲ませるジェラールはニナに覆い被さると組み敷いた。
必死に抵抗をみせるニナだったが当然ジェラールには敵わない。
「正直いつ転生してくるのか不安だったが、早いうちにアリシアとして生まれ変わってくれて心の底から嬉しい」
「こ、こんなの間違ってるわよ! アリシアに、あの子に真実を伝えないと!!」
「残念だがアリシアには魔力がないから真実は伝えられないな」
ジェラールは愉悦に浸る。それから真顔になると静かに言った。
「ニナは魂の記憶の残滓に過ぎない。アリシアを止めたくてももう結婚もしてしまったし、どうすることもできない。君は潜在意識を使って必死に呼びかけていたみたいだが、無駄だった」
ジェラールはニナの額に人差し指と中指を当てると呪文を唱える。
「このっ……最低おと、こ……」
「さよならニナ。もう会うこともないだろう。君の生まれ変わりのアリシアは絶対に手放さないから」
ククッと喉で笑ったジェラールはニナの口を塞ぐ。
「んう……あれ、私」
次に声を上げたのは雛鳥のようにあどけない表情を浮かべるアリシアだ。
「結婚式で少し疲れたみたいだな」
アリシアはぱっと顔を赤らめると涙目になった。
「ご、ごめんなさい。ジェラール様。私ったら眠ってしまっていたの?」
「そんなアリシアも堪らなく可愛い。それに夜はまだ長いから心配するな。……おいで、私の可愛いアリシア」
「はい、ジェラール様」
アリシアは頬を染めると愛おしいジェラールに抱きつき、身を委ねるのだった。
良かったら★やブクマなどよろしくお願い致します。