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俺と私と賢者たち  作者: 市川れん
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炎の能力者現る!?

平々凡々、それが俺の日常だった。そうあの日まではーーーー


ジリリリリリリリリリイ! ドタッ。静寂を崩すアラームの音を俺は力強くボタンを押し、消した。寝ぼけてまだ頭もすっきりしない状態で布団を飛び出し、顔を洗いに一階に向かう。


ん、そうだ今日は水曜日だ。小テストあったわ。


唐突に思い出した。いや思い出してしまったというべきか。ちなみに俺は全く対策をしていない。昨夜はずっとギターの練習をしていたのだ。


まあ、いっか。


いや本当はもうちょっと悪あがきをするべきだったのだが、もはや悪いとわかっているものを手を付ける勇気は俺にはなかった。小テストを一瞬であきらめ、何も考えたくないといわんばかりに乱暴に新聞をあける。その時一つの記事が俺の目に止まった。いや吸い寄せられたというべきか。


「、、、、、、、ん?」 


{炎の能力者現る!}


思考が停止した。寝ぼけているからではなく、ただひたすらに理解が追い付いていないということなのだ。突っ込みどころというか、色々これを書いた新聞社に電話して直接聞いてやりたいところだが、まずはその記事を読み込むことにした。


「へえ、、、、」


まあ色々長いから端的に説明するとするならば、なんか炎を自由自在に操れる女性がいるんだってよ!


んなわけあるか。


ついにマスコミもここまで来たか。中二病みたいな戯言を真に受けるなどとさすがにそこまでいったらもう終わりだぜ。ここは魔法もファンタジーもないくそったれで夢の希望もない世界なのに!、、、、まあ後半は主に人によるんだけど。


くだらない!




俺はそう吐き捨て、さっさと自宅を出る準備をした。制服に着替え鞄を背負い俺はとっとと家を出た。グウ~と腹がなる。胃が空腹を訴えてるみたいだ。


ああ今日もまた朝飯が食えなかった。


なんだかんだ高校生になってから一回も朝飯を食えてない。これをほかの人に話すとそれじゃあ授業に集中できないだの、力が出なくなるだのなんだの言われるが、当の本人に特に支障は出ていないのでよしとしている。というか俺は睡眠時間を優先してるの!睡眠時間を!、、、まあそれはそれとして。




おお、風が気持ちいい。




家から駅までの道のりは多少遠いので俺は普段自転車を使っている。この時の運動で頭がだんだんさえてくる。冴えた頭でつい先ほど投げやりになってまで否定した疑問点が頭によぎったので考えることにした。




ワンチャン炎の能力者いる? さすがにそんなでたらめあの新聞社が書くか?




いささかどうして疑問がのこるのだ。根拠があって言っていることなのだろう。いや、まてだったとしてもだろ。まてまて実在したら? うーーーーーーーーーーむ。わかんね。まあ特に関係はないか。うんうん。




そんなことより小テストがやべえ! 電車で少しでもやんねえと!




人間死を覚悟していても、それを目前にすると怖気づいてしまうものである。俺も例外ではなかったようだ。急いで自転車をこぎ駅についた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




ガラッ!




「はあ、、、はあ、、ゼエゼエ、、、」




息を切らしながら俺は急いで教室に入った。チラッと時計を見たところ時刻は8時44分を示していた。遅刻の判定は45分を超えるかどうかなので本当にギリギリだったのだ。毎朝毎朝俺は学校についてから教室に入るまでゲームでいうRTA走者並みに効率に効率を極めたルートと走法を研究している。




「そろそろ43分台に行けるか、、 !?、ゲボっ、、オエッ、オエエエエエエエエエエエエ!!」




瞬間俺は立っていられないほどの猛烈な吐き気と、めまいに襲われた。自らの意識が急激に失われていくのをしっかり認識できていたほどに。足ががくがくする。崩れゆく意識の中俺は心配そうに見つめる、いや見つめてくれる女子たちと、駆け寄るクラスメイトたちの隙間に見えた担任教師のテストの束を見つけてしまった。




あ、それ朝やるんですね。てっきり昼からやると思ってました。じゃあやっぱりやってもどのみち駄目だったんすね。間に合わないし。




それを境に俺の意識は途絶えた。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「ん、、、、、、、、、、、どこだここは、、、、、」




俺は少し警戒をしながら、体をあげ、辺りを見渡す。




「起きた?」




見覚えのある顔だった。




「あ、、、、、、、、、はい。」




どうやら俺は保健室に運ばれたらしい。今はなしているのは保健室の先生だ。


最後の記憶は教室でぶっ倒れたところだったので、おそらく倒れた原因は体の極度の疲労状態といったところだろう。しかし、意識を失うほど体を酷使したって今考えるとそうとうやべえな。そんな状態プロのアスリートでも聞いたことねえぞ。やはり毎朝の例のRTAには自分の限界、疲労蓄積度も考慮に入れるべきか。そうなってくるとまた難しくなってくるんだよな。もしかしたらここで朝飯のエネルギーが効いてきてるのか?その説はある。ご飯には多量のブドウ糖も含まれているし、体を動かすためのエネルギーも入っておるはずだ。だが、やはり冒頭にも言った通り睡眠時間だけは削りたくない。どっちを取るかっつー話だな。




「あの色々考えこんでるところ悪いんだけど、ちょっといいかしら?」




俺はすぐさま顔を上げ、首を縦に振った。




「君なんであんなことをしているの?」




あんなこととはどんなことだろう。まあ大体察しはつくんだけど。それより先生のなにかいぶかしげな目が気になる。俺のやっていることが本当に理解ができないのだろう。まあ無理もないか。全力も全力を出しているのだ。廊下は短距離走のレースではないと暗に俺に伝えたいのだろう。だが、俺も好き好んでダッシュしていると思ったらそれは大間違いである。




俺の通っている高校、煌翔学院は山の中にある。山といってもそこまで高いところではなく中腹辺りに立地している。最寄駅から徒歩30分、バス10分ってところだ。冒頭では省略してしまったが、俺はいつもバスに乗ってきている。が、このバスが問題なのだ。バス停は学校からそこそこの距離がある。故に8時45分に間に合おうとするならば、バスは8時35分にはバス停につかなくてはならない。なのに煌翔学院行きのバスは8時40分につくのだ。




この時間帯に設定したやつは基準を陸上部の短距離走ランナーにしたに違いない。




うんうん。きっとそうだ。俺はバスで通学してくる奴らとこの現状を分かち合い、こいつらの助けになるべく日々走法の効率を目指して頑張っているのである。




「まあ、それは別にどうでもいいわ。君、体は大丈夫?」




どうでもいいならなぜ聞いたのかといいたくなるが、それはまあただの揚げ足取りなのでやめておく。ふむ。俺は腕をぶんぶん振り回し体が正常か、どうか判断する。よし。これなら大丈夫そうだ。一応深呼吸を一回する。




ふうーーーー。はあーーーーー。




何とかなったかな。オーバーヒート気味だった体は少し安静にしてただけでよくなった。




「すいません。問題はないようです。」




「そう?それならよかったけど。」




先生はまだ心配そうな目で俺を見てくるが、本当にもう体に異常はないのだ。





「はい。お騒がせしました。」




症状が治まった以上保健室に長居はできない。俺はすぐさまベッドから出て、小走り気味に保健室から出る準備をした。上履きをはこうとした瞬間俺は視線の先で目を疑うような信じられない光景、保健室にあるテレビから流れてくる映像に目が離せなくなってしまっていた。保健室にテレビがあること事態に疑問を覚える人がいるかもしれないが、それは勝手に先生が保健室を私物化しているのである。この先生は生徒がいないときはずっとテレビで昼ドラやニュースを見まくっているのであり、そのせいで生徒が保健室に長居すると猛烈に機嫌が悪くなる。俺がそそくさと帰ろうとしたのもそのためだ。




そこに映っていたのは、俺とたいして年齢も変わらない女子が燃え盛る炎の中にいた光景だった。




普通の人であれば、全身大やけどは免れず後遺症に一生付き合わなければならないほど。そう普通の人であれば。




「はっ、、、、!」






瞬間、その女の子は火の中から出てきた。ケロリとした顔で。もはや火をなんとも思っていない、そこにあったことすら気づいていない様子で。




そして、その女子は自分が先ほどまでいた炎を手のひらに吸収し、別の手と炎を吸収した方の手のひらを握手させ、別の手の方から、中華料理屋のすごく火がふきでた状態のように手から炎を噴射した。




「炎の能力者って本当にいたのね。」




先生がコーヒーをすすりながら言う。




「先生、まったく信じてなかったけど実際に見せられたら何も言えなくなるものね。まさに{百聞は一見に如かず}ってとこかしら。」




そうなのだ。実際俺はその炎の能力者が現れた事実だけを知っていただけであり、新聞社がそれを書く根拠までを考察、あるいは考慮にいれていなかった。炎の能力者と称されているだけはある炎を使っているシーンをテレビ越しではあるが、直に見せられると「そんなものはいない!」ときっぱり言い切れるかというと怪しいところであり、現状信じてしまいそうなのだった。だが、しかし一旦決めつけてしまったものを訂正するのはなんとも気恥ずかしいもので、そうやすやすと自分の意見を変えたくないという、多少意地っ張りな部分が邪魔をしている。まあ別に誰かに聞かれていたわけではないのだが。




「君、それより授業はいいの?もう三限目始まるわよ?」




げ。もうそんな時間が経っていたのか。確かにそろそろ出ねえと。




「すいません。迷惑かけました。失礼します!」




俺は上履きをすぐさま履くと、荷物を抱えそそくさと保健室を後にした。












































































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