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短編【30分前後】

ドッキリ

作者: 有嶋俊成

 テレビディレクターの熱尾(あつお)トクタカは、ウキウキしながらテレビ局内のエレベーターに乗り込んだ。自分以外誰もいない昇降機の中で、周りに髭の生えた口の口角を上げながら熱尾はついニヤついてしまった。

 目的の階に着くと、楽屋の扉が並ぶ通路を通っていき、途中にある扉を開け部屋に入った。

 部屋の中は広く、中心には二つの白いテーブルがくっつけられて置かれている。その上にはモニターがいくつか並べられていた。

「熱尾さん、おはようございます。」

 椅子から腰を上げながら挨拶してきた男はADの水町(みずまち)だ。

「おぅ、おはよう。スタンバイは出来たか?」

「ばっちりです。隠しカメラも問題ありません。」

 水町はテーブルに置かれたモニターを熱尾に示した。

 モニター画面にはテレビ局の入口や通路、熱尾らがいる部屋より一回り大きい部屋が映し出されている。どれも天井の隅やら観葉植物の中やら人目がつかないような場所から撮影されている。

「警備員役のエキストラの方、準備OKです。」

 そう言いながら部屋に入ってきたウエストバッグを肩からかけている女は水町と同じくADの倉里(くらさと)だ。

「それじゃ、後は"広安(ひろやす)"を待つだけだな。」

 ニヤりとする熱尾。

 熱尾が"広安"と呼ぶのは今、大人気のお笑い芸人・広安祐吉(ひろやすゆうきち)のことだ。

 広安は二年程前から人気が急上昇し、現在はレギュラー番組を六本持ち、その内、四本は広安の冠番組だ。

 今日は、そんな広安に熱尾ディレクターを務めるドッキリ特番「ノゾキ見!」で一日かけて様々なドッキリを仕掛ける。

 「ノゾキ見!」では、世間に知られていないタレントの素顔を暴く、というテーマの下で多くの人気タレントたちにドッキリを仕掛けていく。そして今回は、バラエティ界で絶大な人気を得ており、世間からの注目度の高い広安をメインのターゲットに据えたのだ。

 熱尾は、広安の人気が急上昇する前から彼と仕事で付き合いがあり、彼の素顔もそれなりに見てきた。今回はそれらを世間にみせつけて、同時に視聴率も稼いでやろうと息巻いている。

「広安さんもうすぐ到着するそうです。」

 インカムのイヤホンを耳で抑えた倉里が熱尾に向かって叫んだ。

「よし! 始めるぞ!」

 熱尾のテレビマン魂からメラメラと炎が湧き始めた。


 タクシーに乗ってテレビ局にやってきた広安は、入口の前に到着すると、運転手に三千円を手渡し、おつりを受け取らずに降車した。

 自動ドアを通り、何歩か歩いたところで突然、紺色の制服を着た警備員の男に止められた。

「ちょっと、すいません。」

「んぇ? 何すか?」

 売れてからというもの、警備員にほとんど止められたことがない広安は突然のことにやや困惑した。

「お名前、伺ってもよろしいですか?」

「広安です。」

「ヒロヤスさん?」

「広安祐吉です。」

 広安は被っていた黒のキャップ帽子と黒縁の度無し眼鏡を外す。

「ヒロヤスユウキチさん?」

 いつもなら警備員には顔パスで通してもらっているのだが、今日の警備員はどうやら自分を知らないようだ。

 広安は何とか通してもらおうと弁明を続ける。

「ロケの撮影で呼ばれたんですけど…」

「タレントの方ですか?」

「そうです。」

「ヒロヤス…さんですか?」

「はい。」

「すいません。ちょっとわからないです。」

 「なんでだよ」、と言いたかったが、今は笑いながら堪えた。

 広安の出演しているレギュラー番組は全て全国放送だ。視聴率もそれなりに高い。レギュラー以外でもゲストとして番組に出ることも多く、何なら"広安祐吉"という名前もそこそこ個性的なので大抵の人には覚えられていると思うのだが…。


 別室にいる熱尾ら「ノゾキ見!」スタッフたちは広安が警備員に足止めを喰らっている様子を映しているモニター画面に目が釘付けになっていた。

「まぁ、こんな感じだろうな。」

 熱尾は腕を組みながら背もたれに背中を押し付け、画面から顔を離した。

「最初の小手調べみたいなもんですね。」

 熱尾の隣に座る水町も同意した。

「そろそろ、警備員に指示出すか。」

 熱尾がそう言うと、水町がトランシーバーに向かって話し始めた。

 それと同時に、倉里は部屋を出ていった。


「『広安情報局』って知ってます?」

 広安は自分を知らないであろう警備員に自分がMCを務めるバラエティ番組の名前を挙げた。

 番組を知っていればこの警備員もピンとくるかもしれない。

「番組の名前ですか?」

「はい。僕の冠番組。」

「いや~わからないですね。」

「えぇ…それじゃぁ、『広安グランプリ』は?」

 続いて広安は、自分がMCを務めるネタ番組の名前を挙げた。

「すいません。それも知らないですね。」

 マジかよ……心の中でため息をついたと同時にこの状況に何故か笑ってしまった。こうなれば広安はお手上げだ。

 この警備員は普段、テレビを全く見ないのだろうか?

「それでは、中のスタッフの方に確認しますね。」

「あ、はい。(最初からそうしてくれよ……)」

 広安は返事をしながら心の中で呟いた。

 警備員が内線電話を入れて数分後、ウエストバッグを肩から斜め掛けした女が奥から出て来た。恐らく番組のADだろう。

「広安さん、おはようございます。お待たせしました。」

 ADの女は広安の元に向かって早歩きしながら頭をペコペコとさせて近づいてきた。

「申し訳ありません。本当に知らなくて…」

 警備員は広安に平謝りした。

 広安は特に文句は言わず、「大丈夫ですよ」、と言って笑顔で警備員の元を去った。

 どこか引っ掛かる部分はあったが……。


 女性ADに連れられてエレベーターに乗り、局の上階に上る広安。

 目的の階に到着すると、エレベーターを降りてグレーのタイルカーペットが敷かれた廊下を女性ADの背中に吸い寄せられるようについて行きながら進む。

 途中、小道具やカンペ用の画用紙などを持つ、番組スタッフ五、六人程の集団とすれ違った。

 その中に、妙に髭の量が多い黒縁眼鏡の男がいたが、特に気にしなかった。

「こちらです。」

 女性ADは、廊下の途中にあるドアを開けて広安を中へ入れた。

「それではこちあで打ち合わせを行いますのでしばらくお待ちください。」

「あーはい、わかりました。」

「それでは失礼いたします。」

 女性ADはドアを閉めて部屋を去った。


「おっ、来た来た。」

 熱尾と水町は、広安が倉里に連れられて入ってきた広い楽屋が映し出されたモニター画面に目をやった。

 カメラに映る広安は、変装用の帽子と眼鏡、羽織っていた紫の長袖シャツをリュックの中に詰め込み、自分の座るスチール椅子の隣の椅子にぽんと置いた。

「もう大丈夫じゃないですか?」

 水町が隣に座る熱尾に進言する。

「もうちょい様子を見よう。オフ状態の広安が撮れるかもしれない。」

 熱尾は広安の素を収めようと執念を燃やしている。

 天井の高い、広々とした部屋の中で、ただ一人ぽつんと椅子に座る広安。

 テーブルの上に置かれた五百ミリリットルペットボトルを手に取り、中の水を数口飲んだ。

 それから立ち上がり、部屋をうろついた後、入口の近くで立ち止まり、壁に貼られた鏡に顔を近づけ、髪を整え始めた。

「おぉっ、ヤバいヤバい!」

 別室の熱尾が目を大きくして、モニター画面に顔を近づける。

「この鏡の裏、カメラ居るよな⁉」

「はい。でも、何度見ても外からは全く見えなかったので大丈夫ですよ。」

 今、広安が見ている鏡は、一見普通の鏡に見えるが、反対側から見ると透明な窓の様になっている。いわゆる、マジックミラーと呼ばれる特殊な鏡だ。

 熱尾は、水町の言葉を聞いて少しは落ち着いたが不安が拭えない。ここまでマジックミラーを凝視されるとは思わなかったのだ。

「ちょっと、カメラに無線繋げるか?」

「出来ますけど、カメラマンが喋ったらバレませんか?」

「広安が離れたら少し話すだけだ。」

 熱尾は水町から片手にちょうど収まる程度の大きさのトランシーバーを受け取った。


 「ノゾキ見!」のカメラマン・板塚(いたづか)は、ひらすら息を潜めながら公衆電話くらいのスペースでテレビカメラを抱え、マジックミラー越しの目の前にいる事情を何も知らない広安を食いつくように映し続ける。

 髪の毛を分け、目やにを取り除く、MCも多く務める人気芸人の素顔が目の前に在った。

 テレビ越しの映像で見るだけではわからない、目の周りのシワや丸みを帯びた八の字のほうれい線がはっきりとわかる。

 しばらくすると、顔の支度に満足したのか、鏡の前から去って行った。

 それを見計らっていたかのように、耳に付けていた通信用のイヤホンから、雑音の混じった男の声が聞こえてきた。

「広安どんな感じだったか?」

 声と口調からして、ディレクターの熱尾トクタカである事はすぐにわかった。

「特にこちらには気づいてない見たいです。」

 鏡から去り、今は広い楽屋の中心にある机に向かって椅子に座る広安に聞こえないよう小声で襟につけられた通信用の小型マイクに向かって応答した。

「なんか変な動きや表情はしてなかったか?」

「いえ、特に。ただ髪とか整えてたくらいです。」

「そうか……わかった。それじゃ引き続き頼む。」

 無線が途切れた。

 最後の「そうか…」の後の間が少し長かった気がした。


 熱尾は頭を抱えていた。

「大丈夫ですよ熱尾さん。本当に外からは見えませんから。」

 水町が落ち着かせるように話す。

「あいつは察しの良いところがあるからな…そこまでとは思わないが…」

 広安と以前から付き合いがあり、彼の特性を知る熱尾が僅かに抱いていた懸念が当たったかもしれない。

 しかし、今はドッキリの遂行に熱を注ぐのだ。

「よし、次行こう。」

 熱尾は、次のドッキリの指示を出す。

 それを受けた水町はトランシーバーを手に取り、別室で待機している倉里に話始めた。

 指示を受けた倉里は次のドッキリの仕掛け人を連れて外へ出た。


 椅子に座ったまま両手を後頭部にあて、大あくびをしながら天井を見上げる広安。

 脚を組み、背もたれにふんぞり返るその姿はどこか大物の余裕を感じさせる。

 その時、ドアを二回ノックする音が響いた。

「どうぞー」

 広安は急いで上半身を背もたれから起こして組んでいた足を解く。

「おぅ、広安。」

「あっ、おはようございます!」

 楽屋に入ってきた初老の男を見た広安は咄嗟に椅子から腰を上げて礼をした。

 やってきたのは広安の芸人としての先輩であり、若手時代によく世話になっていた大物芸人・北森民像(きたもりたみぞう)だ。

「今日は何の仕事?」

 北森が親しげに話しかける。

「今日は、これから特番の街ブラロケなんです。」

 広安も親しげに応える。

「そうか。それにしてもお前は、すっかり成り上がったな。」

「いえいえ、そんな。まぁでも、自分でも何となく来るところまで来たな、という気がしますね。」

 広安が冗談っぽく言う。

「おー言うなぁ。」

 楽しそうに会話をする先輩・北森と後輩・広安。

 その途中、北森は何度か手の平で前髪を撫で上げ、そのまま手の平を後頭部に持って行き頭を掻く。これは北森のクセだ。

 北森と付き合いの長い広安はそのクセを見慣れているので、特に気にしてはいない。

 しかし、会話の中でそれが繰り返される中、広安はあることに気づいた。

 北森が髪を撫で上げる度に見える、薄い横しわの入った面積の広い額の中心辺りに薄赤い何かが見えた。

 キスマークだ。

 広安は最初、皮膚の老化によって生じるシミか、吹出物の痕かと思っていた。しかし、繰り返し北森の額が見え隠れする内に目に映る実像がはっきりしてきた。

「そういえば、北森さんは今日、何の仕事だったんですか?」

 困惑を隠しながら、自然な流れで聞いた。

「今日は、番組の打ち合わせで来て、たまたま広安が来てると聞いたんで来たわけよ。」

 なんだかいつもより受け答えがはっきりしている気がする。

「へぇ、何の番組ですか?」

「サプライズ出演だから言えないな。」

 なるほど…、広安はそれ以上深く聞かなかった。


 一方、別室の熱尾らは北森による広安へのドッキリの様子を伺っている。

 広安のリアクションに夢中になっている熱尾は先程の不安をすっかり忘れている。

「気づいてはいますね。」

 水町は広安の目線や表情の僅かな変化を見逃していなかった。

「あえて言わないつもりなのかもしれないな。」

 熱尾はそう分析した。

「でも、一番お世話になってる先輩のキスマーク放っておきますか?」

 部屋に戻って来ていた倉里も熱尾の隣に腰掛けている。

「あいつはくだらないいたずらとかするからな~。」

「広安さんいたずらっ子なんですか?」

 倉里が苦笑した。

「あ、広安さん、服の方も気にし始めましたよ。」

 水町の一言で、スタッフらが一斉にモニターに食らいつく。

「お、気づいたか?」

「ちらちら見てますね。」

 熱尾と倉里が楽しそうにモニターに映る広安の顔を眺める。

 広安が何度も一瞥しているのは、北森が灰色のジャケットの中に着用している胸の辺りに大きく赤い文字で《BIGMAN》とプリントされた黄色のTシャツだ。

 北森が動くたびに突き出た小太りの腹によって押し開かれたジャケットの間から見えるのだ。

〈北森さん、ちなみに今日それ私服ですか?〉

〈あぁ、今日は私服だよ。〉

 モニターの横に置かれているスピーカーから広安と北森の声が聞こえてくる。

〈なんか、中に着てるのがインパクト強いなと思って…〉

〈あぁ、これ。何年か前に番組のロケのノリで買わされたんだよ。〉

 北森が話しているTシャツを買った経緯(いきさつ)は、「ノゾキ見!」のスタッフから事前に伝えられた作り話だ。

〈へへっ、罰ゲーム的なやつですか?〉

〈そうに決まってるだろ~。誰がこんなTシャツ自分から買うかよ~。〉

〈フハハハハハ!〉

 北森の言葉に広安は口を広げて爆笑した。

「広安さん、どんな感情で笑ってるんでしょうね。」

 倉里は大笑いする広安を見て、自分も笑いが込み上げてきてしまった。

「広安からしたらコケにされてるも同然だからな。」

 熱尾も笑いで体を震わせている。

 実は、北森が着ている《BIGMAN》と印刷されたTシャツは、広安が無名の若手だった頃に衣装として着用していたTシャツと同じものなのだ。

 このドッキリは、広安に自分の若手時代の記憶を思い起こさせる物品を見せ、さらにそれを酷評したらどんなリアクションをするかという検証ドッキリだ。

〈いくらぐらいしたんですか?〉

 広安が笑いながらTシャツの値段を聞く。

〈確か…三千円くらい。〉

 値段設定は事前指示をしていない為、北森のアドリブだ。

「若手時代の話、しませんね。」

「しないだろう。あえて言わないんだよ。」

 熱尾がニヤニヤしながら言った。


 北森が楽屋を去った後、今日のロケについての打ち合わせが始まり、それも終えるとトイレに行き、再び部屋へ戻ってきた。これから始まるロケの出発を待つ。

 トイレに行き来する道中では特に違和感は無かったが、今日はやはり何かがおかしい。

 広安は楽屋に戻ると、当たり前のように組み合わせた両手を頭の上に置き、天井を見つめる。

(北森さん、何であのTシャツ持ってんだよ…)

 あくびをしながらくつろいでいると、ドアをノックする音が響いた。

「はーい、どうぞー。」

 頭に置いていた手を膝元に移す。

「失礼します。」

 入ってきたのは小学校四、五年生くらいの少女だった。

 広安は、子どもがやってきたことに困惑したが、少女を見るとどこか見覚えがある。

「初めまして、子役の光木(みつぎ)ひいと申します。」

 少女は広安に向かって丁寧に頭を下げた。

 広安は、既視感の正体を理解した。この少女は最近、連続ドラマに出演し話題となった子役だ。

「あ、どうも、広安祐吉です~」

 子どもの相手はさほど得意ではないが、とりあえず笑顔で返した。

「今、お時間大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ~呼び出されるまでなら。」

 広安は、自分の向かいの席を手で示した。

「失礼します。」

 光木は広安の示した椅子に腰かける。

「私は今日、お仕事で来たんですけど、広安さんがいると聞いて、是非ご挨拶したいと思って来たんです。」

 随分出来た子どもだ。挨拶から話し方まで大人びている。

「あ、そうなの~? 今日はお仕事は何しに来たんですか?」

「バラエティ番組の打ち合わせです。」

「バラエティか~。バラエティなら、僕とも一緒になるかもね~。」

「広安さんは、バラエティですごく活躍されてますもんね。」

「おかげさまで~。」

「でも、大変じゃないですか?」

「そりゃ、大変だよ~」

「そうなるとやっぱり…これの方もすごかったりするんですか?」

 光木の人差し指と親指が作り出した"円"に広安は苦笑するしかなかった。

 品行方正だと思っていた少女に何故いきなり自分のギャラ事情を聞かれるのだ?子どもの好奇心だろうが、にしても旺盛すぎる。

「あぁ…まぁ、まぁ、それなりに貰ってるよ…。(俺は一体、誰に何を言っているんだ?)」

「やっぱり、そうですよね!」

 光木が目を輝かせている。

「うんうんうんうん、そうですよ。」

「数字じゃ、ダメですか?」

 光木の鬼のような好奇心に広安は笑うしかない。「どつきまわそうか?」とでも言ってやろうと思ったが、相手が相手なのでここは控える。

「何でそんなに知りたいの?」

 笑いで体を震わせながら聞く。

「だって、気になるじゃないですか~。」

「人の収入知ったところで自分になんか得あるの?」

「広安さんの裏側が知れたとか?」

 目の前の少女がもう、悪魔にしか見えない。

「もうやめようよ、この話。」

 なんとか話を逸らそうと図る。

「そうですか…わかりました。」

 光木はすんなりと広安のギャラ事情を聞くのをやめた。

「じゃぁ、私と遊んでくれませんか?」

 光木の言葉に広安は地獄を直感する。

「何して遊ぶの?」

 心がビクビクする。

「じゃ~、手を重ねるやつ。」

「あぁ、一番下の手が一番上の手を叩くやつ?」

「そうです。それしましょう。じゃぁ、まず私から。」

 光木は、自分の片手をテーブルの上に置いた。

 続いて広安もその上に自分の片手を置く。

 お互いの手を互い違いに置いた後、光木が広安に話しかけ始める。

「手の平、柔らかいですね。」

 油断させに来たな。

「でもなんか、少し湿ってる。」

 さっきの話で君が焦らせたからだよ。

「お給料気になるな~」

 まだ言うのか君は。

「さっきは必死に隠してましたね。」

「そりゃだって君に言ったと…痛って!」

 光木の手の平が広安の手の甲に勢いよく降りかかってきた。

「イェーイ、勝った!」

 何だコイツ。子どもの割に力が強い。

「じゃぁ、次は広安さんが下で。」

「やってやるからな。」

 広安は腕をまくった。

 しかし待てよ、相手は子どもだ。しこも女の子。成人男性である自分がそんな相手に本気でいくわけにはいかない。

 広安は、光木と手を互い違いに重ねながら考えを巡らせる。

「まだですか?」

 そう話しかける光木に広安は不気味なニヤニヤ顔を見せつける。

「俺のギャラそんなに気になる?」

「気になります!」

「へぇ~。でも君のは教えてくれないんだ~。」

「先月、五百万です。」

「へ⁇」

 あっさり答えた光木に唖然とする。

「早く!」

「ああっ…あ痛って‼」

 困惑していた広安はあっけなく光木にかわされ、逆に手を叩かれてしまった。

「勝った!」

(クソガキぃ…)

 手の甲が火花が散るように痛む。

 スタッフはまだなのか?

 広安は、自分をここまで連れてきてくれた女性ADや打ち合わせに来た若そうな男のディレクターに恋しさを抱き始めた。


「「「ハハハハハハハハハハ‼」」」

 モニターの前で「ノゾキ見!」のスタッフたちが体を揺らしながら高笑いしている。

「子どもにやられる広安さんなんてなかなか見れないですよ!」

「すげー良い絵が撮れたぞ!」

「しかも、二回やられた!」

 光木ひいは、「ノゾキ見!」が送り込んだドッキリの仕掛け人の一人だ。子どもから失礼な質問をされたり、弄ばれたりするというドッキリである。

「ひいちゃん、すごいですね。あんな瞬時にギャラのアドリブ返せるなんて。」

 光木の言った「先月のギャラが五百万円」というのは、作り話。当初の予定にはなく、広安のリアクションに合わせた光木の完全なるアドリブである。

 部屋の中は広安の無様ともいえる有り様への爆笑が止まらなかった。

「そ、それじゃぁ、そろそろロケのドッキリいこう。」

 熱尾が腹を抱えながら次の指示を出した。


 広安は少々やつれた顔で天井の蛍光灯を見つめていた。

 さっきまで、悪魔のような子役少女に思うがままにされ、これからロケ仕事が始まるというのにもう疲労感が降りかかってしまった。

 今日は一体なんなんだ?

 局の入口で警備員に止められ、楽屋で子役に振り回され、何かが変だ。

 二年程前から急に人気が上がって以降、レギュラー番組や冠番組、さらにはコマーシャルの仕事も決まるなど、良い事ずくめだったために、今日、その二年分の良い事が悪い事として一斉に返ってきているのか?

 だとしたら今日はとにかく注意しなけらばならない。

 有名人、特に人気者は何かをやらかしたら、たとえ些細な事でも、人生を大きく揺るがすことがある。

 テーブルの上のペットボトルの水を一口飲み、気を引き締める広安。

 その時、ドアをノックする音がした。一瞬、誰が来たのかと身構えたが、さっきの女性ADがロケの出発を知らせに来ただけだった。

 立ち上がり、廊下に出て女性ADの背中について行く。エレベーターを待っている間も気を抜かないように背筋を張る。

 エレベーターのドアが開くと、小道具などを持った別番組のスタッフが先に乗っていた。よく見るとさっき局へ入った後、楽屋へ向かう廊下ですれ違ったのと同じ集団だ。

 妙に髭の濃い黒縁眼鏡の男もいる。

 その男を見ると、なんだか自分がまだ弄ばれているような気がしてならなかった。


 最初のロケは食レポだ。

 ロケバスで撮影現場となる洋食屋付近まで行き、そこから少し散策した後、洋食屋に到着、という流れだ。

「おはようございます!」

 ロケバスから降りると元気な若者の声が聞こえてきた。

 「あ、マブメートの人だ。」

 若者の名は宮原敦哉(みやはらあつや)

 広安の冠番組の一つであるネタ番組、「広安グランプリ」で最近、その回の広安のお気に入りになった芸人に贈られる「広安賞」を獲得したお笑いコンビ・マブメートの片方だ。

 今回のロケでは、彼ともう一人、飲食店で待っている女性タレントが、広安のお供として同行することになっている。

「先日はありがとうございました。」

「あぁ、とんでもない。調子はどう?」

「絶好調です。」

「アハハ、そうじゃなきゃね。」

 簡単な会話を交わした後、ロケが始まった。


「マジックミラー、見えてなかったよな?」

 大通りを走行する十人乗りワゴン車の四人掛け後部座席に熱尾が腕を組んで座っている。

「大丈夫ですよ、ちゃんと確認しましたから。熱尾さんも見たでしょう。」

 後部座席の一列前の二人掛け座席に座るのは、美術スタッフの上津(うわつ)だ。

「あいつの勘、ナメてたかもな~。」

 熱尾が頭を掻きむしった。

「何でそんなに広安さんが気づいてると思うんですか?」

 上津の座る座席の前列の座席に座る水町が熱尾の方に振り返る。

「あいつ…俺が女の子とイイ感じになってるとすぐ見抜くんだよ。」

 車内が沈黙に包まれる。

 水町と上津はこの上ない真顔だ。唯一、運転手だけが小さく鼻で笑っていた。

 沈黙を破ったのは、水町の傍らに置かれていたトランシーバーだった。

「偽ロケ、始まったみたいです。」

「そうか。」

 再び沈黙が始まった。


 アーチ状の窓と、こげ茶色の木の柱や板張りの床が異国の雰囲気を醸し出す洋食屋で広安一行は食レポロケに臨んでいた。

「今回、一品目はオムライスだそうですよ。」

 洋食屋で合流した女性タレントは胸より上のホクロ一つない肌を白いきつそうな衣装から大胆に露出させている。

 女性タレントに向かい合うように座っている広安は、「お~、洋食屋って感じだねぇ。」と、いつも通りの調子でトークを続けるが、目の前の色気むき出しの衣装が気になってしょうがない。

(深夜放送だからか?)

 このロケは、青少年が眠っているであろう深夜に放送されると聞いている。

 だが、こんな温泉番組でよく見るタオル一枚巻いただけのような衣装など街ブラロケに着ていくようなものではない。

「広安さんは洋食屋には普段、行かれるんですか?」

 広安の隣に座る宮原は、目の前の色気全開衣装女には目もくれず、平然とトークを続けている。

 こいつは色目に惑わされないタイプなのか? それとも最近、名を挙げて今が大事な時期であるから張り切っているのか?

 それとも……

 広安は平静を装い、トークを続けながら脳裏でそんなことを思い巡らせていた。


(惑わされてんな~)

 板塚は、嬉々として広安のリアクションをカメラ越しにに見物していた。

 この洋食屋では、広安に三つのドッキリを仕掛けることになっている。

 一つ目はもうお分かりだろうが、お色気ドッキリである。

 真正面にタオル一枚だけを巻いたようないやらしい衣装を着ている美女を目の前にして、広安はどう反応するのか、という内容だ。

 広安はいつも通りの感じでトークを展開しているが、既に何度か美女の胸元辺りをチラ見しているのを板塚は、はっきりと確認した。

 そうこうしている内に、一品目のオムライスが広安たちのもとへと運ばれてきた。

 広安たちは、右半分にデミグラスソースがたっぷりかけられ、左半分に露出した黄色い薄焼き卵が輝く誰もがおいしいと確信できるオムライスを見て、一気に上機嫌になっている。

 広安の気持ちも完全に目の前のいやらしい美女から眼下のオムライスへと向いている。

 板塚も食欲が湧くあまりついドッキリのことを忘れそうになってしまった。

 いかんいかん。今は広安のリアクションの記録に集中するんだ。それに、そもそもあのオムライスも広安へのドッキリの刺客の一員なのだ。


「いただきま~す」

 女性タレントが一番最初にオムライスを口に運んだ。

 彼女のコメントを聞いていると、スプーンに早く手を付けたくてたまらない。

 広安の食欲は、女性タレントの衣装のことを完全に忘れさせていた。

 この日は洋食屋で二品を頂くと聞いて、朝食はチョコチップが入った細長いパン一本しか食べてきていないのだ。

 宮原も一口喫食してコメントを残し、ついに広安の番だ。

「それでは、いただきまーす。」

 デミグラスソースがかかっている部分をスプーンですくい取り、小学生の握りこぶしくらいの大きさの一口を口内へ入れ込んだ。

「うーん!」

 ほぼ昨夜ぶりの食事に喜びが覚醒する。

「あぁ~やっぱりソースだね~」

 ソースが口の中で卵や米に絡み合う。

 ソースが米の味を引き立てる。

 引き立てられた味が……ん?

「家でも食べたいですね~」

 宮原と女性タレントは大満足の表情だ。

「店主お持ち帰り出来ないかな?」

 広安のボケで店内は爆笑に包まれたが、広安の口内はそれどころではない。

 なんだか舌の表面に刺激を感じるのだ。しかも卵が甘いと聞いていたが、甘味なんて舌のどこにも感じていない。むしろ、塩を食べているようだ。

 広安が抱いていた疑惑が徐々に確信に変わりつつあった。

「お客さんにこの味を愛していただいて、本当に光栄です。」

 幼児向けアニメに出てきそうな穏やかなおじいさん風の店主が笑顔を浮かべている。

 もし、疑惑が間違いであったら……

 広安は口の中の激しい刺激と強い塩気に耐えながらオムライスを完食した。


 広安らがいる洋食屋から少し離れた駐車場に止められているワゴン車の中では、熱尾ら「ノゾキ見!」のスタッフたちが、モニター画面に目が釘付けになっている。

「広安さん、気づいてますよね。」

 トランシーバーを片手に持った水町が画面に映し出されている広安の表情を伺っている。

「ヒヒヒ、見ろよこのしかめっ面!」

 熱尾が激辛ケチャップライスと激塩薄焼き卵に静かに苦しむ広安の表情をみてはしゃいでいる。

「この衣装もよくできてますね。」

 水町がお色気ドッキリの仕掛け人の美女が着た大胆な衣装を画面越しに指さす。

「あれ、ああ見えても、ホント作るの大変だったんだから。素材とか、ずれ落ちないようにしたりとか。」

 上津の表情からは、この衣装の制作への苦労が伺える。

 この衣装の制作は美術スタッフである上津が中心となって行っていたのだ。

「ちなみにこの衣装は誰が思い付いたんですか?」

「あぁ、俺。」

 熱尾が手を挙げた。

「熱尾さんだったんだ。(やっぱり…)」

「因みに"あの人"にはまだ気づかないんですかね。」

 上津が広安が映っているものとは別のモニターに目を移した。

「気づかないだろ。こんな完璧に変装してるんだから。」

「しかも、しばらく会ってないんですもんね。」

 熱尾らがやり取りを続けている内に、広安たちのもとへ、二品目のナポリタンが運ばれてきていた。

「おっ、来たぞ。これは効くだろうな。」

 熱尾のワクワクが止まらない。

 二品目のナポリタンにはタバスコを加えたケチャップソースを絡めている。

「辛さ調整は大丈夫か?」

「市販されてるやつの三分の一くらいを使うように指示してあります。」

 あまりにも激辛だとドッキリだとすぐにバレてしまうため、不自然に辛味を感じる程度に辛さを薄めてある。

 まず、宮原と女性タレントが普通のナポリタンを一口喫食した。続いて、広安がタバスコ入りナポリタンを食べる。

 熱尾たちが広安の顔を映したモニター画面に注目する。

 咀嚼する広安の口が二秒ほど止まったように見えた。しかし、何事もなかったかのようにレポートの続きを始めた。


(はい、もうわかった! はい、気づきました!)

 広安は口に広がる地味な痺れを堪能しながら疑惑を確信へと変化させた。

 テレビ局に入った時からずっと何かがおかしかた。

 警備員に止められ、北森に若手時代の衣装をディスられ、子役に振り回され……そして今、色気全開衣装女の目の前で舌を辛味に侵略されている。

(この俺にバレないとでも思ったか?)

 楽屋の入口の近くに貼られていた少し汚れた鏡にも何となく違和感があった。

 さっきのオムライスや今、食べているナポリタンも全員分を店主一人が作ったなら、俺だけが辛さを感じているはずがない。

(こうなったら喜んで受けてたとうじゃねぇか。)

 朝から地味に何度もたぶらかしやがって、どこの番組だ? 誰が考えた? こんな地味に精神すり減らすやり方をするのは……大体、予想がつく。

(やっぱ、あの男か?)

 広安の心にメラメラと対抗心が燃え上がり始めた。

(ヤロー、見とけよ…)

 燃える心を周囲に悟られないように、笑顔でナポリタンの最後の一口を飲み込んだ。


 走行中のワゴン車の中に熱尾、水町、上津、そしてドッキリの現場から戻ってきた板塚と倉里が乗っている。

「広安、もうわかってるだろうな。」

 後部座席に座る熱尾が腕を組んでいる。

「さすがにタバスコは強すぎましたかね。」

 運転席のすぐ後ろの座席に座る倉里。

「マジックミラーの一件、まだ引きずってるんですか?」

 倉里の真後ろの座席に座る水町。

「こうなったら…勝負だ。」

 熱尾が自分の両拳を互いに三回ぶつけ合わせる。

「勝負って?」

「広安はもう既に警戒してるはずだ。だからこの後のドッキリもすぐに気づくだろう。」

 運転手以外のスタッフたちが熱尾の方を向く。

「この後のドッキリは俺が直接、無線で指示を出す。」

 水町と倉里が同時に「えっ!」と驚く。

「一人で、ですか?」

「あぁ。こっからは俺と広安の勝負だ。」

 熱尾の顔が一気に鋭くなる。

「指示って言っても、もうある程度の動きは確認済みですけど…」

「無線で予定変更と伝えてくれ。」

「マジすか?」

 突然の急展開に困惑する水町。言われるがままに次の現場のスタッフたちへ無線で連絡を始める。

 水町の隣でカメラを膝に置きながら窓際の座席に座っていた板塚は半ば呆れたような笑顔で外を眺めていた。


 広安はロケクルーたちと共に車が行き交う大通り沿いの広い歩道を練り歩いていた。

 目の前のテレビカメラの画角に収まるように宮原と女性タレントが広安を中心にして横に並んでいる。

 女性タレントは、膝辺りまで隠れるロングコートを着ている。テレビ撮影とはいえ、さすがにあの恰好で外を出歩くわけにはいかないのだろう。

「広安さん、すごい真顔ですよ。」

 広安の右側で歩いている宮原がバラエティ番組のノリでツッコんできた。

 口の中にはまだオムライスやナポリタンから得た刺激が僅かに残っているのだ。

「ああ、完全にいつもの散歩気分だった。」

 広安は、何とかボケで切り返した。

(いかん、いかん。)

 いつ来るかわからない次の仕掛けに警戒するあまり、ロケの事が頭から離れてしまっていた。

 というかこのロケ自体、仕掛けの一つだろう。つまり、両隣にいる二人も目の前のスタッフたちも所謂(いわゆる)"仕掛け人"と呼ばれる役割を担っているということだ。

 広安は大前提ともいえることに今頃気づいた事に軽く悔しさを覚えた。

 その悔しさは、カメラマンの隣について歩く、キャップ帽を前後逆に被ったロン毛の無精髭のADを見ていると余計に……なんだか、直ぐ近くに動く仕掛けがあるような……。


(俺、いつになったら気づかれるんだろう。あっ、今は気づかれない方が賢明か。)

 西塚則史(にしづかのりふみ)はスタッフの中に紛れて真顔で広安を眺めていた。

 今朝、テレビ局の廊下で広安と二度もすれ違った。

 毛量の多い付け髭と黒縁眼鏡を顔に纏っていた上、スタッフたちの中に混ざっていたのでそもそも気にされないだろうとは思っていた。

 予想通り広安は俺をスルー。そんな様子を見て最初の内は思わずウキウキした。

 しかし、時間が経つに連れて徐々に虚しさを覚えるようになった。バレるか、バレないかのスリルも今はもう、どうでもよくなっている。

 変装を毛むくじゃらの黒縁眼鏡からロン毛の無精髭に変えてまた別のスタッフを装い、ロケに同行しているが、広安は一向に気づかない。気づかれないようにしているから当たり前だが、相方を数時間も前にしているのに、そろそろ気づいても良いのではないか、と思ってしまう。

 広安とは二十二年前、互いに二十歳の時に「狛犬刀(こまいぬがたな)」を結成し、お笑いの世界に入った。結成して五年ほどでブレイクし、三十歳になるころに仕事が安定。それからしばらく「狛犬刀」の活躍度合いは平行線をたどっていたが、五年前から自分は執筆活動を開始し、初めて出版した書下ろし小説が話題となり、それから小説や脚本などの執筆活動が中心になった。

 一方、広安は司会の才能を開花させた。

 それ以来、世間からは「作家の西塚・司会の広安」と言われるようになり、徐々に仕事も別々になることが増え、最後に顔を合わせたのはもう一年半前になる。

 今回のドッキリには、知り合いでこのドッキリ番組のディレクターである熱尾トクタカから「ドッキリ番組で広安へのドッキリをするからそれに仕掛け人として加わってほしい」と直接オファーを受け、参加することになった。

 相方を驚かすというニヤけが出るような喜びと広安に久々に会えるという楽しみからドッキリ当日までソワソワしていた。

 が、さっきの食レポで立ち寄った洋食屋を出て、再び町を歩き始めたあたりからは焦りのような感情が沸々と高まってきている。

(相方だろうが! 頼む! ()()()()()()()()気づいてくれ!)

 西塚の広安への心の叫びが響いた。


 歩を進める広安一行は、海沿いの広場へと到着していた。

 ここに着くまでに広安への仕掛けと思われる出来事がいくつか起きた。

 町中を歩いていると、子どもや老人、親子連れといった集団と何度かすれ違った。その度にの広安だけは見向きもされず、宮原と白タオル女ばかりに歓声が響いたのだ。

 商店街で青果店の前を通った時には、店先の棚が壊れ、大量のリンゴとオレンジの雪崩が広安を襲った。広安とカメラマンの間に横から大量のオレンジが崩れて散乱し、思わず立ち止まった広安をリンゴの軍勢が真横から急襲した。その時、宮原と白タオル女は広安よりわずかに後ろに立っており、恐らくつま先くらいにしか被害を被っていないだろう。

 更に、商店街を歩いている時に変な男が人ごみに紛れながら広安の頭を発砲スチロールの角棒で五回も叩いてきた。柔らかいスチロールとはいえ角が当たればそれなりに痛い。

 日が西側に傾き、ロケも終盤に近付いてきた。

 今日のロケは東京湾とその向こう側のビル群を一望できる海沿いの広場でお開きとなる。

「あ~風がいいね~」

 海沿いに吹く風を体で浴びる広安。

「もうそろそろ日が落ちてきたら絶景ですよ。」

 宮原も海が広がる景色を楽しんでいる。

 小洒落た石タイルの地面の上に立ち、広々とした海を眺めるという開放的な空間に心穏やかになる広安だが、まだ気が抜けない状況であることは忘れていない。警戒の緩和と緊張が入り混じる。

(終盤ってことは最後の派手なやつが待ってるってことだよな。)

 いつ発動されるかわからない最大の仕掛け……美しい海で恍惚としたこの心はいつ、どのようにかき乱されるのか……。


 海原が一望できる海沿いの建物の一角で「ノゾキ見!」スタッフたちが最後のドッキリに向けて慌ただしく動いている。

「通信マイクは?」

「あっちです。」

 水町はそう言うと、通信マイクが置かれた窓際の机に熱尾を案内する。

「よっしゃーやってやるわ!」

 熱尾は椅子に座ると、思い切り肩を回した。

 今から始まるのが今日の広安への最後にして最大のドッキリになるのだ。

「見てろよ、腰抜かせてやる。」

 既に広安にドッキリだと気づかれているのを悟ってはいるが、広安に対する闘志は煮えたぎっている。

「いきり立ってるな~熱尾さん。」

 熱尾を背後から遠目で見ていた上津が呟いた。

「本当ですよ、もうドッキリじゃなくて戦いがメインになってますもん。」

 熱尾の燃えようはドッキリの内容変更に色濃く表れていた。

 広安が一般人に見向きもされないドッキリでは、当初、広安の両隣で歩く宮原と女性タレントだけが普通に握手や写真を求められるというだけだったが、熱尾はその上で、やたら騒いで広安が仲間外れにされている様子を強調するよう指示を出した。

 さらに、商店街での不審者にスチロールの角棒で殴られるドッキリでは当初、三回叩く予定だったのを五回に増やした。

「最後はどうなることやら。」

 上津が作業をしながら呟く。

「こっちとしては無事に終わってくれさえすれば良いんですけどね…」

 熱尾を火種とする炎の陰でスタッフたちはただ黙々と準備を進めている。


「休憩入ります。」

 カットがかかるとともに女性ADが声を上げた。

「この後、ラストのコメント撮りで本日の撮影終了となります。」

 ストロー付きキャップで口が閉められたペットボトルの水を持ってきたADからこの後の流れを伝えられる。

 広安は「はい、はい」と答えながらそれを聞く。水を飲んでいる間も目は広場のあらゆる場所に向かってチラチラと動いている。

(さぁ、どこだ、どこからくるんだ?)

 警戒心全開の広安。もうドッキリであることはわかりきっている。

 広安の目がベンチにたむろするヤンキーっぽい風貌の四人の男たちを捉えた。何か会話をしているようだが、こちらには聞こえない。

 その他にも腕を組んで歩くカップル、スーツ姿のサラリーマンたち、親子連れ、二十歳前後の女の子たちの集団……などなど、様々な人々が広場に集っている。

 広安は、ここにいる人物全員が仕掛け人として動き始めるのだろうと睨んでいる。その為にこんな広い場所を最終決戦場として選んだのだろう。そんな想像が頭を巡った。

「それではそろそろ…」

 女性ADがそう言いかけた時、広場の中心がからどすの利いた声が響いた。

「んだおい!」「失せろ!」「やるかコラ!」「こいや!」

 突然の罵詈雑言にスタッフや周辺の人たちは騒然とする。

 どういう経緯(いきさつ)かは知らないが、後からやってきた別の二人のヤンキーが四人組ヤンキーたちと張り合っているのだ。

 広安は最初こそ驚いたが、異様な出来事にはもう慣れたようなものなので、瞬時に平常心に戻った。周囲の反応も作り物としかとしか見えなくなっている。

「え? 何、何?」

 女性タレントも驚いた感じを出しているが、それを見ると余計にこの状況の白々しさが増す。

「覚えたからな。待ってろよ。」

 そういうと、二人組ヤンキーは四人組ヤンキーたちに因縁めいたものをつけて去って行った。

「どうします? 始めます?」

 軽く戦慄した"演技"をしているであろう宮原。

(頑張れよ若手。)

仕掛け人として精一杯、演じているであろう宮原につい心の中でエールを送ってしまった。

「それではいきます。」

 スタッフの掛け声でロケのラストシーン撮影が始まった。

「広安さん、今日の街巡りはどうでしたか?」

「そうだね、もう一回あの洋食屋行きたいね。」

「確かにあのオムライスとナポリタンは忘れられないですね。」

「本当だよ。(いろんな意味で忘れらんねぇよ。)」

「商店街の人たちも優しい方々で」

「平和だったねぇ~(俺を除いてな。)」

 何事もなく最後のトークが進んでいく。

「それでは今回の『寄り道ロード』はこちらで…終わ……」

 宮原のセリフが止まる。同時に女性タレントも広安の後ろに後ずさる。

 先程、一悶着を起こして去って行った二人組ヤンキーが徒党を組んで戻ってきたのだ。ざっと二十人程はいるだろう。手にバットや角材を持ち、ベンチにいる四人組ヤンキーに徐々に近づいていく。

(あ~これか?)

 広安はさほど驚いていない。

「ゴルァ!」「オイ!」「んだオラァ!」「×すぞゴルァ!」

 ヤンキーたちの取っ組み合いが始まった。


「やっちゃって、どんどん激しく!」

 熱尾が窓からロケ隊の様子を遠目で見ながら通信マイクに向かって叫ぶ。

 その隣で水町は双眼鏡で広安たちの様子を観察する。

 広安へのドッキリのフィナーレを飾るのは、大勢のヤンキーたちの乱闘に巻き込まれる「現場大混乱ドッキリ」だ。

 ヤンキーに扮しているのはエキストラと格闘を得意とするスタントマンたちである。激しく小競り合いをしているのがスタントマン、その他はエキストラである。偽ヤンキー軍団たちは耳に肌色の小型無線ワイヤレスイヤホンを仕込んでおり、そこへ通信マイクから送られてくる熱尾の指示が聞こえている。

 最後かつ最大のドッキリである上、広安が既にドッキリを察している事を悟っている為、今の熱尾はこれを広安との全面対決だと意気込んでおり、隣にいるとやたらと暑苦しい。

「よし。次、第二陣いっちゃおう!」

 マイクを掴んで激しく叫ぶ姿はまるで馬券を買った競馬の実況者だ。

「どうだ⁉」

「移動してます。」

「貸せ貸せ」

 熱尾が水町から双眼鏡を分捕る。

 広安の向こう側から更なる偽ヤンキー集団が迫っていた。


「一旦、離れましょう!」

 あたふたするスタッフたちが広安にはもはや滑稽に見える。

 一応、まだ気づいていない(てい)なのでスタッフたちと共に現場から離れていく。

 しかし、もちろんこれで終わらないことは広安にはもうわかる。

 ヤンキーの徒党がやってきた方向とは反対側の方向から別のヤンキー集団がやはりバットや角材を持ってぞろぞろと現れたのだ。ロケ隊の退路はあっという間に塞がれてしまった。

 そしてついにはロケ隊の目と鼻の先でヤンキー集団同士の大乱闘が始まった。

 広安はとにかくニヤけるのを我慢しようとしているが、どうにも耐えられない。広安がこの仕掛けの黒幕だと思っている人物がいかにもやりそうなことだったからだ。

「何撮ってんだゴルァ!」

 カメラマンのテレビカメラが自分たちに向けられていることに気づいたヤンキーがこちらに向かって叫んだ。

 その言葉を合図にするかのように細長い鈍器を持った数名のヤンキーがロケ隊に向かって歩み始めた。

「キャーッ!」

 白タオル女が叫ぶ。

 広安は半ば呆れていた。

(いい加減そのコートの中のクソみてーな衣装、何とかしろよ!)


 熱尾の燃え具合が最高潮に達している。

 偽ヤンキー集団役のスタントマンの一部をロケ隊襲撃に投入した。

 当初は二つの偽ヤンキー集団にロケ隊が挟まれ、広安だけが取り残されて揉みくちゃにされ終了、という形だったが、より緊迫感を味合わせるために、じわじわと詰め寄るという形に変更した。目の前で激しい乱闘を見せつけ、恐怖心を煽った上で直接攻撃に移るという作戦だ。

「A班1番から5番の方とB班1番から5番の方はロケ隊の方へ向かってください。」

 熱尾の指示が飛ぶ。

"声も顔もうるさい"

 左側から熱気を感じている水町から見て、今の熱尾はそんな感じだった。


 ヤンキーたちはついにスタッフたちに手を出し始めた。ロケ隊は混乱状態。広場中に圧倒されたスタッフたちが散り散りになっていく。

 広安は所々にある違和感を見逃さなかった。

 白タオル女は一足早くロケ隊から離れた。当惑した顔をしているが、少しは右往左往していもいいものを、一か所で直立して微動だにしない。

 カメラマンはカメラを下ろしたものの、腕で抱えてレンズは混乱した現場でウロウロしている広安にしっかりと向けられている。

 二人の大根役所のせいでこの状況の作り物感がさらに増してくる。

 一方、宮原はスタッフたちと一緒になって逃げ惑っている。やはり、彼は良い若手だ。

「おい広安だぞ。」

 ヤンキーの一人が黄色いバットで広安を指した。にしても軽そうに持っている。

 それを聞いたヤンキーたちは一斉に広安のもとへ詰め寄って来る。

「ナメんじゃねーぞコルァ!」

 取り囲まれ罵倒されながら肩を押されたり、胸ぐら掴まれたりなどされるがままの広安。

(かぁ~暑苦しいな。)

 無言かつ無表情の広安は窮屈さに耐えかね始めた。


「いいですよ~どんどん詰めてください!」

 ヤンキーに大挙襲来され滅茶苦茶にされるみじめな広安を見て大喜びの熱尾。

「板塚、撮れ!撮れ!」

 現場にいるカメラマンの板塚にも惜しみなく指示を飛ばしまくる。

 水町は引き気味で熱尾の隣でじっとしている。

「は? 待て、何やってんだアイツ⁉」

 突然、熱尾の表情が驚愕し、連投されていた指示が止まった。


「ボラァーーッ‼」

 広安は突如、絶叫し腕を振り上げた。

 広安を囲っていたヤンキーたちは思わず後ずさり、呆気にとられた様子でピタリと止まる。

「んだクソどもー‼」

 仕返しのつもりなのか、ヤンキーの一人に飛び掛かりヘッドロックを見舞った。ヤンキーは広安の腕を振りほどこうともがく。

「何してんだ!」

 他のヤンキーたちが広安に近づき始めた。ぽかんとした顔から急に表情を変えたので何か裏が見える。

 一人のヤンキーが広安の後ろから腕を取り引っ張る。それに応じて広安は相手をそのヤンキーに変え、そいつのこめかみを右手の親指と中指で素早く鷲掴みにした。

「痛ててててててて!」

 ヤンキーが苦悶の表情を浮かべて怯んだ。


「熱尾さん、ヤバいですよ!」

 大暴れする広安を見てスタッフたちが慌てふためく。抵抗されることは想定内だったが、ここまでとは思っていなかった。

「今、スタントマンに抑えるように頼んでるから!」

 さっきまで赤かった熱尾の顔が徐々に青色に変色していっているのがよくわかる。

「いや、そのスタントマンでも広安さんには手、出しにくいですって!」

 自分が常人より力の強いことを理解しているスタントマンは、並みの力であろう広安に本気で立ち向かうことが出来ない。

「じゃ、どうする⁉」

「それじゃ…西塚さん!」

 水町は「再会ドッキリ」のために現場にスタッフに化けて紛れている広安の相方・西塚則史の名前を挙げた。

「そうだ。それでネタばらしだ!」

 力強く掴まれた通信マイクに新たな指示が飛んだ。


 目の前で闘牛のようになっている相方をただ見つめることしかできない西塚。

〈西塚! もう正体バラして良いから広安を止めてくれ!〉

 耳に付けていたワイヤレスイヤホンから熱尾の声が聞こえた。

(は? 俺が?)

 西塚は困惑した。

(でも、広安に真っ向から挑めるのは…相方の俺しかいない!)

 西塚は決心し、歩を進め始めた。

「おーーーい!」

 駆け寄って来る西塚の叫び声に気づいたヤンキーたちの間を駆け抜け、広安へと掴みかかる。

「もう終わりだー! 広安!」

 キャップ帽とロン毛のカツラを一気に脱ぎ捨て顔を開放した。

「俺だー! 西塚だー!」

「わかってるわぁーー‼」

 西塚はあっという間に広安に放り投げられた。

(え? なんで?)

 西塚がそう思うのは無理もない。


「だぁ~もう何なんだアイツ!」

「熱尾さん、もう僕らも行きましょう!」

 水町がそう言うと、熱尾は立ち上がり、建物の出口に向けて駆け出す。その後に続いて水町も駆け出して行った。


「オラァーーッ!」

 広安はヤンキーの一人を持ち上げた。

 ヤンキーたちは手に持った武器を広安に向けたまま動かない。戦意を失くし始めたのか? それとも指揮系統を失ったのか?

 広安対ヤンキーの乱闘も終盤に差し掛かったその時、広安を呼ぶ叫び声が聞こえた。

「広安ーー!」

 広安の知り合いのテレビディレクター・熱尾トクタカだった。


 水町とともに闘技場と化したドッキリ現場へやってきた熱尾。水町の後ろからは心配のあまりついてきた上津もいる。

「広安ーー! もう止めろーー!」

 走りながら叫ぶ熱尾。

「ト・ク・タ・カ、コルァァァァァーー!」

 広安は熱尾の声を認識した瞬間、持ち上げていたヤンキー役のスタントマンを足から綺麗に着地するように地面に置き、ドスの効いた声で熱尾に向かって駆け出した。

「ほぅら、お前だろうなぁ~‼」

 興奮状態の広安は殴りかかる勢いで飛び掛かり、熱尾はヘッドロックの餌食となった。

「おぉい! 何すんだ‼」

 熱尾は広安の腕を振りほどき、広安の胸ぐらに両手で掴みかかった。

 負けじと広安も熱尾の腕と肩を掴んで応戦する。

「弄んだろオレのことよぉぉぉー!」

「芸人だろオメェわよぉぉぉー!」

「こっちゃぁ一流だぞ!」

「俺は一流ディレクターだぞゴラ!」

「誰がお前、一流っつった!」

「お前よりは上だオラ!」

「はぁ? バラすぞお前がこの前、風…」

「だまれぇ! ゴラ!」

 止まらない取っ組み合いと罵詈雑言。二人はお互い倒されまいと押し合い、掴み合ったまま回ることもあった。

「「「………」」」

 周囲のスタッフや仕掛け人の出演者たちは動きを止め立ち尽くし、眼前で繰り広げられる芸人とディレクターの大バトルを呆然と見つめていた。

「熱尾さん…何しにきたの?」

 ずっと広安との偽ロケに同行していた倉里は熱尾と共にやってきた水町に聞いた。

「まぁ…広安さん止めにきたんだけど…」

 水町もこの状況がよくわからない。

「板塚さん、何やってんすか?」

 板塚は、下ろしていたカメラを再び肩で抱え、いざこざの様子に向かってレンズを向けている。

「大物ディレクターと大物芸人の喧嘩……こんな貴重な絵はなかなか取れないぞ!」

 どうやらこの状況によってテレビカメラマン魂が点火されたらしい。

「広安さん! 熱尾さん! もうやめましょうよ!」

 宮原は、争う二人を必死に制止しようと呼びかける。だが、今の二人にそんなことは通じない。

「そろそろこの中の衣装、着替えたいんですけど…」

 日が落ち気温も下がってきた。コートを着ているとはいえ、中身がタオルを巻いただけのような衣服では肌寒いだろう。

(え? 俺、空気?)

 相方に投げ飛ばされ、石タイルの地面にへたり込んだままの西塚は誰よりも呆然としている。

「おい、一年半ぶりの相方だぞ!」

 「狛犬刀」でツッコミ担当の西塚から、相方への心からのツッコミが炸裂した。

「うわ~きれいだな~。」

 上津は、周囲がオレンジ色に染まってきたことに気づいた。海の方へ振り返ると夕日が輝き、立ち並ぶビルや光る海と合わさって、見事な夕暮れの風景が形成されていた。

「ハァハァ…覚悟しとけよハァ…今度はこの程度の仕掛けじゃ済まねぇからな…」

「ハァ…言っとくけどあの子(女性タレント)が変なジジィに絡まれた時、ハァ…あのジジィ完全にナンパしてる時のおま…」

 広安が言い終わる前に熱尾が制止した。

 二人とも戦い疲れたのか、息が上がりきり、石タイルの地面にへたり込んでいる。

 すると、誰かの声が海の方から聞こえてきた。

「うわーすげー!」

 広場の海に面した所の柵にスタッフや宮原や西塚、上津らが集まって夕日を見ている。カメラマンの板塚もいつしか夕日輝く絶景をカメラで映していた。

「落ち着きましたか?」

 水町と倉里がへたる二人に声を掛ける。

 熱尾はあぐらをかいたまま夕日を見つめる。広安も一緒だ。

「終わってねぇからな?」

 熱尾が広安を睨む。

「わかってるわ。」

 広安も睨み返す。

「次はぜってぇに潰すからな?」

「かかってこいや。」

 二人の戦いはまだまだ終わらない。

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