序文
~ 第二篇 序文 ~
それから、アドレーヌ王国には200年近い年月が経ちました。
ずっと変わらず受け継がれていく文化がある一方で、変わっていった文明もありました。
それは『エナ』でした。
『エナ』は最初、無限の可能性を秘めた新しいエネルギーということで沢山の人が研究をしていました。
でも今は、誰も『エナ』を凄いと口にはしません。
あるとき、国王が『エナ』は危ないものだと研究を禁止したからです。
研究者や学者たちは『エナ』の研究を止めてしまいました。
でも、その裏でひっそりと『エナ』の研究を続けている人たちもいました。
アドレーヌ暦0201年――
第9代アドレーヌ王国国王チャ―ド・デノ・リンクスの勅命により『エナ』の使用・研究が禁止となる。
『エナ』をエネルギー源とした機器や研究資料の全てが廃棄処分となった。
しかし、理由も不透明な禁止命令に異を唱える一部の者達によって、秘密裏に『エナ』研究は進んでいたと言う。
そうして、アドレーヌ王国は更に82年の時が流れます。
ここで新たな物語へと進む前に、とある手紙を紹介したいと思います。
この手紙はその当時に書かれた、誰にも読まれなかった手紙です。
『親愛なるお兄様、お義姉様方へ
お元気ですか?
私は相変わらず元気にしています。
お兄様、お義姉様と離れて暮らしてから既に10年が経ちました。
町は相変わらず賑やかで、相変わらずな毎日を過ごしています。
お二人もお変わりはありませんか?
もう10年が経ってしまったから…
私はお兄様、お義姉様の姿を想像することしか出来ず、残念に思います。
ですが、寂しいと言うわけではありません。
別邸の人たちは皆楽しくてとても親切です。
だから私は、全然寂しくはありません。
ですが、たまにはお二人が遊びに来てくださるととても嬉しいです。
また昔のように庭園で手作りのお菓子を食べたり語り合ったりしたいです。
それでは、いつも多忙な毎日を過ごしているかと思いますが、ご自愛下さい。
追伸・もしも暇があるのならば、お返事をお待ちしています。
お二人の妹より』
アーサガ・トルトの物語より259年後、
アドレーヌ暦0283年――
これは己の恋を経て変わっていく一人の乙女の物語です。
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~ 第二篇 乙女には成れない野の花 ~




