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そして、アドレーヌは眠る。  作者: 緋島礼桜
第四篇  蘇芳に染まらない情熱の空
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21項

     








「―――と、いうわけなんです」


 ジャスティンが去っていった後、カムフは残っていたアマゾナイトに前日起こった事件について説明をした。勿論、襲撃の理由である『鍵』の存在については伏せている。

 事件について調書を取っているアマゾナイトは粗方話を聞いたところでペンを止めた。


「―――事情はわかりました。ですが賊であれ悪漢であれ、また出没する危険性はないでしょうね」

「何故ですか!? 一度ならず二度も襲われてるんですよ!」


 思わず声を荒げるカムフ。傍らではソラもそうだと言わんばかりにアマゾナイトを睨み付ける。

 しかし二人の訴えにビクともせず。アマゾナイトたちはまるで覇気のない顔で言った。


「明確な目的があるならばいざ知らず。単なる物取りというのなら同一人物をそう何度も襲いはしないでしょう」

「恐らく…お嬢さんが二度も襲われたのは不幸な偶然だったのかと。それに、二度も撃退出来たというならば賊も流石に懲りているでしょう……」

「ま、この近辺に潜んでいる確率はもうなさそうですが…一応罪人の手配書は作成しておきますよ」


 淡々とそう話すアマゾナイトたち。

 偉そうに、というよりは気怠そうに話す彼らはさっさと踵を返し、立ち去ろうとする。

 カムフは慌てて彼らを引き留めた。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! そんなの単なる憶測じゃないですか。三度目があったらどうするんですか!?」

「そうだそうだ! そんなだから『アマゾナイトの掃き溜め』なんて言われんだ!」

「ってちょっと! それは言ったらダメなやつ!」


 ソラの暴言が決め手となったらしく。

 アマゾナイトたちは凍り付いた顔を見せつけた後、「それではこれで」と足早に帰ってしまった。

 後にはソラとカムフだけが虚しく取り残される。


「やっぱこうなっちゃうのかよ…」


 カムフはそう洩らし、大きなため息をついた。







「ま、まあいいじゃん。大丈夫だって」


 不安であった想定が的中してしまい、がっくりと肩を落とすカムフ。

 そんな彼へソラは強気に笑みを浮かべて言った。


「あんな連中に守られなくってもなんとかなるよ」

「あんなって…一応兄の職場仲間だろうに……」


 項垂れながらもそう的確に突っ込むカムフ。塞ぎこむというよりは不貞腐れている様子の彼を宥めるべく。ソラは彼の肩を優しく叩く。


「ほら! 昨日とかは武器持ってなかったからやられちゃったけど、ホントならあたしだってそれなりに強いんだし!」

「それはケンカなら、だろ? 仮に剣を持って戦ったとしてもソラには無理だよ」

「何でさ」

「―――人、斬ったことないだろ…?」


 カムフの言葉にソラは閉口した。

 確かに父がまだ元気だった頃や、兄がたまに帰省したときには、自衛のためにと剣の稽古を付けて貰ったことはあった。 

 が、実際にその腕を発揮したことは一度もなく今日に至っている。当然人を斬ったことどころか、剣で人を傷つけた経験もソラにはなかった。


「うう…でも、いざとなったら―――」


 と、言いかけてソラは口を噤む。

 アイツに助けて貰おうと、言ってしまいそうになったからだ。()()()というのは、あの謎の旅人ロゼのことだ。

 少しばかり信用出来ると思い始めてはいるが、流石に三度も助けられるのはソラのプライドが許さなかった。


「そもそも二人組を捕まえて貰わないと…この先ずっとソラ一人で村の外を歩けなくなるだろ」

「そ…そうだよね……ど、どうしよ…」


 今になってソラは自分の暴言に後悔する。


「とにかく、先ずはあの人たちを呼び止めて。めちゃくちゃ頭下げよう! しかも必死に!」

「なんかそればっかだね、カムフ…」

「ソラのせいだって自覚はないのかな!?」


 二人がそんなやり取りとしていた、そのときだ。

 一人のアマゾナイトが此方へと戻って来た。

 






    

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