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そして、アドレーヌは眠る。  作者: 緋島礼桜
第三篇  漆黒しか映らない復讐の瞳
195/360

17案

   







 アジトのある廃工場へと戻ると、そこには別動隊で買出しに行っていた者たちが待っていた。

 荷車に積まれている食料の山。

 大所帯の組織になれば数日分とは言え、やはりこのくらいの量は必要になるのだろうと、ヤヲは吐息を洩らす。

 こうした物資調達の資金は一体何処から出ているのか―――と、少々気にはなったが。

 綺麗な金ではないことは確かだろうからと、ヤヲは尋ねることはしなかった。





「遅い」

「ごめんごめーんって。お詫びにお菓子あげるから~」

「そう言うことではない…」


 廃工場内で仁王立ちして待っていたレグ。

 暗がりの中とは言え、その顔に青筋を立てているだろうことは容易に想像がつく。

 が、そんなことで動じるニコではなく。

 むしろ、しかめっ面でいるレグの腕を掴み甘えてしまう始末だ。

 反省の色を全く見せない彼女へ、結局折れたのはレグの方だった。


「いつもこうなの」


 と、ヤヲの傍で囁くリデ。

 そう言って自然に微笑んでいる彼女に、つられてヤヲも笑みを作る。

 まるで家族ごっこを見せられている光景の端では、屈強な男たちが丁寧に頭を下げて挨拶をしているのだから。


「随分と陽気な組織だね…」


 思わずヤヲはそう呟く。

 そんな独り言を耳にしたリデは、また一層と笑みを浮かべていた。





「後は頼んだわね」

「はい、リデさん」


 男たちにそう言うとリデとニコは彼らを残してアジト内へと入っていく。

 待機していた彼らは荷運び要員であり、リデにとっての部下に当たる。

 だがそれは彼女だけではない。レグやニコにとっても部下に当たる。

 つまり、ロドと共にいたこの三人はゾォバの幹部クラスであったことに、ヤヲは今更ながら知った。


(そういえば…あの決起集会のときもロドの傍に居たものな…)

 

 そうなるとそのような面々の中に、新参者である自分が親しげに関わっているということは、周囲から見れば随分と図々しい奴に思われているのではと、ヤヲは目を細める。

 しかし、リデの誘いがなければこうして外の空気を吸うことも叶わなかったのだ。

 利用できるものは何でもする。それで周囲からどう思われようとも構わないと、ヤヲは思う。


「どうしたの? 貴方も戻っていいのよ」


 そうリデに呼ばれ、ヤヲは急ぎ彼女を追い駆ける。

 久々の空気に名残惜しさを抱きながらも、無情にも扉は固く重く閉ざされていった。



 




「ねえねえ、この後はどうする?」


 暗闇の中、階段を下りている最中。

 ニコは陽気な声でそう尋ねた。

 軽やかな足取りを聞いてかランプを持っているリデが「危ないわよ」と彼女へ忠告する。

 が、ニコは「平気平気~」と明るく笑いながら返している。

 そんな彼女を見つめ小さくため息を漏らしてから、リデは答えた。


「…私はこのまま訓練室に行くつもりよ」


 するとニコはリデの腕を強引に掴み、まるでネコがじゃれるかのように甘える。

 

「じゃあニコも一緒に行く~!」


 ニコの甘える様子に、リデも満更ではない様子で。微笑んでいるようだった。

 それは日頃人前では中々見せない、年相応の純粋な微笑みに見えた。


「フフ…じゃあ一緒に手合せしましょうか」


 と、そう言うと今度は彼女たちの視線がヤヲの方へと向けられる。


「ヤヲは…どうするの?」

 

 ランプに照らされた純粋な二人の双眸。

 多少の疲労を感じていたヤヲであったが、迫られているような感覚に負けてしまい。

 仕方なく笑みを作りながら答えた。


「じゃあ…後で向かうよ」








    

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