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そして、アドレーヌは眠る。  作者: 緋島礼桜
第三篇  漆黒しか映らない復讐の瞳
189/359

11案

   








「で、何が御用? 新兵器? それとも…」

「燃料だ。ついでに拠点をこの町に戻したから、いつものをな」

「ああなるほど、どれほど?」

「とりま3倍量だな」


 二人の会話はキ・シエには到底理解できそうなものではなく。

 しかしそれに対して推測するつもりも、彼にはない。

 そのためキ・シエは来客者たちにお茶を出し終えるなり、そそくさと部屋を出て行こうとした。

 が、ロドがそれを許さなかった。


「おい、キ・シエ」


 キ・シエはドアノブを握ろうとした手を止める。

 振り返ることなく、その体勢のまま男の言葉に耳を傾ける。


「時に相談なんだが…俺たちの組織に入らねぇか? こんなとこでジジイの世話してるよりか大分マシだと思うがな」

「いえ、遠慮しておきます」


 即答だった。

 男の言葉に乗るのが尺だったからだ。

 それ以前に、キ・シエはこの男の高慢な態度が嫌いだった。

 自分を中心に世界が回っているというような言動、全てがキ・シエの嫌いなタイプと合致していた。


「まあそう言うなって。お前も解っちゃいるだろ? 俺たちと一緒に来た方が色々と便利だって」

「そうだよ君。彼らは国で一番巨大な反乱組織だよ」

「組織…」


 その言葉にキ・シエは顔を顰める。確かに、彼らの言うことにも一理あった。

 情報収集量の多い大きな組織である方が早く復讐相手へ辿り着くだろうし、独りよりも集団の方が襲撃などの成功率も上がるはずだ。

 だがしかし。それでもキ・シエは独りで復讐を行うつもりでいた。今の自分に誰かの助力など返って迷惑。と、そう思っていたのだ。





「貴方の力は間違いなく即戦力になるわ」


 その言葉、その声にキ・シエは思わず目を見開く。

 動揺を隠せず振り返った先には、やはり例の女(包帯女)がいた。


「あ―――」


 と、キ・シエは開きかけた口を急ぎ閉じた。

 危うく、彼女の名前を口に出してしまうところだった。

 同じ声、背格好、同じ髪の色。

 それがこの女と愛しい彼女を強引に重ねてしまう。

 キ・シエは人知れず眼鏡を押し上げた。


「随分な嫌われようだがな、俺らは別に組織の一員となって働けって言ってるわけじゃねえんだ。手前の復讐の手伝いをしてやるぜって志の集まりなんだぜ」

「私たちの目的成就のためにも…お願い、手を貸して貰えないかしら?」


 男の声と女の声が、キ・シエの何かを揺さぶる。

 彼らと手を結ぶことにそもそも躊躇う理由などありはしない。むしろ自分の稚拙な感情のために首を振る方が得策ではない。

 そう思い直したキ・シエは、頭を押さえながら深く息を吐き出した。


「……わかりました、手を組みましょう」

「ふん…そうこなくちゃな」


 ロドはそう言うとソファから立ち上がり、キ・シエの前に立った。

 高慢な男の双眸が、彼を捉える。


「じゃ、ま。改めて…俺は反乱組織ゾォバのリーダー、ロドだ。で、そこの女がリデ」


 ロドに親指を指され、包帯女―――もといリデは軽く頭を下げる。

 続いてロドが指差した巨体の男は、そのフードを静かに取った。


「この生真面目な大男がレグだ」

「生真面目は余計だ…」


 と、先ほどの少女がキ・シエの隣に並ぶとその腕を組んできた。


「ニコはニコだよ~、よろしく~」


 友好的とも馴れ馴れしいとも取れる少女は自分の手を軽くひらひらと踊らせ、笑みを浮かべる。

 その様子はまるで年の離れた妹のようにも見えてしまい、キ・シエは苦笑いを浮かべ、返した。


「…よろしくお願いします」








     

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