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ケイトの事情

 ケイト・フランネルは元王国騎士の家に生まれた。

 王国騎士は貴族の最底辺。世襲ではない身分である。

 騎士の子供は15歳になると騎士になるための学校へ入学する権利はある。

そこに入学し、必要な学問と武術を習得すれば、再び騎士に任じられる。

 しかし、騎士学校に入学するには大金が必要であった。

 王国騎士の子供であったケイトの父は商売に失敗し、ひどく貧乏な生活をしていた。

 そのためにケイトの兄であるレイノルズを騎士学校に入れるお金が工面できなかったのだ。

 レイノルズは町の剣術道場で才能を見出され、騎士学校へ行けば間違いなく騎士になり、そこでの出世も夢ではないと言われていた。

 しかし、お金がなければその夢も潰えるしかない。

 レイノルズは15歳になったとき、騎士になるのを諦め、冒険者になった。そしてケイトのためにお金を稼いだのだ。

 女に生まれたケイトは、騎士を志してはいたものの、兄のような才能はなかった。

それでも12歳の頃から剣術を習い、毎日の練習も欠かしたことはなかった。


(私は兄さんが冒険者で稼いでくれたお金で騎士学校へ入学できた。女で体格にも恵まれていない私が騎士になれたのは、兄の仕送りと努力の結果……)


 ケイトに仕送りをしてくれたその兄は1年前から連絡がつかなくなった。冒険者稼業は危険な商売だ。

 強力な魔物と出くわし、命を落とすことはよくあること。恐らく、兄は命を落としたと思われた。


(消息不明の兄さん……もし生きていればパンティオンの結果をどこかで耳にするはず……。勇者を倒した私の名前を聞くはず……)



「剣の技術も身体能力もあなたには到底勝てない……。しかし、勝ちたいという執念と努力はあなたを越える……。精神は肉体を越えて勝利をもたらす!」


 ケイトはさらに加速の魔法を唱えた。そのスピードでレイピアを操る。


(これで勇者に一発あてる……)


「あの騎士の女の人、結構がんばるな……」


 アリナとケイトの試合を観客席で見ていたルーシーは、多くの観客の予想に反して、ケイトが粘っていることに感動した。

 ユートと付き人をしているせいで、周りは規格外の連中しかいない。

 普通の人間のルーシーとしては、規格外の勇者に果敢に挑み、ここまで戦いを続けていることに応援したくなる。


「無駄な努力ですわ。ルーシー、あの騎士の女のステータスは分かるのでしょう?」


 そうクラウディアが聞く。

 ルーシーの左目は意識すると見る相手のステータスを見ることができる。


騎士 ランクC ケイト・フランドル 24歳

攻撃力B 防御力C 体力B 俊敏力B 魔法力D 器用さC 耐性力D 知力B 運D カリスマC


 ステータスだけを比べると瞬殺されていてもおかしくない差がある。


「能力じゃ差はあるけれど、あの執念はすごいぜ。勝とうという気持ちが伝わる……」


 ルーシーはケイトがアリナの攻撃を受け、ダメージを受けながらも虎視眈々と何かを狙っていると感じていた。


「ああ~アリナ様。戦うお姿のお美しいこと。まさに天女。戦女神様。そして戦いをわざとなびかせ、相手にも華をもたせる慈悲深さ。さすがです」


 隣のユートは先ほどから、舞い上がっている。

 その視線の先はアリナだけ。ケイトの姿なんか1秒も見ていない。


「あの女、勝負に出るようですわ」

「ああ~アリナ様。このピンチを華麗に逆転してくれますよ」


 ケイトが加速を重ねてかけてから、突進していったのを見て、クラウディアとユートは次の展開に胸が高鳴る。


 2人とも結末は同じ結果を予想していた。



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