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買い食い

 決勝戦2回戦は場所と競技方法を変えて行われる。

 ここからはシードされた選手も交えての対戦となる。

 戦いの場は15m四方の四角く平らな島。

 大理石が敷き詰められた人口の島だ。そして周りは池。

 対戦者は武器の使用も可。

 但し、魔法は自分の能力強化以外は禁止。

 武器の使用を許可されているとはいえ、相手を殺すことは禁止となっている。

 競技者双方には、あらかじめ武器によるダメージを防ぐ魔法をかけられるために、よほどの過剰な攻撃がなければ死ぬことはない。

 そしてここからは、勝ち上がった4人とシード選手とのトーナメント形式の戦いとなる。

予選から勝ち上がった選手がくじ引きをし、シード選手と戦うのだ。

 その結果、第1試合は予選から勝ち上がった騎士レディ・ケイトと勇者アリナ。これは女性対決で大いに話題になった。

 2試合目はウサギ男VS炎の勇者ライディ。

 神に祝福された勇者の一人であるライディとこれまた何かしてくれそうなウサギ男との戦いは、予想が付かないだけに戦う前から話題となった。

 そして3試合目は、羅漢VS剣聖ダンテ。

 剣の技では大陸一と噂されるダンテと得体は知れないが実力は圧倒的な羅漢との対決である。

 剣聖にはさすがに勝てないだろうという予想もあったが、羅漢の予選の様子があまりに圧倒的であったので、注目カードとなった。

 そして4試合目は前年度優勝者の近衛師団副隊長ガーフィールドVS村人ネロである。

 これは、勝敗はともかく、村人ネロがこの中で場違いなくらい弱すぎて、彼がどうなるかという噂で持ち上がった。

 ほとんどが何秒もつかという話題。殺してはいけないので、ガーフィールドが手加減しつつ戦わないといけないから、気の毒だと言う意見も多かった。

 そしてトーナメントによって、1試合目の勝者VS4試合目の勝者。2試合目の勝者VS3試合目の勝者ということが決められた。

 これによってユートは勝てば、目標の羅漢と戦えることになった。これは羅漢も望む展開であろう。

 ベスト4をかけた対決は、予選通過者の体力回復と休養を入れて、2日後に行われる。

 パンティオンの最中、町は祭り一色になる。

 朝からいろん場所で催し物が行われ、屋台や記念品を売る店が立ち並び、人々は大いに楽しむ。


「ユート、お小遣いをあげるから町で楽しんでいらっしゃい」


 勇者アリナはユートに金貨1枚を手渡した。

 クラウディアとルーシーの3人でお祭りに行くには十分すぎるほどのお小遣いである。


「ありがとうございます、アリナ様」


 ユートは両手で金貨を受け取る。

 感謝感激の満面の笑みを浮かべる。それを見てアリナもうれしくなった。


(しっかりしているとはいえ、ユートもまだ子供。クラウもルーシーも同じ。たまには子供らしく遊ばせないと……)


 そんなことを考えている。

 まさか、ユートが付き人の仕事の合間に姿を偽ってパンティオンに出場し、ベスト8まで進んでいるとは夢にも思っていない。


「そうだな。祭りは子どもにとっても楽しいものだ」


 昼間から酒を飲んでいるダンテもユートが出場しているとは思っていない。アリナもダンテも主催者に招待されて、ベスト8からの出場である。

 これまで予選もベスト16の戦いも見ていない。

 この国に来てから様々なところから招待されて、連日のパーティ。

 日によっては掛け持ちをすることもあって、パンティオンを見学することができなかった。

 見学しなくてもアリナもダンテも問題ないと思っていた。

 せいぜい、ベスト4に出る人間を警戒する程度でよいと思っている。

 予選通過者は所詮、普通の人間であり、人間を超越した力をもつ2人からすると、シード権をもつ人間だけが気にする相手であるからだ。

 だから、本当は最も警戒しないといけない、ウサギ男と筋肉だるまのとんでもない出場者については、全く知らなかった。


「しかし、勇者もケチですわ。3人で金貨1枚なんて少なすぎますわ」


 クラウディアは頬を膨らませてそう不平を言う。

 しかし、子どものお小遣いとして金貨1枚は破格だ。

 お祭りに出ている屋台の食べ物やアトラクションの対価はせいぜい銅貨1,2枚である。

 王国金貨1枚で銀貨20枚と等価交換できる。

 そして銀貨1枚は銅貨20枚と交換できるのだ。

 そう考えると金貨1枚は子ども3人で使うには十分すぎるのである。


「何言ってるんだよ。買い食いするには十分だ。それにお前はそのポシェットを使えばいくらでも金は手に入るんだろうが」


 ルーシーはそうクラウディアの斜め掛けされた赤いポシェットを指さした。

 この魔法のポシェットは、クラウディアの住む古城の宝物庫とつながっている。

 そこには膨大な量の金貨や銀貨が山になっていた。


「クラウ、そんなことを言ってはダメですよ。アリナ様がくださった大切な金貨です。アリナ様のお許しが出たのですから、今からいろいろと楽しみましょう」

「そうですわね」


 そういってクラウディアはユートの右腕に絡みついた。

 どうやら、ユートとデート気分のようだ。

 その証拠に後ろにいたルーシーに目で(あっちへ行け)と合図している。

 ルーシーとしては従うつもりはない。

 デートはどうでもよいが、この2人を野放しにするととんでもないことが起きることを恐れている。

 自分がいたところでそれを止めることはできないことは承知しているが、いないところで巻き込まれるよりも、そばにいた方が安全だという計算がある。


「ちっ……」


 ルーシーが無視してついてくるので、あからさまにクラウディアは舌打ちした。

 しかし、ルーシーが恋愛面でユートを見ていないことは分かっているので付いてくることは許容した。

 屋台の食べ物も安いからユートがもらったお小遣いでルーシーの分を買っても問題ない。

 3人は買い食いしながら、道端の各所で行われている大道芸人の芸や芝居小屋で行われる手品や歌、踊りなどの演芸を堪能する。

 そんな3人がひと際にぎやかな人だかりを見つけた。

 わいわいと輪の中心で行われていることに夢中で応援しているようだ。


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