羅漢、1回戦突破
2回戦も同じように250人で行われる。
前回のベスト8だった格闘家の男とオーガキラーの名をもつ戦士が順当に勝った。
翌日に行われた3回戦も順当に勝つべき人間が勝った。
問題は最後の4回戦であった。
あの羅漢である。
よそ者で態度が横柄な羅漢は、お約束通り入場は最後。島の端に立たされた。
この組には羅漢に腕相撲で負けた冒険者も加わっていた。
「あのおっさん、あんな端に立っていやがるぜ」
「合図と同時に瞬殺だな」
「勇者と決勝トーナメント戦うとか言っていたが、ここで無様に落として笑いをとってもらおう」
冒険者たちは周りにも声をかけて、合図と同時に羅漢の方へ押すように了解を取り付けた。
周りも何だか厄介そうな羅漢を瞬殺することには異存はない。
「それでは4回戦開始!」
旗が振られた。
冒険者たちの合図で一斉に羅漢目掛けて人の波が押し寄せる。
「くくく……バカ者どもめ」
羅漢は両腕を大きく広げて、人の波をなんなく受け止める。微動だにしない。
「ば、ばかな!」
「これだけの人数で押しているのに!」
押している人間はあり得ない光景に驚いた。
羅漢を落とした後に勢いで自分も落ちてしまうのを嫌って、みんな本気で押していないとさえ思った。
「おりゃああああああっ~」
羅漢が1歩、2歩と前進する。
「わあああああっ~」
反対側の縁にいる参加者があえなく落ちる。それを見て笑う観客たち。
「おら、おら、おら~」
羅漢はいっきに反対側まで押し切った。羅漢の前にいた参加者は全員が水の中へ真っ逆さまに落ちる。
「わああああああっ~」
押し切った羅漢の背中を押して落とそうと数人の参加者が襲い掛かる。
しかし、振り返った羅漢に次々と投げられて水の中へ。
そこからは羅漢の無双であった。
残った全員は羅漢を排除しようと結託。
100人以上が襲い掛かったが、羅漢はことごとく蹴散らした。
もう観客は総立ちの拍手喝采である。
気持ちいい無双ぶりに大いに盛り上がった。
結局、最後まで生き残ったのは羅漢。
そして最初の方に落ちたが、何とか縁にしがみつき、水に落下しなかったスカウトの男が予選通過となった。