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魔界会議2

「ふふふ……おもしろいだがや。人間の本質は悪だからのう。神の国で禁断の果実を盗んだ時から、やつらは罪人。自分たちを滅ぼす大魔王様を作り出すのが自分たち自身とは皮肉だがや」

 

 そうワルキューレは笑う。

 笑いはむなしく響くだけ。他の魔王は発言をしない。

 その大魔王の所在が分からないのだ。

 そろそろ、その力が解放され、魔界にその噂が届くはずであるが、一切、そういう情報がない。


「しかし、人間は悪だと言うが、中には善意にあふれるものもいよう。大魔王様がそういう人間に育てられたらどうだがや?」


 それは何人かの魔王も思っていたこと。

 ここまで大魔王の痕跡がないと、何か原因があるのだと考えていたのだ。


「それは心配ない。もし、そういう人間に慈しまれ育てられたのなら、その赤子は大魔王様にはならない。力は解放されず、そのまま非力な人間として育ち、一生を終える。また、素質をもった赤子が人間界に降臨するだけだ」


 イノケンティウスはそう答えた。

 しかし、そういうケースはほとんどない。そういう稀有な人間はそうそういない。


「憎しみが大魔王様の力を解放するというのは分かったがや。それ以外に力が解放することはないがや?」

「どういうことだ、ワルキューレ」


 イノケンティウスの表情は分からないが、声の質は明らかに怪訝そうであった。


「例えば、自分の意思で誰かを守りたいとか、尽くしたいとか。人間には忠誠心とか愛とか、理解不能な感情があると聞いたがや。人間として育った大魔王様がそうなった時はどうなるのだがや?」

「くくく……何を馬鹿なことを」


 そう口をはさんだのは序列第7位の魔王。

 名は『羅漢』。

 ブロンズ色の筋肉質の肌をもつ武人である。通り名は『拳闘王』。

 力の象徴で腕力のみで魔王に君臨していた。

 頭はつるつるで古代魔界文字で『我は最強なり』と入れ墨されている。


「大魔王様が忠誠心、愛だと。あの方はすべてにおいて超越されたお方。現に我々は忠誠心であのお方に仕えているわけではあるまい。我らにあるのは『崇拝』だ。もし、大魔王様が自らよりも強大な存在に会った時は、我らと同じような崇拝しかないだろう」


 そう拳闘王は語った。

 残りの魔王たちも頷く。

 魔界では何よりも『強さ』でものごとが決まる。

 ここにいる魔王の序列も『強さ』によるものだ。

 上の序列に上がりたければ、挑戦して倒せばのし上がれる。ある意味、下剋上ありの実力社会なのだ。


「それでイノケンティウスよ。大魔王様が人間界に生まれたことは確実か?」


 そう拳闘王は聞いた。イノケンティウスは頷く。


「では、こちらから出迎えに行くべきだ」

「羅漢よ。それは誰でも思うこと。問題は、我ら魔族は魔界から出ると忌まわしき神の力により、人間界では能力が50%に制限されるのだぞ」


 そうアルキメデスが言った。魔界に住んでいるものは、ゲートを越えて人間界に行くと力を制限されるペナルティを抱える。

 だから、積極的に人間界への侵略ができない。

 そうでなければ、ここにいる魔王たちで人間界は滅ぼすことは簡単だ。

 最初から人間界にいる魔族や魔獣はこの制限を受けないが、魔界の住人はこの制限を受けるのだ。

 だから、基本的に勇者とは魔界で戦う。わざわざ、制限された力で戦う愚は侵さない。

 なお、一つだけ全力を出す方法はある。

 それは『限定解除』。

 これを行えば、100%の力を出せる。但し、その後は魔族としての力を大幅に失う。

 それこそ人間並みまで落ちるのだ。再び、力を取り戻すには長い年月がかかる。


「ふん。ビビっているのか。誰もお前らに行けとは言っていない。人間界にいる者はわしの足元にも及ばない。例え、勇者と言えど50%出せれば十分だ」


 そう羅漢は自分が人間界に行って様子を見てくると提案した。

 魔王たちは顔を見合わせた。

 確かにこの魔界にいるだけでは何も進まない。


「では、羅漢よ。人間界へ行き、大魔王様の行方を探ってくれ」


 そう魔王筆頭のイノケンティウスは会議を締めくくった。


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