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魔界会議1

 勇者アリナが3つ首竜退治をする3か月前のこと。

 魔界では重要な会議が開かれていた。

 魔界。それは人間が住む世界とは違う次元にある場所。

 人間界からそこへ行くには、『ゲート』と呼ばれる門をくぐるしかない。

ゲートのみが、魔界と人間界をつなぐ場所なのだ。

 『ゲート』を人間界側から通過するには、5つの封印を破らないといけない。封印は人間界各地に隠されており、魔界から派遣された魔獣、魔神たちに守らせている。

 

 魔界の中心には大魔王の居城がある。それはアビスキャッスルと呼ばれている。

魔界を7つに分けてそれぞれに封じられた王がいる。七魔王と人間界でも言われていた。

 300年前に七魔王を束ねる大魔王アトゥムスが勇者に倒され、七魔王のうち4魔王も倒された。

 今は生き残った3魔王と新たに後を継いだ4魔王が集い、再び7魔王が勢ぞろいしている。

 勇者に魔界の中枢を破壊されて、魔界もここ300年は戦乱にあけくれ、人間界への侵略もおぼつかなかった。

 人間界に残った魔族が各地で悪さをし、人間界の冒険者によって退治されたり、反撃したりすることを繰り返した。

 しかし、300年が過ぎ、魔界の混乱も落ち着いた。今こそ、300年前の屈辱を晴らす時だと7魔王たちは思っていた。


「大魔王様が復活なされたという噂は本当か?」


 7魔王のうち、序列第2位の魔王がそう口火を切った。

 名前を『アルキメデス』と言う。300年前の勇者との戦いの生き残りである。

 あらゆる黒魔法に通じており、魔界では『絶対の魔術王』という通り名があった。

 真っ黒なローブで全身を覆い、顔さえもよく見えない。

 不気味に青く光る眼は1つだけだ。魔王の中では比較的小柄で人族の老人のような体躯だ。


「大魔王様は人間界に転生なさる。これはこれまでの大魔王様はすべてそうであった」


 そう答えたのは序列第1位。

 この魔王会議を招集した魔王である。

 名前を『イノケンティウス』と言う。

 顔は地竜の頭蓋骨のようなものを被っているので、表情は全く分からない。

 同じく竜骨で作られた不気味な鎧のようなものに身を包んでいる。

 鎧に見えるが自分の体の一部である。背丈は2mを越える。

 細身ではあるが傍らに置いてある大きな鎌は背丈よりも大きいことを考えると、相当のパワーの持ち主であった。

 通り名は『白の破壊神』。骨鎧の姿がそう見えるのであろう。

 頭蓋骨にある黒く空いた目は、どこまでも深く続く黒。見ている者の魂を吸い取ってしまうような感じを受ける。

 300年前の戦いでは大魔王の側近中の側近として使え、当時の勇者と戦っている。

 戦いに敗れ、死んでしまうところであったが前大魔王に助けられた。

 大魔王はその後、勇者によって滅ぼされるがイノケンティウスはケガの養生をしていたので助かったのだ。

 大魔王亡き後の魔界の混乱を鎮め、次期大魔王の復活に備えていた中心であった。


「大魔王様は人間界で生まれるのかや?」


 魔王会議に似つかわしくない幼い声。

 序列第6位の魔王、「ワルキューレ」である。

 見た目は小さな幼女。黒いゴスロリ風ドレス。銀髪に水色の瞳という天使のような風貌であるが、目は蛇のような悪賢い色を宿している。

 ワルキューレは新しく魔王となった者で、300年前の戦いには参加していない。彼女は「偽りの天使」の通り名があった。


「大魔王様は人間界に人間の姿で現れる。ある年齢までは人間として過ごされるのだ」


 そうイノケンティウスは説明する。側近中の側近だから、歴代大魔王のことをよく知っている。


「その人間時代に人間の汚さ、欲深さ、残虐性を知り、それによって大魔王としての資質を磨き、力を解放なされるのだ」


 親のない赤子で人間界に捨て置かれた状態で大魔王は現れる。

 親なしの子供はひどい扱いを受ける。

 そのまま、捨て置かれることもあるし、孤児院で育てられることもある。子のない夫婦引き取ることもあるだろう。

 しかし、いずれにしても貧しい生活の中、子どもは辛い思いをする。理不尽な扱いも受けるだろう。

 そうやって人間への憎しみを蓄積されて大魔王は本来の力を取り戻す。大魔王を強くするのは、人間のもつ悪の心なのだ。


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