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グール召喚

「じゃあ、壁壊しますか?」


 ユートは右手の腕輪の数字をⅢに合わせた。超人レベルである。それで軽く壁を叩く。

 ボコッと音を立てて、固い石の壁が壊れた。

 クラウディアが言った通り、下水道に通じる通路が現れる。


「ここを歩いて行けば、表に出られますわね。ルーシー、あなたが案内して女性たちを逃がすのですわ」

「あたしがか?」


 クラウディアに命令されて、少々、むかついたがルーシーが適任であることは疑いがない。

 どうせ、ここから戦闘が始まるのだ。非力なルーシーの出る幕ではない。


「分かった。女性たちは逃がすよ。で、お前たちはどうするのだ?」

「そうですわ。まずは召喚魔法ですわ」


 そう言うとクラウディアは何やら不気味な呪文を唱えだした。


「闇の中にうごめく、混沌の住人よ。我の求めに応じて、現れるのですわ!」


 牢の石の地面が赤く光る輪が現れる。

 その数は拉致された女たちの数。


「おいでませ、グールたち!」


 地面から次々とアンデッドモンスターであるグールが現れた。

 召喚呪文である。

 グールは人を食うモンスター。

 小柄な人間ほどの大きさで2足歩行。ゆったりとしか歩けない。

 全身真っ黒で粘液まみれで体からの腐臭がすごい。

 そして歯だけはサメの歯のように鋭い。

 これで人間や生き物を襲って食べるのだ。

 恐ろしい姿に連れてこられた女たちは悲鳴を上げる。

 慌てて、ルーシーとユートは静かにするように話す。


「こいつらに変幻の魔法をかけるのですわ……」


 そう言ってクラウディアはさらによだれを垂らして徘徊するグールに魔法をかけた。

 驚いたことに先ほど牢にいた女たちそっくりに変身させる。

 姿形もそっくり。但し、知能はグール。みんなよだれをたらして、ぐふぐふ言っている。

 人間が近づけば凶暴になり噛みつくだろう。


「うむ。まだごまかせないなあ」


 クラウディアは腕組みをして首を傾げた。


「当たり前だ。見た目は人間でも中身はグールだろ!」

 ルーシーはクラウディアがやろうとしていることが分かったが、いくらなんでもそれは無理だと思った。


「少しだけ、大人しくさせればよいのです。魔法で大人しくさせるのですわ」


 そういうと何やら呪文を唱えた。


「真夏の夜の夢、発動!」


 幻影の魔法である。この見た目、子どもの大魔導士、何でもありだ。

 頭の中に幻影を見せられた見た目は人間の娘のグールたちは、夢心地のような感じで大人しくなった。

 たぶん、人間をまるかじりする幻影でも見ているのであろう。


「まさかとは思うけど、やることえげつねえ!」

「えげつなくはないですわ。悪者どもにはトラウマ級のお仕置きですわ。奴らがこのグールを連れて行って何するか楽しみですの。魔法が解ける時間を30分としておくのですわ」


 そう言ってクラウディアは意地悪く笑っている。


「クラウは悪戯好きですね。じゃあ、ルーシーさんは女の人たちを逃がしてあげてくださいね」

「仕方ねえな……」


 そういうとルーシーはおびえている娘たちを下水道へと誘導する。全員が地下牢から出たところで、ユートは壊れたブロックを元に戻した。

 残ったのはユートとクラウディアと30匹の娘に変化へんげしたグールたちである。

 やがて、扉が乱暴に開けられた。

 娘たちを連れに来たのだ。国中の支部、本部から幹部が勢ぞろいし、明日の総会前の前夜祭を行うのだ。

 娘たちはその宴会の接待をさせられるのだ。


「こいつら、妙に大人しいですな」


 連れに来た支部の手下の男は、娘たちの変化に違和感をもった。

 連れてこられたときは泣いたり、うなだれたりしていたのに、今は黙っているか、薄気味悪く笑っているだけだ。


「観念したんだろ。しかし、いいよな、幹部は。この娘たちに酌をさせて御馳走とうまい酒をたらふく食べて、その後にお持ち帰りだぜ」

「いいじゃないか。総会後には俺たちに下げ渡されると思うぜ。俺は領主の娘がいいな。あの豪奢な金髪女をひいひい言わせてえぜ」

「それは俺が狙ってるんだ。お前は別の女にしておけ」


 そんなことを言いながら、2人の手下は30人の娘たち、いや、グールを宴会場へと連れて行った。


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