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ならず者の町

 サウザント公国の主要都市エリアン。

 人口30万人の大きな町である。

 サウザント公国は魔族の勢力地からほど遠く、その支配地域は人間が制圧しており、モンスターも出現しない国であった。

 しかし、この国では魔族よりも恐ろしいものが国全体を蝕んでいた。

 それは『オーガヘッド』と呼ばれる暴力団組織であった。

 この組織は最初、冒険者崩れの男が組織した小さなならず者の集まりだった。

 それが20年もすると構成員は1000人を超える程になり、サウザント公国の町々に支部をもつようになった。

 今は大小さまざまな団体が本部組織オーガヘッドの傘下の元、町の人々から搾取していた。

 無論、公国に領地をもつ貴族はこれを良しとせず、当初は討伐軍を向けるなど殲滅しようとしたが、逆にオーガヘッドの頑強な抵抗にあった。

 激しいせめぎ合いの末、今はオーガヘッド側が領主すらも頭が上がらないほど力をもつようになった。

 そしてこのエリアンの町を裏で支配するのが、オーガヘッド第4支部を治めるバーモントという男である。

 身長2mで体重120kgという巨漢。体は鍛えられた筋肉の鎧で覆われている。

 性格は残忍で敵対するものは容赦なく殺し、欲しいものは全て奪うことを身上としていた。

 この男の下には100名ほどの手下がいて、町全体を裏から支配していた。

 町で商売をしている店から一律20%の売り上げを用心棒代として徴収。

 いくつもの酒場や娼館を経営し、その売り上げも合わせて町を治める年間予算の4倍もの収益を上げていた。

 町の中心に広大な屋敷を構え、そこを支部事務所として活動をしていた。

 暴力にまみれたこの男を暗殺しようと、数多くの冒険者が送り込まれたが、すべて返り討ちにしていた。

 彼には凄腕の護衛が何人もいたが、彼自身が魔法も使える剣士。大剣を振るえば、並みの冒険者なら真っ二つにされてしまう。

 また、第2位階の魔法『石礫』が得意で、無詠唱で発動させることができる。

 彼を暗殺しようとした冒険者たちも、至近距離からの石礫の攻撃に頭を撃ち抜かれて殺されてしまった。

 昨日もそんな馬鹿な冒険者パーティを葬った。

 頭を撃ち抜いた戦士2人は見せしめに串刺しにして町の広場に晒した。

 ファイヤーアローで攻撃してきた魔法使いは、大剣で首をはねた。これは町の中央広場の噴水に首を晒している。


「あう……あう……」


 生き残った女神官はベッドで正気を失っている。

 拉致をして自分の部屋に連れこんだ。昨晩から精神をボロボロにする毒薬を飲ませ、散々弄んだ。

 一晩中、恥辱を与えた結果、完全に心が壊れてしまったようだ。

 部下に与えるに値しないと考えたバーモントは、容赦なく首を絞めて殺した。

 悪魔のような所業であるが、バーモントの心には一点の曇りもない。

 自分を害する者は残酷に殺す。それ以外の選択はない。


「バーモントさん、この女神官の遺体はどうします?」

「ふん。路地にでも捨てておけ。それよりも、準備はできているのだろうな」


 ぎょろりと部下をにらみつける。

 猛禽類のような目で射すくめられた男は、下半身が縮こまる。全裸の女神官の姿に興奮したものが垂れ下がる。


「はい。宴会場の準備はできております」

「女は十分に集めているだろうな」


 そうバーモントは念を押した。

 明日の晩にこの公国中のオーガヘッドの支部長がこのエリアンの町に集まって来る。

 本部の総長を迎えての年1回の総会が開催されるのだ。

 バーモントにとっては、オーガヘッド内の地位を上げるために重要なイベントであった。

 支部長共に自分の力を見せしめ、オーガヘッドの本部の重役になる。

 そして将来は総長の座を狙っていた。


(ふふふ……俺にはそれだけの力がある。器がある。他の支部長どもとは格が違う)


 そうバーモントは考えていた。13ある支部長の中で自分ほどの武闘派はいない。支部長のほとんどは年寄り。ひねれば殺せる。

 まだ43歳のバーモントは油が乗り切った全盛期と言っていい。

 老いて口ばかりの連中を一掃して、自分がオーガヘッドを支配するべきだと考えていた。


(昨日、俺を暗殺しにやって来た冒険者。依頼主は領主だそうだが、本当の依頼主は分かっている……。支部長の誰かだろう。よほど俺が煙たいと思われているようだ)


 表向きの領主にはすでに報復の手を打っている。

 領主の年頃の娘はすでに拉致済み。明日の総会の余興でお披露目し、その後は支部長共の慰み者にする。


(爺さんどもに食われる前に、もちろん、俺が食い尽くすがな……ふはははは)


 バーモントは屋敷の前に馬車を用意するように命じた。

 総会時のパーティで女を使うが、美しくそして清楚な女を町中から集めていた。

 バーモントには気になる女がいて、その女を見に行くのだ。


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